
ニキビ跡にはへこみ、盛り上がり、赤み、黒みと大まかに分けて4種類ありますが、サブシジョンはへこみの治療になります。
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サブシジョンとはどんな施術?
サブシジョンは皮膚の下にあるニキビ跡で固くなってしまった組織を針で切り、クレーターの陥没した部分を上に持ち上げる施術です。ローリング型と呼ばれる面で凹凸が目立つタイプのニキビ跡に特に適した治療です。ニキビによる慢性的な炎症が続くと、線維化と言って皮膚の下の組織が固くがちがちになってしまいます。ニキビ肌の方の皮膚が固く厚ぼったくなるのはこのためです。この線維化が局所的に強く起こると、クレーターのように面で凹凸が目立つようになります。
範囲の広い、浅いニキビ跡にはダーマペンが適していますが、深く局所的なニキビ跡のへこみはダーマペンだけで治すのは難しいことがあります。そのときに活躍するのがサブシジョンです。聞き慣れない単語かもしれませんが、英語でsubscisionもしくはsubcutaneous incisional surgeryと呼ばれ、世界中でニキビ跡の治療として20年以上行われています。
当院のサブシジョンの施術について
へこんだニキビ跡の原因の一つは、ニキビ跡の下に固い線維があり、それが皮膚の表面を引っ張っているためです。サブシジョンでは皮膚の表面から針を刺して、その線維を物理的に切断することで、ニキビ跡のへこみを改善します。
もともとは採血のときのような鋭い針がサブシジョンに使われていましたが、最近ではカニューレといって先が鈍く長い針が使われる手法が主流になっています。この方法によって施術後の内出血のリスクを減らすことができます。当院でもこの方法を採用しています。狭い範囲を治療する場合は鋭い針を使った方法が効果的な場合がありますので、両方の方法を範囲や部位に応じて使い分けています。
サブシジョンが一番よく使われるのはニキビ跡の凹みですが、水ぼうそうの跡の凹み、傷跡の凹み、目立つほうれい線、を治療することに応用する方法があり、当院でもそれぞれ治療経験があります。
局所麻酔をかけてから、針で皮膚に穴をあけ、そこからカニューレでニキビ跡のへこみの下に広がる線維を切断していきます。2cm四方で22,000円の価格で治療を行っています。範囲が広い場合は、治療の範囲を合算した価格になります。
サブシジョン単独で治療を行う方法と、ヒアルロン酸注入を同時に併用する方法があります。サブシジョンと同時に併用する場合は、ほうれい線などの通常のヒアルロン酸注入とは異なり、柔らかいヒアルロン酸をサブシジョンで開けた空間に流し込み、凹んだ皮膚を上に持ち上げると同時に、サブシジョンで開けた空間が癒着で再度閉じてしまうのを防ぎます。ヒアルロン酸を併用するとサブシジョンの1回あたりの効果を上げることができます。ヒアルロン酸自体は半年ほどで体に吸収されてなくなりますが、その間に自分の組織がヒアルロン酸を足場にしてできると言われているため、半年経ってもその効果が完全に消失するということはありません。ニキビ跡の凹みが強い場合にはヒアルロン酸併用の方法を推奨しています。
サブシジョン単独でもクレーター治療に効果を出せますし、ダーマペン・フラクショナルレーザーといった肌表面の治療、TCAクロスという細かいニキビ跡の凹みを治療する施術を併用することでさらに効果を上げることも可能です。当院では多数のサブシジョンによる治療実績があり、その一部を下で紹介します。
当院での症例1
こめかみの深いニキビ跡の凹みでお悩みだった当院の患者様。ダーマペンを複数回やっても改善しないと受診されました。ヒアルロン酸を併用したサブシジョンを1回だけ行い、4ヶ月後に平坦に。

長く鈍い針のカニューレを使ったサブシジョンを1回、ヒアルロン酸0.2ccを同時に使って施術しました。一度で強い効果を実感したい場合はヒアルロン酸の併用がオススメです。すでに4ヶ月経ってヒアルロン酸の大部分は吸収されていますが、効果は持続しています。
クレーターが深い場合はヒアルロン酸を追加するとより効果的で、半年ほどしてヒアルロン酸が体に吸収されても効果がある程度持続することが知られています。その理由は
- ヒアルロン酸自体にコラーゲン産生を促す作用がある
- ヒアルロン酸であいたスペースに自分の組織ができて置き換わるから
の2つと考えられています。
当院での症例2
こめかみとほほの深いニキビ跡の凹みでお悩みだった当院の患者様。ヒアルロン酸を併用したサブシジョンで1年4ヶ月後に改善しました。


治療の詳細は
- 長く鈍い針のカニューレを使ったヒアルロン酸併用のサブシジョンを4回(こめかみはヒアルロン酸併用なしで追加で1回) → 深い凹みを改善
- 他院でのフラクショナルレーザー → 表面の質感を改善
写真のように深いクレーターの場合はフラクショナルレーザーやダーマペンだけで平坦にするのは難しい。サブシジョンを使ってニキビ跡で硬くなった組織を皮膚の下から切り、上に押し上げると効果的です。今回の患者様のようにヒアルロン酸を同時に使うことで一回あたりの効果をさらに上げることが可能です。
当院での症例3
こめかみとひたいにできた深いニキビ跡のクレーターでお悩みだった当院の患者様。1年半後には写真のようにかなり平坦になりました。


治療は
- サブシジョン2回 → ヒアルロン酸は併用なし。深い凹みを改善。カニューレという長く鈍い針を使ってダウンタイムとリスクを最小限に
- 当院のダーマペン4 を2回とセルフダーマペン → 表面の凹凸の境界を目立ちにくく※セルフダーマペンは当院で推奨したわけではありません
この患者様の場合はかなり深めのクレーターでしたが、ヒアルロン酸を使わないサブシジョンで回数も少なくここまでいい結果を出すことができました。こめかみや頬、ひたいの深いニキビ跡にはサブシジョンはいい適応です。
当院での症例4
下記は当院でカニューレを使ったサブシジョンで2回治療したほほのニキビ跡の写真です。2回目はヒアルロン酸注入を組み合わせています。


当院での症例5
下記は当院でカニューレをつかったサブシジョンでこめかみとほほを治療した写真です。こちらの患者様はダーマペンで表面のニキビ跡や肌質の改善も行いました。

当院での症例6
- カニューレを使ったサブシジョンを深いひきつれのような凹み(ローリングスカー)に
- ヴァンパイアフェイシャルというPRPを使ったダーマペンを表面の浅い凹凸に
組み合わせで治療した当院の症例です。特にほうれい線付近のひきつれのような強い凹みがなくなり、全体的に凹凸の少ない肌になりました。

当院での症例7
左ほほのニキビ跡の深い凹みを当院で2回サブシジョンで治療して半年後の経過です。凹みが強かったので、2回ともヒアルロン酸を併用しています。表面のテクスチャーや色調の違いは残るもののほぼ平坦になっています。

サブシジョン治療の流れ
- サブシジョンを行う場所には長く鈍い針(カニューレ)を使うので、カニューレを入れる場所に細い針で局所麻酔をかけます
- 局所麻酔のかかった部分に針で小さな穴を開けます
- 針穴からカニューレを挿入し、皮膚の下のニキビ跡で硬い組織を切っていきます。同時に局所麻酔を散布することで痛みを和らげます。
- ヒアルロン酸を同時に使う場合は、サブシジョンで開けた空間にヒアルロン酸を注入していきます。
ページの最後にある動画も参考にしてください。
サブシジョンを受けられない方
- 妊娠中の方
- ワーファリンなど血をサラサラにする内服薬を使用中の方
よくある質問
- サブシジョンはどのくらいの間隔で治療を受ければいいですか?
- 1回で十分な効果が出れば一度で治療を終了することもありますし、3回程度、1ヶ月ほど間隔をあけて治療を繰り返す場合もあります。治療効果をみて、回数や間隔を決めます。
- サブシジョンのダウンタイムはどのくらいですか?
- サブシジョンの範囲により程度の差はありますが、内出血が出ることが多いです。内出血が出た場合は、1週間から2週間ほど紫色や黄色になりますが、最終的には吸収されて消えます。洗顔、化粧は針穴を避ければ当日から可能です。
- サブシジョン単独でニキビ跡の治療は可能ですか?
- 深いニキビ跡にはサブシジョンを使って治療することが多いですが、ほかのニキビ跡の治療と組み合わせるとより有効です。表面のへこみにはダーマペン、ニキビ跡の赤みにはVビーム、と症状によって施術の組み合わせは変わります。
- 深くへこんだニキビ跡では、サブシジョンとヒアルロン酸注入を組み合わせることもあります。1箇所や2箇所など限られた深いニキビ跡の場合には、切除する方が有効な場合もあります。
- 診察で最適なニキビ跡の治療を決めてから治療に移ります。