皮脂が過剰に分泌されると、皮膚表面の水分と皮脂のバランスが崩れ、肌トラブルを起こしやすくなります。
今回は、皮脂の過剰分泌で起こる症状や原因、当院の治療法などをご説明します。
皮脂が過剰分泌になる症状と原因
皮脂には、皮脂膜を作って皮膚を外部からのダメージや異物から保護し、水分の蒸散を抑えるはたらきがあります。
皮膚の皮脂と水分の量のバランスが保たれることにより、健やかな肌を作ることができます。
しかしなんらかの原因によって皮脂分泌が過剰になると、湿疹やニキビなどが起きることがあります。
脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは、眉部や眉間、鼻のわき、耳、頭部など、皮脂分泌が多い部位に生じる湿疹です。
赤みやうろこ状の皮膚の皮むけができます。
症状がアトピー性皮膚炎などほかの皮膚炎と似ているため、悩んでいる方も少なくありません。
脂漏性皮膚炎の原因の一つはカビの一種であるマラセチア菌の過剰増殖とされているため、皮膚科で治療が必要です。
ニキビ
ニキビは毛穴に皮脂がつまることで生じる炎症性疾患です。
医学的には尋常性ざ瘡といい、思春期から青年期の顔や胸、首、背中などにできやすく、悪化すると赤みや膿をもったニキビとなります。
ニキビは毛穴のつまり、過剰な皮脂分泌、アクネ菌の繁殖が原因とされています。
ホルモンの影響により皮脂分泌が過剰になって毛穴がつまり、皮膚の常在菌が皮脂をエサとして成長することでニキビが生じると考えられています。
大人になると、睡眠不足やストレス、誤ったスキンケア、肌の乾燥などがニキビの発生要因のひとつとされています。
皮脂分泌が多い場合のケア方法
皮脂分泌が過剰な場合のケア方法として、主に以下のようなものが考えられます。
十分な紫外線対策をする
肌は紫外線を浴びると水分量が低下することが知られています。
紫外線は季節や天候を問わず、一年中降り注ぎます。
紫外線はさまざまな肌トラブルを招くため、室内外問わず日焼け止めを塗るようにしましょう。
また日傘や帽子、サングラスなどを活用して肌を健やかに保ちましょう。
バリア機能を正常に保つ
肌のバリア機能を向上させることは、皮脂分泌の抑制につながると考えられています。
肌への刺激や乾燥は、肌のバリア機能低下を招きます。
洗顔やクレンジングの際は、やさしく肌に触れ、できるだけ摩擦による刺激を起こさないようにしましょう。
また皮脂の取りすぎは余計に皮脂分泌を促すといわれています。
洗浄力の高い界面活性剤入りのクレンジングなどは避けるとよいでしょう。
生活習慣を整える
睡眠不足はホルモンバランスが乱れ、皮脂分泌も正常に機能しなくなります。
また睡眠不足は交感神経が優位になり、男性ホルモンが活性化され、皮脂分泌の量が増えることにつながります。
また食生活を見直すことも大切です。
特にビタミンB1やビタミンCなどを積極的に摂るとよいでしょう。
ビタミンB1は皮脂分泌を抑え、コラーゲンの生成を助けるはたらきがあります。
うなぎや豚肉、レバーなどに多く含まれます。またビタミンCは皮膚や粘膜を保護し、肌トラブルを予防するはたらきがあります。
キウイやいちごなどの果物、ブロッコリーやピーマンなどの野菜に多く含まれます。
脂漏性皮膚炎の治療
当院で脂漏性皮膚炎の治療をする場合、次のような薬物療法を行うことがあります。
ニゾラール(成分はケトコナゾール)
ニゾラールなどの抗真菌剤を使用することがあります。
脂漏性皮膚炎の原因とされるマラセチア菌を殺します。
ローションタイプとクリームタイプがあり、一般的に顔面にはクリームタイプ、頭皮にはローションタイプが適しています。
ローションタイプのジェネリックにはスプレータイプのものもあるので使いやすいのを使うといいでしょう。
ステロイド
ステロイドは脂漏性皮膚炎の炎症が特に強い場合に、一週間程度使うことがあります。
赤みがひどいときに塗り始め、炎症が治まってからニゾラールに変えて治療を続けるとステロイドによる副作用を予防することができます。
ステロイドを長期塗り続けてしまうと毛穴の炎症が悪化して頭や顔にニキビが増えてしまうことがあるので注意が必要です。
ニキビの治療
当院でニキビの治療をする場合、次のような薬物療法を行うことがあります。
レチノイド
毛穴の角化を抑制し、毛穴つまりを改善することによってニキビを改善します。
個人差はありますが、2~3週間ほどで効果が現れ、1~2ヵ月ほどで効果を実感できる場合が多いです。
過酸化ベンゾイル
抗菌作用があり、毛穴の角化や炎症を抑制し、ピーリングのような効果が期待できます。
抗菌薬
ニキビの炎症が強い場合、飲み薬を併用することがあります。
イソトレチノイン
内服薬や外用薬で効果が得られない場合や、膿疱を形成する嚢胞性ざ瘡が生じている場合などは、皮脂分泌や異常な角化を抑えるイソトレチノインを使用することがあります。
日本では保険適用外ですが、海外では重症ニキビでは第一選択薬として知られ、ボコボコして治りにくいニキビには特に効果的とされています。
スピロノラクトン
もともとは利尿薬として使用されている薬です。
男性ホルモンを抑えることで皮脂分泌を抑えるはたらきがあります。
男性ホルモンが皮脂分泌の増加に関与しているため、スピロノラクトンや米国で認可されているその類似薬の外用薬などが症状の改善に効果が期待できます。
治療の副作用・リスク
脂漏性皮膚炎やニキビなどの治療の効果や経過には個人差があります。
気になる症状が続く場合は、医師へ相談しましょう。
ニゾラール(成分はケトコナゾール)
主な副作用として、肌の赤み、紅斑、接触性皮膚炎などが起きることがあります。
ステロイドのぬり薬
長期間使用により、毛細血管拡張、皮膚が薄くなるなどの副作用が報告されています。
レチノイド
主な副作用として、肌の赤み、ヒリヒリ感などがありますが、通常1~2週間ほどで落ち着きます。
また妊娠中、授乳中の方は使用できません。
過酸化ベンゾイル
主な副作用として、肌の赤み、ヒリヒリ感などがあります。
使用を開始してから1~2ヵ月以内に症状が現れることがあり、かゆみやかぶれの症状が出ることがあります。
強い症状がみられた場合には、必ず医師へ相談しましょう。
抗菌薬(ルリッド、ビブラマイシン、ミノマイシン)
主な副作用として、下痢や吐き気、めまいなどが起きる可能性があります。
イソトレチノイン
主な副作用として、手足の皮むけ、肝機能障害、高脂血症などが起きることがあります。
また、胎児奇形を起こす可能性があるため、妊娠を希望している場合や内服から1ヵ月後までは避妊が必要です。
スピロノラクトン
主な副作用として、倦怠感、利尿作用、月経不順などが起きることがあります。
また、妊娠中や授乳中、肝機能障害、腎機能障害、高カリウム血症などがある方は使用できません。
※イソトレチノイン、スピロノラクトンについて
- イソトレチノインは、医薬品医療機器等法上、未承認医療薬です。
- イソトレチノインは医師が個人輸入しています。
- イソトレチノインは米国のFDA(食品医薬品局)などから承認されています。主な副作用として、催奇形性やうつ病などの報告があります。
- スピロノラクトンは、医薬品医療機器等法上、高血圧症、浮腫などの効能・効果では承認されていますが、ニキビ治療では国内で承認されていません。
- スピロノラクトンは医薬品卸業者より購入しています。
- スピロノラクトンは承認されている効能・効果を目的として使用していません。主な副作用として、生理不順、不正出血などの報告があります。
未承認の医療機器や医薬品については、下記ページをご確認ください。
料金
当院で脂漏性皮膚炎やニキビなどを治療する場合の費用は、以下の通りです。
保険診療
初診料 :約900円
再診料 :約400円
処方料 :約200円
自費診療
スピロノラクトン (25mg/日) 30日分 | 4,400円(税込) |
イソトレチノイン(イソトロイン、20mg/日)30日分 | 16,500円(税込) |
脂漏性皮膚炎やニキビなど、皮脂の過剰分泌による症状でお悩みの方は池袋駅前のだ皮膚科へ
皮脂が過剰に分泌されることにより、脂漏性皮膚炎やニキビなどを起こす可能性があります。
普段から十分な紫外線対策をする、生活習慣を整えるなど、健やかな肌環境を整え、皮脂の過剰分泌を防ぎましょう。
脂漏性皮膚炎やニキビなどでお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。