モイゼルトとは?
モイゼルト軟膏は、PDE4阻害剤という、ステロイド外用剤や免疫抑制外用剤などとは異なる新しい作用を持つ、アトピー性皮膚炎治療薬です。
PDE4は炎症を抑えるシグナルを分解して、炎症を増大させる酵素で、アトピー性皮膚炎の炎症細胞でも増えていることが分かっています。
モイゼルト軟膏はPDE4の働きを阻害することで、炎症を抑制し、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみを改善します。
アトピー性皮膚炎の方の多くは、アトピー素因を持っています。
そのため、治療目標は、症状があっても軽く、日常生活に支障がない寛解状態に到達して、維持することです。
基本的な薬物治療は外用療法なので、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏(商品名:プロトピック軟膏)、デルゴシチニブ軟膏(商品名:コレクチム軟膏)といった今までの外用薬とは異なる作用の仕方を持つ、安全性に優れた、使用上の制約が少ない、長期間使用できる外用剤が望まれていました。
モイゼルト軟膏には、1%製剤と0.3%製剤があります。
また生後3ヵ月以上 2 歳未満の乳幼児アトピー性皮膚炎患者を対象に国内臨床試験も実施され、有効性と安全性が確認されたので、2023 年 12 月に添付文書改訂が行われました。
モイゼルトの使い方
使用方法/使用回数
大人は1%製剤を1日2回、患部に適量塗ります。
子どもは0.3%製剤を1日2回、症状によっては1%製剤を1日2回、患部に適量塗ります。
使用量
大人の両手のひらの広さに、1フィンガーチップユニット (FTU)くらい、塗布します。
1FTUとは、人差し指の先から第一関節までチューブから絞り出した量のことです。モイゼルト軟膏の場合、約2.5cm、約0.35gになります。
すり込むのではなく、軟膏をのせるように塗ることが大切です。
すり込むように塗ると、摩擦で患部が刺激され、炎症が増悪する原因になります。
患部を刺激しないように、ティッシュが皮膚にくっつく程度に塗りましょう。
使用期間
1%製剤で治療開始から4週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止してください。
改善した場合は継続の必要性について検討します。
医師の指示に従い、漫然と長期にわたって使用しないようにしましょう。
子どもに0.3%製剤を使用して、症状が改善しない場合は、1%製剤へ切り替えることがあります。
その他
- 皮膚感染症と診断された部位を避けて使用してください。
なお、やむを得ず使う場合は、医師の指示に従いましょう。 - 粘膜や明らかに局面(直径2〜3cm以上、平らで盛り上がっている皮膚の状態)を形成しているびらんなどへは塗らないでください。
- 万が一、眼に入った場合は水で洗い流し、症状が重い場合は、医師の診療を受けてください。
モイゼルトの副作用・注意事項等
禁忌
モイゼルト軟膏の成分でアレルギー症状を起こしたことのある方は、使用できません。
副作用
モイゼルト軟膏で以下のような症状があらわれる場合があります。
- 色素沈着
- とびひ
- ニキビ
- 赤み
- 刺激感
- 腫れ
- かゆみ
- 毛包炎(おでき) :赤い発疹で、膿をもっていることもある。
- 接触皮膚炎(かぶれ): 接触した部分がかゆくなったり、赤くなったり、小さな水ぶくれができたりする。
気になる症状があらわれた場合は、すぐに医師または薬剤師に相談しましょう。
注意事項
- モイゼルト軟膏を塗り忘れた場合は、気づいた時に1回分を塗りましょう。
次に塗る時間が近い場合は、予定の時間に1回分のみを塗りましょう。
2回分を一度に塗らないようにしてください。 - 動物実験(雌ラット:皮下)で、通常使用量の263倍で、胚もしくは胎児の死亡率高値と胎児の心室中隔膜性部欠損が報告されています。
妊娠する可能性のある方は、モイゼルト軟膏を使っている間は、適切に避妊する必要があります。
避妊期間は、モイゼルト軟膏の血中消失半減期と個体差などを考慮して、投与終了後、最低2週間までが推奨されています。 - 妊婦または妊娠している可能性のある方は、医師に相談しましょう。
- 授乳している方は、授乳を継続するか中止するかを決める必要があるので、医師に相談してください。
費用(薬価)
モイゼルト軟膏0.3%、1%の薬価は「142.00円/g」「152.10円/g」です。
0.3%製剤10g規格 | 1,420円 |
1%製剤10g規格 | 1,521円 |
公的保険が適用された3割負担の場合、「0.3%製剤10g規格:426円」「1%製剤10g規格:456円」になります。
*薬剤費のみの価格です。
薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和5年12月20日適用)
保管および取り扱い上の留意点
- 光を避けて、密栓したまま、小さい子どもの手の届かない所へ保管してください。
- 有効期間は30ヵ月です。使用期限を過ぎたものは使用しないでください。
モイゼルトのよくある質問
モイゼルト軟膏はステロイドより強いですか?
モイゼルト軟膏の強さを示す指標はありません。
しかし、動物実験ではクロリムス軟膏(商品名:プロトピック軟膏)より強く、ベタメタゾン吉草酸エステル軟膏 0.12%(商品名:リンデロンV0.12%など、ストロング)より弱いとされています。
モイゼルトはどのくらいで効果が出るのか?
モイゼルト軟膏は、使用開始1週間後くらいから効果を実感でき、1ヵ月かけて徐々に上がります。
モイゼルト軟膏はニキビができますか?
副作用でニキビがあらわれる場合があります。
使用中にニキビができた場合は、医師に相談してください。
モイゼルト軟膏の即効性は?
モイゼルト軟膏には、ステロイド外用薬のような即効性はありません。
モイゼルト軟膏はステロイドと併用できますか?
併用できます。モイゼルト軟膏には、一緒に使えない薬がありません。