蕁麻疹のつらいかゆみと赤い膨疹を抑える薬の中心は、ヒスタミンの働きをおさえる抗ヒスタミン薬です。市販薬でも処方薬でも、この抗ヒスタミン薬が治療の土台になります。
両者の大きな違いは、使える成分の種類と量、そして眠気の出やすさにあります。市販薬は薬局で手軽に買えますが、症状が強いときや長引くときは、処方薬のほうが選べる薬の幅が広がります。
この記事では、市販薬と処方薬の違いを成分と用量から整理し、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬の選び方や受診の目安まで、薬選びに迷ったときの判断材料をまとめました。
蕁麻疹のかゆみと膨疹はヒスタミンの放出で起こります
蕁麻疹は、皮膚の中にある肥満細胞からヒスタミンが放たれることで、かゆみと赤い膨疹が現れる病気です。薬で症状をおさえる目的は、このヒスタミンの働きをブロックすることにあります。
肥満細胞から放出されるヒスタミンの働き
皮膚や粘膜には、肥満細胞と呼ばれる細胞が数多く待ち構えています。何らかの刺激を受けると、この細胞からヒスタミンという物質が一気に放たれます。
ヒスタミンは血管をひろげ、血液中の水分を皮膚へしみ出させます。その結果、皮膚の一部がぷくっと盛り上がり、強いかゆみをともなう膨疹ができあがるのです。
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが結びつく受け皿をふさいで、その働きをやわらげる薬です。原因そのものを断つわけではないため、症状が続くあいだは飲み続ける形になります。
赤くふくらむ膨疹とかゆみが出るまで
膨疹は、数十分から数時間でいったん消え、また別の場所に現れるのが特徴です。一つひとつの膨疹は、1日以内に跡を残さず引いていくことがほとんどでしょう。
かゆみは夜に強まりやすく、眠りをさまたげることも少なくありません。かいてしまうと刺激でさらにヒスタミンが出て、症状が広がる悪循環におちいります。
蕁麻疹を引き起こすきっかけは一つとは限らず、はっきりした原因が見つからないことも多いです。日常で関わりやすいきっかけには、次のようなものがあります。
- えびやかになどの食べ物、特定の食品添加物
- かぜ薬や解熱鎮痛薬など一部の薬
- 汗をかく運動や入浴による刺激
- 急な寒暖差や冷たい空気
- 疲労やストレス、睡眠不足
- 衣服やベルトによる圧迫や摩擦
こうしたきっかけを記録しておくと、診察のときに原因をしぼり込む手がかりになります。ただし思い当たる原因がなくても、蕁麻疹はめずらしくないので心配しすぎないでください。
同じきっかけでも、毎回かならず蕁麻疹が出るとは限らないのもこの病気の特徴です。体調が落ちているときほど症状が出やすく、休養をとることも遠回りのようで近道になります。
急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹はどう違う?
症状が出てから6週間以内におさまるものを急性蕁麻疹、6週間を超えて続くものを慢性蕁麻疹と呼びます。多くは急性で、数日から数週間のうちに自然と落ち着いていきます。
慢性蕁麻疹になると、毎日のように膨疹が出たり消えたりをくり返します。原因が特定できないことも多く、薬で症状をコントロールしながらつき合っていく形になるでしょう。
急性か慢性かで、薬とのつき合い方も変わってきます。急性なら短い期間でやめられることが多い一方、慢性では長めに飲んで症状をおさえる計画を立てます。
蕁麻疹の薬の中心は抗ヒスタミン薬です
蕁麻疹の薬と聞くとステロイドを思い浮かべる方は多いのですが、治療の中心になるのは抗ヒスタミン薬です。放たれたヒスタミンが受け皿にくっつくのをさまたげ、かゆみと膨疹をおさえる飲み薬になります。
抗ヒスタミン薬は大きく第1世代と第2世代に分かれ、眠気の出やすさや効き方に差があります。まずは両者の違いを大まかに見ておきましょう。
| 比べる点 | 第1世代 | 第2世代 |
|---|---|---|
| 眠気 | 出やすい | 出にくい |
| 効き始め | 比較的はやい | おだやかで持続的 |
| 主な使われ方 | かぜ薬などに配合 | 蕁麻疹治療の主役 |
いまの蕁麻疹治療では、眠気などの負担が少ない第2世代を第一に選びます。第1世代も効果がないわけではありませんが、日中の眠気や集中力の低下が課題になりやすいのです。
第1世代と第2世代の抗ヒスタミン薬の違い
いまの蕁麻疹治療では、眠気などの負担が少ない第2世代を第一に選びます。第1世代も効果がないわけではありませんが、日中の眠気や集中力の低下が課題になりやすいです。
第1世代は古くからある薬で、脳に入りやすい性質をもっています。そのため眠気やだるさ、口の渇きといった負担が出やすく、車の運転前などには向きません。
第2世代は脳に入りにくいよう改良され、眠気がぐっと軽くなりました。蕁麻疹のように長く飲み続けることのある病気では、この飲みやすさが大きな利点です。
国内外の診療指針も、まず第2世代から始める方針をすすめています。眠気などの負担が軽く、毎日の暮らしを保ちながら治療を続けやすいからです。
眠気が出やすい薬と出にくい薬
第2世代のなかでも、眠気の出やすさには薬による差と個人差があります。フェキソフェナジンやロラタジンは眠気が少なく、運転に関する注意書きがない種類です。
一方でセチリジンやオロパタジンは効き目がしっかりしている分、人によって軽い眠気を感じることがあります。生活スタイルに合わせて選べば、無理なく続けられるでしょう。
眠気の感じ方には、体質や体調、その日の睡眠の状態も関わります。同じ薬でも日によって違うことがあるため、しばらく使って自分に合うか確かめると安心です。
| 比べる点 | 第1世代 | 第2世代 |
|---|---|---|
| 眠気 | 出やすい | 出にくい |
| 効き始め | 比較的はやい | おだやかで持続的 |
| 主な使われ方 | かぜ薬などに配合 | 蕁麻疹治療の主役 |
飲んでから効果が出るまでの時間
抗ヒスタミン薬は、飲んでから1時間前後で効き始めることが多い薬です。とはいえ蕁麻疹を根本から治すというより、症状が出ないよう毎日おさえ込む使い方が基本になります。
症状が軽くなったからと自己判断で急にやめると、ぶり返すことがあります。やめどきは自分で決めず、医師と相談しながら少しずつ減らしていくのが安心です。
毎日決まった時間に飲むと、血液中の薬の量が安定し、症状の波もおさえやすくなります。飲み忘れが続くと効き目が途切れやすいので、生活の区切りと結びつけて習慣にすると続けやすいでしょう。
市販薬と処方薬の違いは成分と用量にあります
同じ抗ヒスタミン薬でも、市販薬と処方薬では使える成分の種類と量、そして価格が変わってきます。軽い症状なら市販薬で十分なこともありますが、強い症状には処方薬が向いています。
市販薬で買える抗ヒスタミン成分
近年は、もともと処方薬だった成分の一部が市販薬としても買えるようになりました。薬局やドラッグストアで手に入る主な第2世代の成分には、次のものがあります。
- フェキソフェナジン(眠気が少ない)
- ロラタジン(1日1回タイプ)
- セチリジン・レボセチリジン
- エピナスチン
- エバスチン
これらは処方薬と同じ成分を含むものもあり、確かな効果が期待できます。商品によって配合量や飲む回数が違うので、購入時に薬剤師へ相談すると選びやすいでしょう。
処方薬でしか使えない薬と高用量
市販されていない第2世代の成分や、症状が強いときに使う薬は処方でしか手に入りません。蕁麻疹が抑えきれないときに通常の倍量以上へ増やす調整も、医師の管理のもとで行います。
さらに、抗ヒスタミン薬だけでは足りないときに加える薬や注射の治療も処方が前提です。市販薬で改善しない症状ほど、処方薬の出番が大きくなると考えてよいでしょう。
市販薬は用量があらかじめ決まっており、自分の判断で量を増やすことはできません。処方薬なら、医師が効き目と眠気のバランスを見ながら、一人ひとりに合う量へ調整していきます。
市販薬と処方薬の価格と入手のしやすさ
市販薬は受診の手間がなく、思い立ったその日に買える手軽さが魅力です。一方で全額が自己負担になるため、長く飲み続ける場合は割高に感じることもあります。
処方薬は診察を受ける必要がありますが、医師が症状に合わせて種類や量を選んでくれます。長引く蕁麻疹では、結果として処方薬のほうが負担の軽く済むことも少なくありません。
市販薬と処方薬のおもな違い
| 比べる点 | 市販薬 | 処方薬 |
|---|---|---|
| 入手方法 | 薬局で購入 | 受診して処方 |
| 使える成分や量 | 限られる | 幅広く調整できる |
| 向く症状 | 軽い・一時的 | 強い・長引く |
軽い症状を一時的におさえたいなら市販薬、くり返す症状やつらいかゆみには処方薬という使い分けが目安になります。迷ったときは、一度受診して相談しておくと安心でしょう。
市販薬で間に合うか処方薬へ切り替えるかは、症状の重さに加えて続いた長さでも変わります。数日でおさまりそうなら市販薬、1週間2週間と長引くなら受診と、おおまかな線引きをもっておくと迷いません。
かゆみを抑える市販薬はどう選べばいい?
急なかゆみで市販薬を選ぶときは、眠気の少なさと飲む回数を手がかりにすると迷いません。日中に活動するなら眠くなりにくいタイプ、就寝前なら多少の眠気があっても問題ないでしょう。
眠くなりにくい市販薬を選ぶコツ
仕事や運転がある日中は、眠気の注意書きがないフェキソフェナジンやロラタジンが向いています。集中力を保ちながらかゆみをおさえたい方に選ばれてきた成分です。
逆に、夜のかゆみで眠れないときは、寝る前に飲んで眠気を味方にする選び方もあります。自分の1日の過ごし方に成分を合わせると、生活への負担をぐっと減らせるでしょう。
飲み薬と塗り薬はどう使い分ける?
蕁麻疹のかゆみそのものをおさえる主役は、あくまで飲み薬の抗ヒスタミン薬です。塗り薬は、かいてしまった部分のほてりやかゆみを一時的にやわらげる補助の役割にとどまります。
飲み薬と塗り薬の使い分け
| 種類 | 役割 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 飲み薬 | かゆみと膨疹を全体におさえる | 治療の中心 |
| 塗り薬 | 局所のかゆみを一時的に緩和 | 部分的な補助 |
広い範囲にくり返し出る蕁麻疹に、塗り薬だけで立ち向かうのは現実的ではありません。塗り薬はあくまで飲み薬の補いと考え、症状が広いときは飲み薬を中心に据えてください。
市販薬を使うときに気をつけたいこと
市販薬を数日使っても改善しないときは、漫然と続けず受診を考える時期です。ほかに飲んでいる薬がある方や妊娠中の方は、自己判断を避けて薬剤師に確かめましょう。
かぜ薬や鼻炎薬にも抗ヒスタミン成分が入っていることがあり、重ねて飲むと効きすぎる心配があります。複数の薬を使うときは、成分が重ならないか必ず確認してください。
市販薬の説明書には、飲む量や回数、使ってはいけない人の条件が書かれています。買ったときにひと通り目を通し、わからない点はその場で薬剤師に確かめておくと安心です。
処方薬による蕁麻疹治療は段階的に進みます
処方薬による治療は、段階を追って進めます。まず第2世代の抗ヒスタミン薬から始め、効きが足りなければ量を増やし、それでも抑えきれない場合に追加の薬や注射を検討する流れです。
蕁麻疹治療の進め方は、国内外の指針でおおよそ次のように整理できます。
| 段階 | 主な治療 | 考え方 |
|---|---|---|
| はじめ | 第2世代抗ヒスタミン薬 | 通常量で様子を見る |
| 次の段階 | 同じ薬を増量 | 最大4倍まで調整 |
| 抑えにくいとき | 注射薬などを追加 | 専門的な治療へ |
大切なのは、自己判断で量を変えず医師の指示のもとで進めることです。順を追って調整していけば、多くの方は無理なく症状をコントロールできるようになります。
蕁麻疹治療の進め方は次のように整理できます
| 段階 | 主な治療 | 考え方 |
|---|---|---|
| はじめ | 第2世代抗ヒスタミン薬 | 通常量で様子を見る |
| 次の段階 | 同じ薬を増量 | 最大4倍まで調整 |
| 抑えにくいとき | 注射薬などを追加 | 専門的な治療へ |
大切なのは、自己判断で量を変えず医師の指示のもとで進めることです。順を追って調整していけば、多くの方は無理なく症状をコントロールできるようになります。
効きが足りないときは抗ヒスタミン薬を増量します
通常量で症状が抑えきれないとき、同じ抗ヒスタミン薬を最大で4倍程度まで増やす方法があります。研究でも、増量によって約4分の3の方で症状が和らいだと報告があります。
増やしても眠気などの負担はそれほど変わらないことが多いとわかっています。ただし量の調整は必ず医師が判断するため、つらいときは遠慮なく今の状態を伝えてください。
抗ヒスタミン薬で抑えきれない蕁麻疹への追加治療
増量しても十分でない場合は、別の働きをもつ薬を組み合わせることがあります。短期間だけステロイドを使って、強い症状を切り抜けることもあるでしょう。
もっともステロイドの飲み薬を長く続けるのは負担が大きく、あくまで一時的な使い方が基本です。長引く蕁麻疹では、次に述べる注射薬が選ばれる場面も増えてきました。
追加の薬を使うかどうかは、症状の強さや続いた期間を見ながら医師が判断します。自分でステロイドの市販薬を足すような対処は避け、つらさは診察で正直に伝えてください。
重症の蕁麻疹に使う注射薬オマリズマブ
抗ヒスタミン薬を増量しても抑えきれない慢性蕁麻疹には、オマリズマブという注射薬が役立ちます。アレルギーに関わるIgEという物質に作用し、症状を大きく和らげる効果がわかっています。
4週間ごとの注射で、つらいかゆみが落ち着く方が多く報告されてきました。費用や通院の負担はありますが、ほかの薬で改善しなかった方には心強い選択肢です。
オマリズマブは、抗ヒスタミン薬を続けても効果が足りない方が対象になる薬で、使えるかどうかには条件があるので、専門の医師とよく相談したうえで決めていきます。
市販薬で治らない蕁麻疹は早めの受診が安心です
市販薬を数日試しても良くならない蕁麻疹は、受診の目安です。とくに呼吸が苦しい、唇やまぶたが腫れるといった症状があるときは、ためらわず医療機関を受診してください。
市販薬で改善しない蕁麻疹は受診の目安です
市販薬を2、3日続けても膨疹やかゆみが引かないときは、自己流の対処を切り上げる時期です。症状に合った成分や量へ調整するため、皮膚科やアレルギー科で相談しましょう。
原因がはっきりしない蕁麻疹でも、医師は問診と診察から治療方針を立てられます。市販薬で粘りすぎて悪化させるより、早めに専門家へつなぐほうが回復は近づきます。
息苦しさや唇の腫れはすぐ受診すべきサイン
蕁麻疹に加えて、息苦しさやのどのつまり、唇やまぶたの強い腫れが出たときは要注意です。これらはアナフィラキシーという全身の強いアレルギー反応の入り口かもしれません。
意識がもうろうとする、声がかすれるといった症状があれば、ためらわず救急を受診してください。命に関わることもあるため、様子見をせず早い行動が身を守ります。
6週間以上続く慢性蕁麻疹の相談先
膨疹が6週間を超えて出たり消えたりをくり返すときは、慢性蕁麻疹として治療を続ける必要があります。皮膚科やアレルギー科が、こうした長引く症状の相談先になります。
慢性蕁麻疹は、薬で症状をおさえながらつき合ううちに、自然と治まっていくことも多い病気です。あせらず治療を続けられるよう、信頼できる医師を見つけておくと安心でしょう。
受診のときは、いつから出ているか、どんなときに悪くなるかをメモしておくと役立ちます。飲んでいる薬やこれまで試した市販薬を伝えると、医師が治療方針を立てやすくなります。
よくある質問
- 蕁麻疹の薬は市販薬と処方薬のどちらを選べばよいですか?
-
軽い症状や一時的なかゆみであれば、薬局で買える市販の抗ヒスタミン薬で様子を見てかまいません。眠気の少ない成分を選べば、日中も負担なく過ごせるでしょう。
ただし症状が強い、何度もくり返す、数日使っても改善しないといった場合は処方薬が向いています。医師が成分や量を調整できるため、抑えにくい蕁麻疹ほど受診が近道になります。
- 蕁麻疹の市販薬を飲むと眠くなりますか?
-
市販の第2世代抗ヒスタミン薬には、眠気が出にくい成分が多くそろっています。フェキソフェナジンやロラタジンは運転に関する注意書きがなく、日中でも使いやすい種類です。
一方で、人によっては軽い眠気を感じる成分もあります。日中の活動に支障が出るようなら、眠気のより少ない成分へ切り替えるか、薬剤師に相談してみてください。
- 抗ヒスタミン薬はどのくらいで効果が出ますか?
-
抗ヒスタミン薬は、飲んでからおよそ1時間前後で効き始めることが多い薬です。ただし蕁麻疹を一度で治すのではなく、症状が出ないよう毎日おさえ込む使い方が基本になります。
症状が落ち着いても、自己判断で急にやめるとぶり返すことがあります。やめる時期は医師と相談しながら、少しずつ減らしていくと安定しやすいでしょう。
- 蕁麻疹の薬は市販薬を長く飲み続けても大丈夫ですか?
-
市販の第2世代抗ヒスタミン薬は、比較的安全性が高い薬とされています。ただし数日続けても改善しない場合は、漫然と飲み続けず受診を考える時期です。
ほかに薬を飲んでいる方や妊娠中の方は、自己判断を避けて薬剤師や医師に確かめてください。かぜ薬などと成分が重なると効きすぎることもあるため、飲み合わせの確認も大切です。
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