【乾癬の注射の値段】生物学的製剤にかかる治療費と高額療養費制度の活用法

乾癬の治療に使われる生物学的製剤の注射は、薬価だけを見ると非常に高額です。しかし、日本の公的医療保険と高額療養費制度を組み合わせれば、実際の自己負担額は大幅に抑えられます。

この記事では、皮膚科で処方される主な生物学的製剤の費用相場から、高額療養費制度や各種助成制度の活用法まで、治療費に関する不安を解消するための情報を網羅的にまとめました。

「注射の値段が気になって治療に踏み出せない」という方にこそ読んでいただきたい内容です。

目次

乾癬の注射治療はいくらかかる?生物学的製剤の薬価と自己負担額の目安

生物学的製剤の注射にかかる費用は、薬剤の種類と投与間隔によって大きく異なります。3割負担を適用するだけでも窓口で支払う金額はかなり変わります。

生物学的製剤の1回あたりの注射費用は数万円から十数万円になる

生物学的製剤は、遺伝子組み換え技術などを用いて作られる高分子の薬剤です。製造工程が複雑なため、従来の飲み薬や塗り薬と比べて薬価が高く設定されています。

たとえば、IL-17阻害薬のセクキヌマブ(商品名:コセンティクス)は1本あたり約5万円前後の薬価です。IL-23阻害薬のグセルクマブ(商品名:トレムフィア)は1本あたり約42万円前後と、薬剤によって差があります。

3割負担でも年間の自己負担額は数十万円に達する

日本の公的医療保険では、原則として医療費の3割が自己負担です。仮に年間の薬価総額が200万円であれば、窓口で支払う金額はおよそ60万円にのぼります。

ただし、後述する高額療養費制度を使うことで、この金額を月単位で上限額内に抑えることが可能です。制度を知らずに支払い続けると、本来不要な出費をしてしまうかもしれません。

主な生物学的製剤の薬価と3割負担の目安

薬剤名(一般名)1回あたりの薬価目安3割負担の目安
セクキヌマブ約5万円約1.5万円
イキセキズマブ約24万円約7.2万円
グセルクマブ約42万円約12.6万円
リサンキズマブ約51万円約15.3万円
アダリムマブ(BS)約2〜3万円約0.6〜0.9万円

乾癬の重症度によって選ばれる薬剤と費用は異なる

生物学的製剤の選択は、乾癬の重症度や過去の治療歴によって決まります。中等症から重症の尋常性乾癬で、従来の治療では十分な改善が得られなかった患者さんに処方されることが一般的です。

主治医と相談しながら、効果と費用のバランスを踏まえて薬剤を選ぶことが大切でしょう。体重や併存疾患の有無によっても投与量が変わる場合があります。

生物学的製剤にはどんな種類がある?乾癬に使われる注射薬を整理した

現在、日本で乾癬治療に使える生物学的製剤は複数の系統に分かれており、それぞれターゲットとする免疫物質が異なります。自分の症状や生活スタイルに合った薬剤を主治医と一緒に選ぶことが、治療の成否を左右します。

TNF-α阻害薬は乾癬治療で長い実績を持つ

TNF-α阻害薬は、炎症を引き起こすTNF-αというたんぱく質の働きを抑える薬剤です。インフリキシマブやアダリムマブが代表的で、日本では2010年から乾癬に使用されています。

10年以上の臨床データが蓄積されており、安全性に関する情報が豊富な点は安心材料になるでしょう。

IL-17阻害薬とIL-23阻害薬が現在の治療の主流になっている

近年登場したIL-17阻害薬(セクキヌマブ、イキセキズマブなど)とIL-23阻害薬(グセルクマブ、リサンキズマブなど)は、高い有効性から治療の中心になりつつあります。

PASI 90(皮疹面積・重症度指数の90%改善)の達成率がTNF-α阻害薬より高い一方、薬価はやや高い傾向にあります。

バイオシミラーの登場で費用負担が軽くなり始めている

バイオシミラー(バイオ後続品)とは、先行品と同等の品質・有効性・安全性を持つと承認された後発の生物学的製剤です。アダリムマブやインフリキシマブにはバイオシミラーが発売されています。

バイオシミラーを選択すれば年間の治療費を2〜3割程度抑えることが期待できます。主治医に切り替えの可否を相談してみる価値があるでしょう。

生物学的製剤の分類と代表的な薬剤

分類代表的な薬剤名投与間隔の目安
TNF-α阻害薬インフリキシマブ、アダリムマブ2〜8週ごと
IL-17阻害薬セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ2〜4週ごと
IL-23阻害薬グセルクマブ、リサンキズマブ4〜12週ごと
IL-12/23阻害薬ウステキヌマブ12週ごと

高額療養費制度を使えば乾癬の注射代は月額の上限で済む

高額療養費制度とは、1か月の医療費自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超えた分が後から払い戻される公的な制度です。生物学的製剤による乾癬治療でも適用されるため、実際に支払う金額は所得区分に応じた上限額で収まります。

高額療養費制度は所得区分に応じて自己負担限度額が決まる

自己負担限度額は、年齢と所得によって区分されています。69歳以下で一般的な所得の方の場合、月額の上限は約8万円程度が目安です。

住民税非課税世帯であれば月額3万5,400円が上限となり、所得が低いほど負担は軽くなります。

限度額適用認定証を事前に取得しておくと窓口負担を抑えられる

高額療養費制度は原則として後払い方式ですが、「限度額適用認定証」を事前に加入する健康保険に申請しておけば、窓口での支払いを上限額までに抑えることができます。

申請から発行までは数日から1週間ほどかかるのが一般的です。生物学的製剤による治療の開始が決まった段階で、すぐに申請手続きを進めておくとよいでしょう。

所得区分別の自己負担限度額(69歳以下の場合)

所得区分月額上限額の目安多数回該当の場合
年収約1,160万円以上約25万2,600円+α14万100円
年収約770〜1,160万円約16万7,400円+α9万3,000円
年収約370〜770万円約8万100円+α4万4,400円
年収約370万円以下5万7,600円4万4,400円
住民税非課税世帯3万5,400円2万4,600円

マイナ保険証を使えば限度額適用認定証なしでも上限額が適用される

マイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」に対応した医療機関では、限度額適用認定証がなくても窓口支払いが自動的に上限額に抑えられます。

対応医療機関かどうかは、受診前に確認しておくと安心です。

高額療養費制度以外にも使える医療費助成制度がある

高額療養費制度だけでなく、勤務先の付加給付制度や確定申告時の医療費控除など、複数の制度を組み合わせることで自己負担額をさらに減らせます。対象になる制度はすべて活用しましょう。

付加給付制度があれば自己負担額はさらに下がる

大企業の健康保険組合などでは、独自の「付加給付制度」を設けている場合があります。この制度が適用されると、高額療養費制度の上限額よりもさらに低い金額が実質的な自己負担の上限になります。

たとえば、月額の自己負担上限が2万5,000円に設定されている組合もあり、生物学的製剤の治療費が大幅に圧縮されるケースも珍しくありません。

確定申告の医療費控除で所得税の還付を受けられる

1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告で医療費控除を申請すると所得税の一部が還付されます。通院の交通費も控除対象のため、領収書を保管しておきましょう。

控除額は「支払った医療費の合計 − 10万円」で計算され、年間で数万円の節約につながることもあります。

自治体独自の医療費助成制度も確認したい

お住まいの自治体によっては、難治性の皮膚疾患に対する独自の医療費助成を行っている場合があります。対象や金額は自治体ごとに異なるため、市区町村の窓口で確認してみてください。

民間の医療保険に加入している方は、通院給付金の対象になるかどうかも保険会社に問い合わせておくとよいでしょう。

乾癬治療で活用を検討したい主な制度

  • 高額療養費制度(健康保険加入者なら誰でも利用可能)
  • 付加給付制度(勤務先の健康保険組合に確認)
  • 医療費控除(確定申告で申請)
  • 自治体の医療費助成制度(市区町村の窓口で確認)
  • 民間医療保険の給付金(保険会社に確認)

乾癬の生物学的製剤は通院スケジュールによって年間コストが変わる

生物学的製剤の年間費用は、薬価だけでなく投与間隔によっても大きく左右されます。導入期(治療を始めたばかりの時期)は通院頻度が高くなりますが、維持期に入ると間隔が広がり、1年間の総費用も落ち着いてきます。

導入期は2週間から4週間おきの通院が必要になる

多くの生物学的製剤では、治療開始後の数か月間は短い間隔で投与を行い、血中の薬物濃度を高める「導入期」が設定されています。

この時期は通院の手間と費用がかさみやすいため、事前にスケジュールの説明を受けておくと心の準備ができるでしょう。

維持期に入ると通院間隔は2か月から3か月に広がる

導入期を終えて症状が安定すると、投与間隔が延びる「維持期」に移行します。IL-23阻害薬のグセルクマブやリサンキズマブは8〜12週間ごとの投与で、年間の通院回数は4〜6回程度です。

通院回数が減れば、高額療養費制度の「多数回該当」の適用タイミングにも影響するため、年間スケジュールを把握しておくと費用の見通しが立てやすくなります。

維持期の投与間隔と年間通院回数の目安

薬剤分類維持期の投与間隔年間通院回数の目安
TNF-α阻害薬2〜8週ごと7〜26回
IL-17阻害薬2〜4週ごと13〜26回
IL-23阻害薬8〜12週ごと4〜7回
IL-12/23阻害薬12週ごと4〜5回

通院回数が少ない薬剤を選ぶと交通費や時間的コストも節約できる

薬剤の費用だけでなく、長期治療では通院の交通費や仕事を休む際の収入減も無視できないコストです。投与間隔が長い薬剤を選ぶことで、こうした間接的な出費も抑えられます。

主治医と費用面も含めて薬剤選択を相談すると、総合的に負担の少ない治療計画が立てられるでしょう。

生物学的製剤を安心して続けるための皮膚科の選び方

生物学的製剤による治療は長期にわたるため、信頼できる皮膚科を選ぶことが治療の満足度を大きく左右します。施設の認定状況やサポート体制を事前に確認しておくと、安心して治療を続けられます。

生物学的製剤の使用承認施設かどうかを確認する

日本では、生物学的製剤を使用できる医療機関は日本皮膚科学会の承認を受けた施設に限られています。学会のウェブサイトで承認施設の一覧を確認できます。

通いやすい範囲にある施設を事前にリストアップしておくとよいでしょう。

治療費の相談や制度申請を手伝ってくれる病院は心強い

医療ソーシャルワーカーが常駐している病院では、高額療養費制度の申請方法や利用できる助成制度について具体的なアドバイスを受けられます。

患者さん自身で制度の手続きをすべて行うのは負担が大きいため、病院スタッフの支援を遠慮なく活用してください。

通院のしやすさとフォローアップ体制も長期治療では大切になる

生物学的製剤の治療は数年以上にわたることも珍しくありません。自宅や職場からの通いやすさは、治療を中断しないための大切な条件です。

定期的な血液検査や副作用モニタリングをしっかり行ってくれるかどうかも確認しておきましょう。

皮膚科選びで確認したいポイント

  • 日本皮膚科学会の生物学的製剤使用承認施設であること
  • 医療ソーシャルワーカーや相談窓口が設置されていること
  • 自宅や職場から無理なく通える距離にあること
  • 定期的な検査とフォローアップ体制が整っていること

乾癬の注射治療を始める前に費用シミュレーションをしておくと安心できる

治療費の見通しが立てば、経済的な不安を減らした状態で治療をスタートできます。所得区分と薬剤の組み合わせから月額の自己負担額を計算し、必要な制度の申請を済ませておきましょう。

所得区分と薬剤を当てはめれば月額の自己負担額を計算できる

費用シミュレーションは、ご自身の所得区分と処方予定の薬剤を確認するところから始まります。薬剤の1回あたりの薬価に月の投与回数をかけた金額が医療費の総額です。

高額療養費制度の上限額を当てはめれば、実際の月額がわかります。多数回該当の条件も併せて計算しておくと、年間の支出を正確に見積もれるでしょう。

費用シミュレーション例(年収約370〜770万円、69歳以下の場合)

項目金額の目安備考
月の医療費総額(10割)約30〜50万円薬剤により異なる
3割負担の場合約9〜15万円高額療養費なしの場合
高額療養費適用後約8万円+α上限額以内に収まる
多数回該当適用後約4万4,400円4回目以降の上限額

治療費の不安は主治医やソーシャルワーカーに相談しよう

費用に関する悩みは、遠慮せず主治医や病院のソーシャルワーカーに伝えてください。費用面の事情を共有すれば、コストも考慮した薬剤選択や制度の案内をしてもらえます。

費用面で治療を諦めなくてよい時代になっている

生物学的製剤の薬価は確かに高額ですが、高額療養費制度・付加給付制度・医療費控除など、日本にはさまざまな負担軽減の仕組みがあります。制度を正しく活用すれば、月々の実質負担を数万円以内に抑えることも十分に可能です。

乾癬は適切な治療で症状をコントロールできる疾患です。費用の不安だけで治療を先延ばしにせず、まずは皮膚科専門医に相談してみてください。

よくある質問

乾癬に使う生物学的製剤の注射は1回いくらくらいかかりますか?

生物学的製剤の薬価は薬剤ごとに異なり、1回あたり約2万円から50万円程度まで幅があります。アダリムマブのバイオシミラーは1回約2〜3万円、IL-23阻害薬は1回約40〜50万円が目安です。

実際に窓口で支払うのは3割負担の金額であり、さらに高額療養費制度を利用すれば月額の上限内に収まります。

乾癬の生物学的製剤に高額療養費制度を使うと月々の負担はどのくらいになりますか?

高額療養費制度を使った場合の月額自己負担額は、所得区分によって決まります。69歳以下で年収約370〜770万円の方であれば、月額約8万円程度が上限です。

さらに、直近12か月で3回以上この上限に達すると「多数回該当」が適用され、月額約4万4,400円まで下がります。住民税非課税世帯の方はより低い上限額が設定されていますので、ご自身の所得区分を確認されることをお勧めします。

乾癬治療で使う生物学的製剤にバイオシミラーはありますか?

はい、日本ではアダリムマブとインフリキシマブにバイオシミラー(バイオ後続品)が発売されています。バイオシミラーは先行品と同等の品質・有効性・安全性が確認された薬剤で、薬価は先行品よりも低く設定されています。

バイオシミラーへの切り替えが可能かどうかは、治療の経過や患者さんの状態によって異なります。費用負担を軽減したい場合は、主治医にバイオシミラーの選択肢について相談してみてください。

乾癬の生物学的製剤はどのくらいの頻度で注射を受ける必要がありますか?

投与頻度は薬剤の種類と治療段階によって異なります。導入期には2〜4週間ごとの通院が必要です。

維持期に入るとIL-23阻害薬では8〜12週ごとの投与になり、年間の通院回数は4〜7回程度まで減ります。通院頻度と生活スタイルのバランスも考慮して薬剤を選びましょう。

乾癬の生物学的製剤の治療費を少しでも抑える方法はありますか?

まず高額療養費制度を活用しましょう。「限度額適用認定証」を事前に取得するか、マイナ保険証対応の医療機関を受診すれば、窓口での支払いを上限額に抑えられます。

勤務先の健康保険組合に付加給付制度がないか確認し、確定申告で医療費控除を申請することも有効です。複数の制度の組み合わせが負担軽減の鍵になります。

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この記事を書いた人

野田真史のアバター 野田真史 池袋駅前のだ皮膚科 院長

医学博士 / 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

東京大学医学部卒業、同大学院医学博士課程修了。米国ロックフェラー大学への臨床研究留学、ニューヨーク州医師免許取得を経て、東京大学医学部附属病院助教を務める。2018年、池袋駅前のだ皮膚科を開院。

ニキビやシミといった身近な悩みから難治性の皮膚疾患まで、常に知識を研鑽し、適切な診断・治療を行うことを信条としている。

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