血管腫は、主に血管の異常によって赤あざの症状がみられる疾患です。
今回は、血管腫の種類や当院での治療法などをご説明します。
血管腫・血管奇形とは
血管腫とは、主に血管の異常により赤あざがみられる疾患です。
体表や軟部の血管腫、血管奇形のほとんどは原因不明で、診断や治療法が確立していません。
血管腫、血管奇形は総称して「血管腫」と呼ばれることが多いですが、実際は国際学会が表明しているISSVA分類では別の疾患とされ、細胞性増殖を伴う血管腫と伴わない血管奇形に大きくわけられます。
さまざまな分類がありますが、今回はISSVA分類を参考に、以下のようにわけて説明します。
血管腫
乳児血管腫(従来:いちご状血管腫)
多くは小児期に自然消退します。
0~1.5歳までを増殖期、~5歳までを退縮期、5歳以降を消失期としていますが、経過には個人差が大きいです。
低出生体重児や女児などに多く、日本人の発症頻度は0.8〜1.7%、白人では2~12%とされています。
生まれてから2週間後程度で身体に変化がみられ、体、足のほか、頭部にできやすいです。
発症部位によって、視野障害、難聴、気管閉塞、体重増加不良などがみられる場合は、緊急の対応が必要となります。
老人性血管腫
老人性血管腫は、特に上半身にできやすく、大きさは1~5mm程度です。
円形でドーム状に盛り上がり、ルビー色が特徴で、20歳代で生じることもありますが、加齢に伴い増加する傾向にあります。
血管奇形
毛細血管、動脈や静脈、リンパ管それぞれに症状が出る場合と、複数に症状が出る場合があります。
一般的に血管奇形は、自然消退することはありません。
単純性血管腫
生まれつきの赤あざです。
自然には消退しない点が乳児血管腫とは異なります。
ひたいやうなじにある場合はサーモンパッチとも呼ばれ、3歳前後に自然に消えることもありますが、大人になってからも残存することがあります。
顔にできると目立ちますが、頭、首、体、腕、脚などどこにでもできます。
小型のことから顔や腕全体に赤みが広がることまでサイズには幅があります。
くも状血管腫
赤い小さな点を中心としてクモの足のように放射状に血管が拡張します。
顔、肩、胸などにできやすいです。
肝機能障害、妊娠時にみられますが、健康な人でもできることがあります。
静脈湖
顔や唇などにできる紫や黒色のできもので、血管拡張により生じます。
リンパ管奇形(従来:リンパ管腫)
リンパ管奇形は、胎児期のリンパ管の形成異常によって、主に小児に発生します。
一方で、大人になってから発症するケースもあるため、はっきりとした原因はわかっていません。
腫瘤は全身どこにでもできますが、特に頭部、わきの下、足などにできる傾向にあります。
どの部位に発生した場合でも、出血または感染を起こすことがあり、炎症や腫れなどを繰り返すことがあります。
幼少期に発症し、男女差はなく、1,000~5,000人に1人の割合で発症すると推測されています。
静脈奇形(従来:海綿状血管腫)
血管奇形の中では最も頻度が高い疾患で、青いできものに見えますが、血管奇形の一種です。
男女比は、1:1~2で、ほとんどが突然発症しますが、まれに遺伝することもあります。
思春期や妊娠によるホルモンバランスの変化、外傷などが原因とされています。
全身のどこにでもできますが、頭部や足に発症しやすいです。
腫れや痛み、色の変化、出血などを伴うことがあります。
動静脈奇形(従来:動静脈血管腫)
動静脈奇形は、生まれつき血管形成に異常が生じた場合に発症することがあります。
原因ははっきりとわかっていません。
男女差はなく、頭部、体、足のほか、内臓や骨、脳脊髄など、全身のどこにでも生じることが特徴です。
血管腫・血管奇形の治療法
血管腫、血管奇形は総称して血管腫と呼ばれることが多く、治療方針についても誤った治療が行われることがあります。
当院では適切な診断の下、それぞれに応じた治療法を行っています。
乳児血管腫
1歳ころまでは拡大し、その後に徐々に縮小して自然に消えることが通常です。
ただし、消えたあとも傷跡のような色やテクスチャーの変化が残ることが多く、整容上の問題になりやすいです。
サイズが大きくなるとその後の瘢痕が目立つ場合が多いため、保険適用でVビームによるレーザー治療、ヘマンジオルシロップの内服治療を行うことがあります。
老人性血管腫、単純性血管腫、くも状血管腫、静脈湖
Vビームによるレーザー治療が有効とされています。
老人性血管腫、くも状血管腫、静脈湖は1−2回の治療で治癒できることが多いですが、単純性血管腫には通常複数回の治療が必要です。
リンパ管奇形
手術による切除や硬化療法を行いますが、重症の場合は治療が難しいです。
腫瘤をすべて切除できた場合は完治する可能性が高いですが、腫瘤が発生している筋肉や血管、神経などの組織も切除しなければならない場合があり、見た目や機能的な問題を引き起こすこともあります。
そのため、すべて切除するのではなく、部分的に切除することがケースがあります。
硬化療法は血管内に薬剤を注入し、異常な血管内皮細胞を破壊して血管壁を癒着させる方法です。
日本では保険適応になっている薬剤もあります。
手術と違って大きな傷はできませんが、薬による副作用があります。
静脈奇形
レーザー治療、硬化療法、手術などがありますが、症状に応じた治療が必要で、複数の治療法を併用して行うこともあります。
動静脈奇形
手術や保存療法(圧迫療法)、硬化療法などがあります。
限られた部位に発生している場合、手術で切除できれば完治できる可能性が高い反面、広範囲に及ぶ場合は神経や筋肉などの組織を損傷する恐れがあり、検討を要します。
弾性ストッキングなどを使用した圧迫療法は病気の進行を抑える可能性があります。
硬化療法では、血流の減少や消失によって改善していきます。
血管腫治療のリスク
血管腫、血管奇形は状態に応じて、適切な治療法を選択します。
手術による切除の場合、筋肉や神経などの組織を損傷するリスクがあり、慎重に検討したうえで他の治療法も考えます。
Vビーム
乳児血管腫や単純性血管腫、老人性血管腫、くも状血管腫、静脈湖の治療です。
ダウンタイムとして、内出血、肌の赤みや腫れなどを生じることがあります。
通常、内出血は、1~2週間程度、赤みや腫れは1日~1週間程度で軽快します。
施術後は紫外線対策を十分に行ってください。
洗顔・メイク・入浴は当日から可能です。
妊娠中の方は、Vビームによる施術を受けられません。
硬化療法
リンパ管奇形、静脈奇形、動静脈奇形の治療です。
静脈の収縮が不十分な場合、血栓ができ、痛みや色素沈着などを生じることがあります。
血管腫・血管奇形の治療料金
当院で行っている治療の料金については、以下の通りです。
Vビーム
全顔 | 33,000円 |
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ほほ | 22,000円 |
鼻 | 11,000円 |
静脈湖 1箇所 | 16,500円 |
傷痕、ケロイド、いぼ 1箇所 | 11,000円 |
老人性血管腫 5箇所 | 11,000円 |
※保険診療の場合 約6,500円~32,000円
3割負担の場合に必要な金額の目安です
都内在住で中学生までのお子様は実費0円になります
血管腫、血管奇形に関するご相談、治療なら池袋駅前のだ皮膚科へ
血管腫、血管奇形には、生まれつきのものや年齢に伴って発症するものなど、さまざまな種類があります。
当院では、患者さんの症状に応じて、適切に診断と治療を行っています。
気になる症状のある方は、お気軽にご相談ください。