産後の抜け毛は、出産から2〜3か月ほどたって増え始めることがあります。日本の産後女性を対象にした質問票調査では、始まりは平均2.9か月、いちばん多い時期は5.1か月、終わりは8.1か月でした1)。
出産から時間が空いて抜ける背景には、髪が伸びてから抜けるまでの周期があります。排水口やブラシに残る髪が急に増えると不安になりますが、この時期の抜け毛は髪の周期が一時的にそろったことで起こるもので、やがて新しい毛に生え替わっていきます。
出産から1年たっても落ち着かないときや、分け目の地肌が目立ってくるときは、皮膚科で原因を確かめる目安です。
産後の抜け毛はいつから始まる?
出産直後よりも、2〜3か月ほどたってから抜け毛が増える経過が知られています。育児に少し慣れたころに急に増えて驚く人もいますが、時期としては産後の抜け毛に当てはまります。
産後2〜4か月ごろに抜け始める人が多い
産後2〜4か月に洗髪やブラッシングで抜け毛が増えた場合、出産をきっかけに髪の周期が変わった経過に合います。出産当日から抜け続けるイメージとは違い、頭皮の中の変化が抜け毛として見えるまでに時間がかかるためです。
ただ、産後の月数が合っていても、抜け方は確かめておきたいところです。頭全体で増えているなら産後の抜け毛の経過に合いますが、一部分だけが丸く抜けているなら、早めに皮膚科で相談するのが安心です。
抜け始める時期は人によって前後する
産後の抜け毛が始まる時期、いちばん多くなる時期、終わる時期には個人差があるため、次の平均時期は目安として見てください。
| 経過 | 出産からの平均時期 | 受け止め方 |
|---|---|---|
| 抜け始め | 2.9か月 | 産後しばらくして増え始める目安 |
| いちばん多い時期 | 5.1か月 | 抜け始めからさらに時間がたったころ |
| 抜け毛の終わり | 8.1か月 | 髪の見た目が戻る日とは区別する |
平均は、早い人と遅い人を含めた数字です。そのため、産後3か月より早く気づいた場合や、4か月ごろから気になり始めた場合も、始まった月だけでなくその後の変化と合わせて判断します。自分の経過は、いつ気づいたかと、その後に増えたか減ったかで見ていきます。
周りの人と抜け方が違うのはよくあること
同じ月に出産した人同士でも、抜け始めに気づく時期や困り方には幅があります。周囲との比較だけで状態を判断しにくいのは、髪の長さや普段のまとめ方によって、落ちた髪の見え方も変わるためです。
産後の抜け毛の起こり方には、個人差があります。抜ける量を周囲と比べるより、自分の経過を見るほうが確かです。
出産から数か月遅れて抜けるのはなぜ?
今抜けた髪には、数か月前に起きた周期の変化が関わっていることがあります。髪は伸びる時期と休む時期を経て抜けるため、出産に伴う変化と目に見える抜け毛の間に時間差が生じます。
髪は成長期・退行期・休止期を繰り返す
髪の周期とは、1本の毛が育ち、成長を終え、抜けて次の毛へ交代する流れです。普段はそれぞれの毛の時期がずれ、頭全体では成長する毛と抜ける毛が混在しています。
| 髪の時期 | 起きていること |
|---|---|
| 成長期 | 髪がつくられ、長く伸びる |
| 退行期 | 成長が終わり、休む時期へ移る |
| 休止期 | 成長を休み、やがて抜けて次の毛と交代 |
休止期の毛が増え、頭全体の抜け毛が多くなる状態は「休止期脱毛」と呼ばれます。「休止」は周期の中の一時期を指す言葉で、髪を育てる力がなくなったという意味とは別です。抜ける毛が増えても、次の毛はまた育ってきます。
妊娠中に抜けなかった毛が、出産後にまとめて抜ける
妊娠中はホルモンの変化に伴い、成長期にとどまる毛が増えると考えられています。普段なら次の時期へ進む毛が成長を続けるので、妊娠中は髪が抜けにくく、量が保たれやすい状態です。
出産後は、このような毛がまとまって休止期へ移り、その後の抜け毛が重なると考えられます。妊娠中と産後を比較した研究でも、産後4か月には成長期の毛の割合が低く、休止期の割合が高い変化が報告されました。多くの女性では、その変化は極端なものではなかったとされています。
髪の周期で説明できるのは全体の流れまでで、一人ひとりの抜け毛の原因を確かめるには、ほかの病気も含めた診察が必要です。
抜けるまでに2〜3か月かかる理由
成長を終えた毛は、すぐに抜け落ちるわけではなく、休止期を経てから抜けます。そのため、出産をきっかけに起きた周期の変化が抜け毛として目立つのは、2〜3か月ほどたってからです。
産後すぐは変化が少なくても、数か月後に増えることには時間差による説明がつきます。今週の睡眠不足や昨日の洗髪だけを原因として考えると、この時間差を見落としやすくなります。抜け毛が増えた日の生活だけでなく、出産からの数か月を振り返ってみてください。
出産以外にも、発熱や手術、急な食事制限や強いストレスのあとに、同様の周期の変化による抜け毛が起こることがあります。そうした出来事が重なった場合は、出産した時期と一緒に診察時に伝えると、経過を整理しやすくなります。
産後の抜け毛のピークと落ち着くまでの時間
ピークは平均で産後5.1か月、終わりは8.1か月という調査結果があります1)。ただし、増える時期を経て落ち着くまでの経過には個人差があり、抜け始めてすぐに減るかどうかだけで経過を決めるのは難しいところです。
抜け始めてから、さらに量が増えることもある
産後3か月ごろに抜け始め、4〜5か月ごろにさらに気になる経過は、調査で示された平均的な流れに合います。「始まったから、あとは減るだけ」と予想していると、途中の増加が長期化のサインに見えやすくなります。
ただし、ピークの月は、あとから経過を振り返ることで分かります。1回の洗髪で多く抜けた日が、そのままピークとは限らないのが難しいところです。数週間の流れとして増えているのか、同じ程度なのか、減ってきたのかを見ると変化を捉えやすくなります。
抜け毛の量と地肌の見え方は別々に記録すると、受診時にも伝えやすくなります。
抜け毛が減っても、ボリュームが戻るのはもう少し先
抜け毛が落ち着くことは、毛先まで以前と同じボリュームに戻ることとは別です。新しく伸びる毛は短い状態から育つため、長い毛と同じ厚みをつくるまでには時間がかかります。
| 気づきやすい変化 | 見ているもの | 確かめたい経過 |
|---|---|---|
| 排水口に残る髪が減る | 抜ける量 | 同じ洗髪間隔での増減 |
| 生え際に短い毛が見える | 伸び始めの毛 | 時間とともに長くなるか |
| 結んだ束がまだ細く感じる | 長さのそろった毛の量 | 抜け毛の減少と分けて見る |
そのため、調査の「終わり」の平均8.1か月は、抜け毛が落ち着く時期の目安で、髪型まで元どおりになる時期とは違います1)。抜ける量が減ることと、短い毛が伸びて髪型になじむことは、別々の変化です。鏡に映る髪の量がまだ少なく見えても、抜け毛が減っていれば回復に向かっています。
1年たっても落ち着かなければ皮膚科へ
出産から1年たっても抜け毛が落ち着かない場合は、産後の変化以外が重なっていないかを確認するため、受診を勧めます。全員が1年以内に元どおりになるという保証ではなく、経過を見直すための目安です。
一方、分け目が広がり続ける場合や体調の変化を伴う場合は、1年を待たずに相談できます。抜け毛のことが頭から離れず、洗髪や外出がつらいときも、相談してよい状態です。
生え際や分け目が気になるときに見たい変化
鏡で生え際が透けて見える場合も、抜け毛は頭全体で増えていることがあります。休止期脱毛は頭全体で起こりますが、地肌が見えやすい生え際や分け目で先に気づくことがよくあります。
地肌の見え方の変化を確かめる
抜け毛の見た目は、髪の長さや洗髪の間隔でも変わります。長い髪は少ない本数でもまとまると大きく見え、洗髪までの間隔が空くと、抜けた毛が洗うときにまとめて目に入りやすくなるためです。
休止期脱毛には、本数だけで状態を判断しにくい面があります。毎日の髪を集めて数えるよりも、いつから増え、地肌の見え方がどう変わったかを伝えられるほうが診察に役立つ場合があります。家で確かめるなら、負担の少ない方法で十分です。
- 抜け毛が増えた時期と、出産から何か月か
- 照明・分け目・髪の乾き具合をそろえた写真
- 頭全体の変化か、限られた場所の変化か
分け目の見え方は光や髪の状態でも変わる
同じ頭皮でも、強い照明の下や髪がぬれた状態では、分け目が広く見えることがあります。写真を比べる際には、撮った条件が違うだけで薄毛が進んだように見える点にも注意が要ります。
条件をそろえても地肌の見える範囲が広がっているときは、抜け毛の量とあわせて相談してください。生え際が気になる場合も、診察では鏡で見える前側だけでなく、頭全体を確かめます。
立ち上がる短い毛は、伸び始めの毛のことがある
生え際や頭の上に短い毛が立って見えるのは、新しく伸び始めた毛が周囲の長い毛となじんでいないために起こることがあります。髪型を整える際に短い毛が気になりやすいのは、まとまりにくいためです。
短い毛が時間とともに伸びていれば、回復が進んでいる目安です。ただ、途中で切れた毛が混じることもあるので、短い毛だけで回復の程度を決めるのは難しいところです。抜ける量や分け目の状態もあわせて見てください。
抜け毛が多い時期は、髪と体への負担を減らす
日常のケアは、食事と休息を保ち、髪を強くこすったり引っ張ったりする負担を減らすことが中心です。抜け毛そのものを止める方法ではないものの、体調と髪を守りながらこの時期を過ごすための工夫です。
食事と休息は、できる範囲から整える
産後はまとまった時間を確保しづらく、食事を抜いたり、体形を戻そうと量を急に減らしたりしやすい時期です。食事は主食に加え、肉や魚、卵や大豆製品などのおかずと、野菜類を組み合わせると偏りを減らせます。
毎回の調理が負担なら、用意しやすい食品を使う方法も選べます。髪のために食卓を完璧に整えることより、食べる機会を保つことが日々の体調を支えます。ただし、食事を変えるとすぐに抜け毛が止まるという関係が確かめられているわけではありません。
忙しい朝は、ご飯に納豆と卵を添えたり、豆腐と冷凍野菜を汁物に加えたりすると、手間を抑えてたんぱく質をとれます。鉄を含む食品は、赤身の肉やあさりの水煮缶などを使い、野菜と一緒に炒める、スープに加えるといった食べ方ができます。肉のおかずを小分けにして冷凍しておくのも、食事のたびに一から調理しないための手です。
休息についても、家族などに育児や家事を分担してもらい、横になれる時間を確保する方法があります。夜間の授乳で睡眠が細切れになる時期に、十分に眠れない自分を抜け毛の原因として責める必要はありません。
洗うと抜け毛が増えたように見える理由
洗髪の際には、抜ける時期を迎えた毛がまとまって目に入ることがあります。そのため、洗った日に多く見えたという理由だけで、洗髪が産後の抜け毛を生んだとは判断できません。
- 爪を立てず、指の腹で頭皮を洗う
- からまった髪は、毛先側から少しずつほどく
- 髪の水分は、タオルで挟んで吸わせる
洗うのが怖くなったときは、その不安も診察で相談できます。洗い方の工夫は頭皮への刺激を減らすためのもので、周期で起こる抜け毛は洗い方と関係なく続きます。抜け毛が続くのは、洗い方のせいとは別の理由です。
きつく結ばず、分け目を変えて見た目を整える
髪をまとめる際は、生え際が強く引かれる結び方を避け、少しゆとりを持たせると負担を減らせます。授乳や抱っこで髪が邪魔になるときも、痛みや引きつれが出ないくらいのゆるいまとめ方で十分です。
分け目が気になる場合は、位置を少しずらすと地肌の見え方が変わります。美容室で髪の長さや前髪の作り方を相談すると、毎朝まとめやすくなります。こうした工夫は、伸び始めの毛がなじむまでの間、見た目の悩みを軽くするための手段です。
産後の抜け毛が長引くときの受診の目安
1年たっても落ち着かない場合や、地肌が目立つ範囲が広がる場合は、皮膚科での相談が勧められます。円形に抜ける、強いだるさや動悸があるなど、抜け方や体調が普段と違う場合は、産後の月数にかかわらず早めに受診してください。
円形に抜ける・体調が悪いときは早めに受診
頭全体で増える抜け毛と、一部が円形に抜ける状態は、原因が違います。産後に起きたからといって同じ原因とは限らず、どこが抜けているかは、受診を急ぐかどうかの手がかりです。
| 気になる変化 | 相談する目安 |
|---|---|
| 出産から1年たっても落ち着かない | 経過を見直すため皮膚科へ相談 |
| 分け目や頭全体の地肌が目立ってくる | 薄毛が進んでいないか早めに確認 |
| 円形など限られた場所が抜ける | 産後の変化と決めず皮膚科へ |
| 強いだるさ・動悸・体重の変化を伴う | 内科や産婦人科にも体調を相談 |
だるさや動悸は育児疲れと思い込みやすいので、「産後だから」と片づけずに伝えるのが確実です。受診時には、抜け毛の始まりと体調が変わった時期を合わせて伝えてください。時期の前後関係が分かると、髪以外の状態も含めた確認がしやすくなります。
長引く背景には、ほかの病気や薄毛が重なることも
抜け毛が増えたあとに、もともとあった女性の薄毛が表に出て目立つことがあります。分け目などの薄毛が続くときの特徴と治療は、女性の薄毛(FAGA)のページで紹介しています。
鉄不足も体調に応じて確認する背景の1つですが、鉄不足と抜け毛の関係は研究によって結論が一致していません。
また、産後1年以内には、甲状腺という体の働きを調節するホルモンをつくる器官に炎症が起こることがあり、ほかの甲状腺の病気と区別して対応が決まります。抜け毛だけで甲状腺の病気とは決められないため、だるさや動悸があれば一緒に伝えてもらうと確かめやすくなります。
受診時は抜け始めた時期と授乳の状況を伝えて
当院では、抜け毛の状態と始まってからの経過をうかがい、必要に応じて血液検査でほかの原因がないかを確認します。出産時期や授乳の状況に加え、抜ける量が増えているか、減っているかも教えてください。
- 出産日と抜け毛に気づいた時期、その後の量の増減
- 現在授乳中かどうかと、授乳を続ける今後の予定
- 飲んでいる薬やサプリの種類と、飲み始めた時期
- 出産前にも抜け毛や薄毛があったか、気になっていた場所
- だるさや動悸などの体調の変化と、それに気づいた時期
長引く場合や薄毛が進む場合は、当院から髪の成長を助ける内服・外用の治療も提案します。授乳中は使える薬に配慮が要るため、授乳の状況と診察の結果に合わせて一緒に決めます。当院での対応は、産後・ストレスによる抜け毛の診療ページで紹介しています。
抜け毛のつらさと、抜けた量は別物です。鏡を見るたびにつらい、洗髪が怖いといった気持ちも、診察で話してもらって大丈夫です。
よくある質問
- 産後の抜け毛は、出産直後から始まりますか?
-
出産から2〜3か月ほどたって抜け毛が増えることがあります。髪が成長を終えてから抜けるまでに時間があるためです。出産直後から急に多く抜ける場合や、限られた場所だけが抜ける場合は、その時期と抜け方を皮膚科で相談してください。
- 産後の抜け毛は、産後5か月ごろに増えても大丈夫ですか?
-
産後5か月ごろに抜け毛が増えても、産後の変化の途中である可能性があります。ただし、時期だけでほかの原因の有無は判断できません。地肌が目立つ範囲が広がる場合や、強いだるさなどがある場合は、時期にかかわらず受診の目安です。
- 産後の抜け毛は、授乳をやめると減りますか?
-
授乳をやめると抜け毛が減る、という因果関係は確かめられていません。抜け毛への不安だけで授乳の予定を変えるより、母子の状況に合わせて産婦人科などへ相談することが勧められます。
- 産後の抜け毛は、短い毛が生えたら落ち着いたと判断できますか?
-
短い毛は伸び始めの毛のことがありますが、それだけで抜け毛が落ち着いたとは決まりません。抜ける量が減っているか、短い毛が伸びているか、地肌の見え方がどう変わったかを合わせて見ていきます。
新しい毛が長くなるまでには時間がかかるため、抜け毛が減ったあとも髪型の印象はゆっくり変わります。
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