スピロノラクトン

スピロノラクトンは日本でも古くから高血圧のお薬として使われていますが、ニキビや薄毛治療にも使えるお薬です。

目次

スピロノラクトンとは

スピロノラクトンは、日本では主に高血圧症や心不全などの治療に用いられるお薬です。「アルダクトンA」という商品名でも世界的に広く知られており、日本で錠剤が承認されたのは1963年と、非常に古くから医療現場で使われてきた実績があります。

スピロノラクトンには、男性ホルモン(アンドロゲン)の働きを抑制する作用があり、男性ホルモンの影響でできる大人ニキビ(尋常性ざ瘡)や、女性の脱毛症(FAGA)の改善に効果を発揮します。

ただし、高血圧などの治療では健康保険が適用されますが、ニキビや薄毛治療を目的として使用する場合は保険適用外で、全額自己負担です。

以下の記事に、ニキビや女性型脱毛症についての説明がありますので、あわせて読んでみてください。

ニキビ
女性の薄毛・脱毛(FAGA、FPHL、female pattern hair loss)

おすすめな方

スピロノラクトンは以下のようなニキビや薄毛でお悩みの方におすすめです。

  • 保険適用の治療薬で改善に乏しい女性の方
  • 生理周期のたびに悪化するニキビでお悩みの方
  • 分け目や生え際の薄毛が気になる女性の方
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)といった産婦人科系の病気で男性ホルモン値が上がり、ニキビや抜け毛が気になる方
  • 年齢とともに薄毛が目立ってきた40歳以降の女性の方

上記以外の方でも、医師が診察し、スピロノラクトンが適切と判断する場合もあります。
※男性のニキビや薄毛治療にスピロノラクトンは通常使用しません。

スピロノラクトンの効果

ここでは、スピロノラクトンの3つの効果について解説します。

利尿降圧効果

スピロノラクトンは、高血圧症や心不全、むくみ(浮腫)などの治療に用いられる利尿薬として開発されました。腎臓にある尿細管という部分に作用し、体から余分な塩分(ナトリウム)と水分を尿として排泄させる働きがあります。

体内の水分量が減ることで血液の循環量が少なくなり、結果として血圧が下がる仕組みです。日本でも錠剤が1963年に販売されるようになり、治療実績の豊富な古くからある薬の一つで、その有効性と安全性は広く認められています。

ニキビ治療への効果

ニキビができるのは、男性ホルモン(アンドロゲン)の働きが原因の一つとされています。スピロノラクトンは男性ホルモンの作用を抑制し、ニキビの原因となる過剰な皮脂分泌を抑えます。この作用のため、ニキビの改善や予防に効果を期待できます。

女性型脱毛への効果

女性の薄毛は、加齢などにより女性ホルモンが減少し、相対的に男性ホルモン(アンドロゲン)の影響が強まることが原因の一つです。

スピロノラクトンが持つ男性ホルモン抑制作用は、この男性ホルモンが毛根に作用するのを抑え、毛周期の乱れを整えます。その結果、抜け毛の減少や、髪の毛が太くなることによるボリュームアップ、発毛促進の効果につながると考えられています。

スピロノラクトンの使い方

ニキビや女性の薄毛治療目的の場合、スピロノラクトンは通常1日1回1錠から服用を開始します。開始用量は1日50mg程度が一般的ですが、効果や体調を見ながら最低25mgから100mg程度まで徐々に調整されることがあります。利尿作用があるため、夜間のトイレの回数を増やさないよう、午前中に服用するのがおすすめです。

効果を実感するには時間がかかるため、少なくとも6か月以上の継続が必要です。特に女性の薄毛治療については、1年以上の長期服用がより効果的であるという海外の研究データもあります。さらに効果を高めるため、ミノキシジルの外用薬など他の治療と組み合わせて行われることも少なくありません。医師の指示に従い、根気強く治療を続けることが大切です。

他の治療薬との比較

スピロノラクトンと他の治療薬を比較した結果を表にまとめてみました。

【スピロノラクトンと他の治療薬との比較】

薄毛治療

スクロールできます
スピロノラクトンミノキシジルフィナステリドデュタステリド
剤形内服内服・外用・注射内服・注射内服
作用の仕方・アルドステロン拮抗作用により、脱毛を抑制する
・男性ホルモンを抑えて皮脂分泌を抑える
・毛周期を整える。
・血管を拡張して毛包への血流を改善、発毛を促進する
・5α-還元酵素Ⅱ型を抑制して、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を阻害
・発毛作用を示す
・5α-還元酵素Ⅱ型を抑制して、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を阻害
・発毛作用を示す
対象女性のみ男女両方基本的に男性基本的に男性
副作用頻尿、生理不順、倦怠感内服:多毛、むくみ、動悸、頭痛
外用:赤み、かゆみ
注射:痛み、赤み、むくみ
性欲減退、肝機能障害性欲減退、肝機能障害、女性化乳房

ニキビ治療

スクロールできます
スピロノラクトン抗生剤イソトレチノイン
剤形内服内服・概要内服
作用の仕方・アルドステロン拮抗作用により、脱毛を抑制する
・男性ホルモンを抑えて皮脂分泌を抑える
・ニキビの原因菌アクネ菌を抑える
・炎症を抑える働きを持つ物質の産生を抑える
・皮脂腺を強力に縮小する
・毛穴の角化を正常にする
対象女性のみ中等度ニキビ、男女両方重症ニキビ、男女両方
副作用頻尿、生理不順、倦怠感消化器症状、光線過敏症、めまい・頭痛催奇形性、皮膚や粘膜の乾燥、肝機能障害、脱毛、うつ病

以下で、1つずつ、解説します。

ミノキシジル

ミノキシジルがスピロノラクトンと大きく違うのは、作用機序です。ミノキシジルは頭皮の血行促進や毛母細胞活性化で発毛を促すのに対し、スピロノラクトンは男性ホルモンを抑制するという働き方をします。

ミノキシジル外用薬は一般用医薬品としても市販(男性用5%、女性用1%)されています。また当院では高濃度外用薬(例:5%フォーム)を販売しており、ほかに国内未承認ですが世界的にデータのあるミノキシジルの内服薬、注射も選択可能です。スピロノラクトンとの併用で相乗効果も期待できます。

フィナステリド

フィナステリドは主に男性型脱毛症(AGA)治療用の内服薬で、男性ホルモンDHTの産生を抑えます。男性への使用は日本の脱毛症診療ガイドラインで推奨度A(行うよう強く勧める)です。

スピロノラクトンもホルモンに作用しますが、作用点(DHT産生抑制 vs アンドロゲン受容体拮抗)や主な対象(男性 vs 女性)が異なります。女性へのフィナステリド使用は標準治療ではありませんが、有効性を示唆する論文報告もあり、医師の判断で用いられる場合があります。

デュタステリド

デュタステリドも男性型脱毛症(AGA)治療用の内服薬で、男性ホルモンDHTの産生を抑制します。フィナステリドより強力な作用を持つとされ、日本の脱毛症診療ガイドラインで男性への推奨度はA(行うよう強く勧める)です。

スピロノラクトンとは作用機序(DHT産生抑制 vs アンドロゲン受容体拮抗)や主な対象(男性 vs 女性)が異なります。女性への使用は標準治療ではありませんが、有効性を示唆する論文報告もあり、医師の判断で検討されることがあります。

抗生剤

内服薬・外用薬の両方がある抗生剤(抗菌薬)は、ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖抑制や炎症を鎮める目的で、主に炎症性ニキビの治療に使われます。ホルモンバランスや皮脂分泌に働きかけるスピロノラクトンとは異なるアプローチで作用します。

スピロノラクトンと併用されることもありますが、長期間使うと耐性菌発現のリスクがあるため、漫然とした使用は避け、医師の指示に従うことが大切です。

イソトレチノイン

イソトレチノインは、皮脂腺縮小、強力な皮脂分泌抑制、角化異常改善作用を持つ、重症ニキビ治療の内服薬です。ホルモンに作用するスピロノラクトンとは異なり、皮脂や毛穴に直接強く働きかけます。

非常に効果が高い反面、国内未承認であり、催奇形性など重篤な副作用リスクもあるため、医師の適切な管理下でのみ使われるお薬です。スピロノラクトンで効果不十分な場合の選択肢となり得ます。スピロノラクトンとの併用も問題はありませんが、イソトレチノインはニキビに効果の高い内服薬のため、通常併用は行っていません。

費用

スピロノラクトンは医療保険の対象ではなく、自由診療扱いなので、全額自費になります。1日1回1錠25mgで1か月4,400円(税込)、50mgで8,800円です。6か月以上の継続で効果が期待できます。

治療の流れ

当院では以下の流れで、治療を行います。

  1. 医師の診察
  2. 必要に応じて血液検査
  3. 治療方法の説明
  4. 薬の処方

まず、医師が診察してお悩みや症状などを詳しくお伺いし、スピロノラクトン治療が適切かどうかを判断します。ご希望がある場合には、遠慮なくお申し出ください。安全に治療するために、腎機能や血中のカリウム値などを調べる血液検査をする場合があります。

診察や検査結果に基づき、スピロノラクトンの効果、予想される副作用、正しい服用方法、治療期間の目安などについて、医師が丁寧に説明します。患者さんにご理解・ご納得いただけたら、お薬の処方です。治療開始後も、定期的な診察で効果や副作用を確認しながら、治療を継続いたします。

よくある質問

女性型脱毛症に効く薬は

女性型脱毛症治療で最も一般的に推奨されるのは、ミノキシジルです。頭皮の毛乳頭細胞に働きかけ、血流を改善し毛の成長を促す効果があります。外用薬(塗り薬)のほか、クリニックでは内服薬や頭皮への直接注射も選択可能です。

その他、男性ホルモンの影響を抑えるスピロノラクトンや、髪に必要な栄養素を補給するパントガールなども、薄毛の状態に合わせて選択肢となります。

スピロノラクトンは女性にどのような効果があるのでしょうか?

スピロノラクトンは、女性型脱毛症の原因の一つとされる男性ホルモンの働きを抑えることで、抜け毛改善効果が期待されるお薬です。

複数の研究を統合した2023年の報告では、スピロノラクトン単独での脱毛改善率は56.60%でした。また、ミノキシジルの外用薬や内服薬など他の治療と併用した場合の改善率は65.80%と、単独使用よりも高い効果が報告されています。

スピロノラクトンで抜け毛が増えるのはなぜですか?

スピロノラクトンの服用開始後、一時的に抜け毛が増加することがあります。これは「初期脱毛」と呼ばれる現象です。

薬が効き始め、ホルモンバランスが変化することで、乱れていた毛髪の成長サイクルがリセットされ、休止期にあった毛髪が一時的に抜け落ちるためだと考えられています。通常は一過性のもので、そのまま続けると止まり効果を実感できるようになります。

副作用・注意事項

副作用

スピロノラクトンを服用すると、以下のような副作用があらわれる場合があります。

  • 利尿作用
  • 電解質異常
  • 生理不順
  • 食欲不振や悪心・嘔吐など消化器症状

上記以外にもいつもと体調が違う場合は、副作用の可能性がありますので、医師にご相談ください。

注意事項

  • 降圧作用によるめまいなどがあらわれる場合があるので、高所作業や自動車などの運転には注意してください。
  • 男性や妊娠中の女性での内服は推奨されていません。

女性型脱毛症に関するご相談、治療なら池袋駅前のだ皮膚科へ

高血圧治療に使われるスピロノラクトンは、女性のニキビ治療や脱毛治療の選択肢の一つです。日本では古くから使われているお薬で安全性も確立していますが、ニキビや脱毛に使う場合には、医療保険の対象外です。

女性で薄毛にお悩みがある方は内服薬もありますので、当院へお気軽にご相談ください。

【池袋駅前のだ皮膚科 野田真史監修】

スピロノラクトンについて

未承認医薬品等(異なる目的での使用)

医薬品医療機器等法上、スピロノラクトンは「高血圧症、浮腫など」の効能・効果で承認されていますが、ニキビ治療を目的とした使用については国内で承認されていません。

入手経路等

国内の医薬品卸業者より薬を仕入れています。

国内の承認医薬品の有無

スピロノラクトンは国内で承認されていますが、承認されている効能・効果および用法・用量と当院における使用目的・方法は異なります。

諸外国における安全性等に係わる情報

副作用として報告されているもの:乳房痛、生理不順、不正出血など

医薬品副作用被害救済制度について

万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。

参考文献

添付文書「アルダクトンA」

インタビューフォーム「アルダクトンA」

日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2024」

添付文書「フィナステリド錠」

添付文書「デュタステリド錠」

Spironolactone for treatment of female pattern hair loss

Finasteride and Its Potential for the Treatment of Female Pattern Hair Loss: Evidence to Date

The effectiveness of finasteride and dutasteride used for 3 years in women with androgenetic alopecia

The Efficacy and Safety of Oral Spironolactone in the Treatment of Female Pattern Hair Loss: A Systematic Review and Meta-Analysis

院長紹介

池袋駅前のだ皮膚科院長 野田 真史
池袋駅前のだ皮膚科院長
野田 真史
池袋駅前のだ皮膚科院長 野田 真史


学歴・資格

東京大学医学部医学科卒業

皮膚科専門医(日本皮膚科学会認定)

医学博士(東京大学大学院医学系研究科)

ニューヨーク州医師免許

ECFMG certificate(アメリカ医師国家試験合格証)

Master in translational science(米国ロックフェラー大学)

米国ロックフェラー大学皮膚科 (Associate Attending Physician)


略歴

2007年
東京大学医学部医学科 卒業
2009年
東京大学医学部附属病院 初期研修修了
2009年 2014年
東京大学皮膚科に入局し、東京大学医学部附属病院、関東労災病院で皮膚科医として勤務
米国Northwestern大学、Thomas Jefferson大学で診療研修
2013年
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医取得
2014年
東京大学大学院医学系研究科卒業、医学博士
米国ロックフェラー大学
Instructor in Clinical Investigation
兼 Associate Attending Physician
ニューヨーク州医師免許を取得し、診療にあたる
湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症の研究に従事し、Master in translational science(MSc)取得
2016年
東京大学医学部附属病院 皮膚科 助教
2018年
池袋駅前のだ皮膚科 開院
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