【乾癬を治す食べ物は本当にある?】症状を悪化させない食事と皮膚科治療の重要性

「乾癬を治す食べ物があるなら試したい」と願う気持ちは、とても自然なことです。しかし残念ながら、特定の食品だけで乾癬を完治させられるという医学的な根拠は、現時点では見つかっていません。

一方で、日々の食事内容が乾癬の症状に影響を与えうることは、複数の研究で示されています。炎症を悪化させやすい食品を減らし、抗炎症作用のある栄養素を積極的に取り入れることで、症状の安定に寄与する場合があるのです。

この記事では、乾癬と食事の関係を医学的な視点からわかりやすく解説し、皮膚科での治療と食事をどう組み合わせていくべきかをお伝えします。

目次

「乾癬を治す食べ物」は存在しない

結論から申し上げると、乾癬を食べ物だけで治すことはできません。乾癬は免疫システムの異常が深く関わる慢性疾患であり、特定の食品を食べるだけで炎症が消えるほど単純な病気ではないのです。

そもそも乾癬は免疫の異常から起こる全身性の炎症疾患である

乾癬(かんせん)とは、免疫細胞が誤って自分の皮膚を攻撃してしまう慢性の炎症性皮膚疾患です。皮膚のターンオーバーが異常に速まり、赤みや銀白色の鱗屑(りんせつ)が生じます。

遺伝的素因にストレスや感染症など複数の要因が絡み合って発症するため、食べ物ひとつで根本から解決できるものではありません。

「この食べ物で乾癬が治る」と証明された研究はない

インターネット上には「○○を食べれば乾癬が治る」といった情報が散見されます。けれども、そうした主張を裏づける質の高い臨床研究は報告されていません。

乾癬に関する食事研究の現状

研究の種類わかっていること注意点
地中海式食事法重症度との逆相関が報告されている因果関係は未確定
オメガ3脂肪酸炎症マーカーの改善傾向あり単独での効果は限定的
低カロリー食(減量)肥満合併例でPASI改善適正体重の方には不要
グルテンフリー抗グリアジン抗体陽性例で改善報告全員に有効ではない

食事はあくまで「補助」であり「治療の代わり」にはならない

食事の改善は、皮膚科で受ける治療を後押しする「サポート役」として捉えるのが妥当でしょう。食事に過度な期待を寄せるあまり、必要な治療を後回しにしてしまうと、症状がさらに悪化するおそれがあります。

まずは皮膚科を受診し、医師と相談しながら食事面の工夫を取り入れていくことが大切です。

乾癬の症状を悪化させやすい食べ物には共通点がある

乾癬を悪化させる食品には、「体内の炎症を促進する」という共通した性質があります。食事から炎症の火種を減らすことが、症状コントロールの第一歩です。

アルコールは乾癬の炎症を直接強める

アルコールは肝臓に負担をかけるだけでなく、免疫細胞のバランスを乱して全身の炎症を促進します。飲酒量が多い人ほど乾癬の重症度が高い傾向にあることは、複数の疫学調査で報告されています。

飽和脂肪酸を多く含む赤身肉や加工食品は炎症を加速させる

バター、赤身肉、加工食品に豊富な飽和脂肪酸は、体内で炎症性サイトカインの産生を促すことが示されています。乾癬患者は健康な人と比べて脂肪の多い食事を好む傾向があり、摂取量を見直す価値があるでしょう。

砂糖や精製炭水化物の過剰摂取も乾癬の悪化につながる

白砂糖や精製された小麦粉を多く含む食品は、血糖値を急激に上昇させます。血糖値の乱高下は、体内の炎症反応を活性化させ、乾癬の症状を不安定にする要因になりえます。

菓子パンや清涼飲料水、スナック菓子などを日常的に多く摂っている方は、少しずつ量を減らしていくことをおすすめします。

グルテンが乾癬に影響するケースもある

すべての乾癬患者にグルテンフリー食が有効なわけではありません。ただし、血液検査で抗グリアジン抗体(IgAまたはIgG)が陽性と判定された方に限っては、グルテンを除去した食事で症状が改善したとの報告があります。

自己判断でグルテンフリーを始めるのではなく、まず血液検査を受けて医師に相談するのが賢明です。

乾癬を悪化させやすい食品の例

カテゴリー代表的な食品避けたい理由
アルコールビール、ワイン、蒸留酒免疫バランスの乱れ
高脂肪食品バター、ラード、霜降り肉飽和脂肪酸が炎症を促進
高糖質食品菓子パン、清涼飲料水血糖値の急上昇
加工食品ソーセージ、冷凍ピザ添加物と脂肪が複合的に作用

乾癬の炎症を抑えたいなら地中海式食事法に注目したい

数ある食事パターンのなかで、乾癬に対してもっとも多くの研究報告があるのが地中海式食事法です。野菜、果物、魚、オリーブオイルを中心としたこの食事法は、全身の炎症を穏やかにする働きが期待されています。

地中海式食事法は野菜・魚・オリーブオイルを中心にした食生活

地中海式食事法とは、南イタリアやギリシャなど地中海沿岸地域の伝統的な食文化に基づいた食事パターンです。オリーブオイル、新鮮な野菜と果物、豆類、全粒穀物、ナッツ、魚介類を中心に構成されています。

赤身肉や加工食品の摂取は少なく、アルコールも控えめです。心血管疾患の予防としても広く推奨されてきました。

地中海式食事法を守っている人ほど乾癬の重症度が低い

フランスで約3万5000人を対象に実施された大規模コホート研究では、地中海式食事法の遵守度が高い人ほど、重度の乾癬を有する割合が低いことが報告されました。

地中海式食事法で積極的に摂りたい食材

食材グループ代表例期待される作用
魚介類サバ、イワシ、サケオメガ3脂肪酸で炎症を抑制
野菜・果物トマト、ブロッコリー、ベリー類抗酸化物質が豊富
良質な油脂オリーブオイル、ナッツ抗炎症作用のある不飽和脂肪酸
全粒穀物玄米、全粒粉パン食物繊維で腸内環境を整える

日本の食卓でも地中海式は実践できる

魚介類を頻繁に食べ、野菜や大豆製品が豊富な和食は、もともと地中海式に近い特徴を持っています。揚げ物を焼き魚に替える、サラダにオリーブオイルをかける、白米を雑穀米に変えるなど小さな工夫から始めてみてください。

食事だけに頼らず皮膚科と二人三脚で取り組もう

地中海式食事法は有望ですが、あくまで皮膚科治療の「パートナー」です。主治医に食事の取り組みを伝え、治療方針と矛盾がないか確認しながら進めましょう。

オメガ3脂肪酸やビタミンDは乾癬にどう影響する?

個々の栄養素に目を向けると、オメガ3脂肪酸とビタミンDは乾癬との関連がとくに多く研究されています。食事やサプリメントを通じた補充が症状の安定に寄与する場面があるものの、単独で高い効果を期待するのは現実的ではありません。

オメガ3脂肪酸が持つ抗炎症作用は乾癬の症状を和らげる

オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、炎症を引き起こすプロスタグランジンやロイコトリエンの産生を抑え、炎症を鎮める方向に働きます。サバ、イワシ、サケなどの青魚に豊富に含まれており、週に2〜3回食卓に取り入れるだけでも摂取量は大きく変わります。

魚が苦手な方はアマニ油やエゴマ油を、サラダのドレッシングなどに活用するとよいでしょう。

ビタミンDの不足は乾癬を悪化させる一因になりうる

ビタミンDは皮膚の角化細胞の増殖と分化を調節し、免疫バランスを整える作用を持っています。乾癬患者ではビタミンDの血中濃度が低い傾向にあり、不足が症状悪化に関与する可能性も指摘されています。

日光浴で体内合成されるほか、鮭やきのこ類、卵黄からも摂取できます。ただしサプリメントでの大量補充は過剰摂取リスクがあるため、医師に相談のうえで適量を守ってください。

セレンや抗酸化物質も乾癬の炎症に関わっている

セレンは体内の抗酸化防御システムに関わるミネラルで、乾癬患者では血中濃度が低下しているケースが見られます。ブラジルナッツ、マグロ、卵、全粒穀物などに含まれています。

ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質も、酸化ストレスを軽減して炎症を間接的に和らげる働きがあります。色とりどりの野菜や果物をバランスよく摂ることで、これらの栄養素を幅広くカバーできるでしょう。

乾癬に関連が深い栄養素

  • EPA・DHA(オメガ3脂肪酸)── 青魚やアマニ油に豊富
  • ビタミンD ── 鮭、きのこ類、日光浴で合成
  • セレン ── ブラジルナッツ、マグロ、卵
  • ビタミンC ── 柑橘類、パプリカ、ブロッコリー
  • ビタミンE ── アーモンド、アボカド、植物油

乾癬と肥満は密接につながっている|体重管理で症状が変わる理由

肥満は乾癬の発症リスクを高めるだけでなく、すでに発症している乾癬を悪化させ、治療効果を下げる要因にもなります。体重を適正範囲に近づけることで、症状スコアの改善が期待できるとの研究結果が蓄積されてきました。

肥満は乾癬を発症・悪化させるリスク因子のひとつ

脂肪組織はTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインを分泌する「臓器」のように機能します。体脂肪が増えるほど慢性炎症が強まり、乾癬の炎症を加速させる悪循環が生じます。

肥満の方は生物学的製剤などの薬の効きが悪くなる傾向もあり、治療の選択肢が狭まりかねません。

減量するとPASI(乾癬の重症度スコア)が改善したという報告がある

複数のランダム化比較試験を統合したメタ分析では、減量介入を行ったグループは介入しなかったグループに比べてPASIスコアが有意に改善しました。BMI30以上の肥満を伴う乾癬患者では、5〜10%の減量でも症状に好影響が見られています。

減量と乾癬の症状に関する研究データ

介入内容対象結果
低カロリー食+運動指導BMI30以上の乾癬患者PASIスコアが対照群より有意に改善
食事指導のみ過体重の乾癬患者体重5%減で炎症マーカーが低下
外科的減量術後高度肥満の乾癬患者術後に乾癬が寛解した症例報告あり

極端な食事制限ではなく無理のない減量を目指そう

過度な断食や極端な糖質制限は、栄養不足を招きかえって免疫機能を低下させるリスクがあります。1か月に1〜2kg程度のゆるやかなペースで体重を落とし、バランスのよい食事を継続することが肝心です。

食事の工夫だけでは乾癬は治らない|皮膚科の治療と両立させよう

食事改善は乾癬管理の「土台づくり」にはなりますが、炎症をコントロールする主役はあくまで皮膚科の治療です。食事だけで治そうとする発想は危険であり、医療機関での適切な治療と並行して取り組む姿勢が大切です。

乾癬の標準治療は外用薬・光線療法・内服薬・生物学的製剤が柱になる

軽症であればステロイド外用薬やビタミンD3外用薬で対応し、中等症〜重症ではナローバンドUVB光線療法、シクロスポリンやメトトレキサートなどの内服薬、さらに生物学的製剤が選択肢となります。

近年は生物学的製剤の選択肢が増え、高い改善率が報告されています。「自分に合う治療がない」と諦める前に、専門医に相談してみてください。

食事療法は皮膚科の治療効果を高めるサポート役と考えよう

食事改善の最大のメリットは、全身の炎症レベルを穏やかに保ち、皮膚科の治療薬が効きやすい体内環境を整えられる点にあります。減量でBMIが正常範囲に近づくと生物学的製剤の効果が高まりやすくなるとの報告もあります。

自己判断でのサプリメント大量摂取のリスク

「ビタミンDが乾癬によい」と聞いて、市販のサプリメントを自己判断で大量に飲む方がいます。しかし脂溶性ビタミンの過剰摂取は健康被害を招くおそれがあり、薬との相互作用にも注意が必要です。

サプリメントを試したい場合は、必ず主治医に使用中の薬を伝えたうえで適切な量を相談しましょう。

食事・サプリメントと皮膚科治療の位置関係

アプローチ期待できること単独で十分か
食事改善炎症の安定化、体重管理単独では不十分
サプリメント特定栄養素の補充過剰摂取リスクあり
皮膚科の標準治療炎症の直接コントロール治療の主軸
食事+治療の併用相乗効果で症状安定もっとも効果的

乾癬と腸内環境はつながっている|プロバイオティクスにも注目が集まる

近年の研究で、乾癬患者の腸内細菌バランスは健康な人と異なることが明らかになってきました。腸と皮膚は「腸皮膚軸(gut-skin axis)」と呼ばれる経路で影響し合い、腸内環境を整えることが乾癬の管理にもプラスに働く可能性が示唆されています。

乾癬患者の腸内細菌は健康な人と異なるパターンを示す

乾癬患者の腸内細菌を調べた複数の研究では、バクテロイデス門の減少やファーミキューテス門の増加など、炎症性疾患に共通するディスバイオーシス(腸内細菌の乱れ)が確認されています。

こうした腸内環境の変化は腸管バリア機能を低下させ、細菌由来の物質が血中に漏れ出す「リーキーガット」を引き起こし、全身性の炎症をさらに悪化させると考えられています。

乾癬患者に報告されている腸内環境の特徴

  • バクテロイデス門の相対的な減少
  • ファーミキューテス門の相対的な増加
  • 腸管バリア機能の低下とリーキーガットの傾向
  • 短鎖脂肪酸を産生する善玉菌の減少

プロバイオティクスや発酵食品と乾癬の症状

乳酸菌やビフィズス菌を含むプロバイオティクスを8週間投与した臨床試験では、プラセボ群と比べてPASIスコアが有意に低下しました。

ヨーグルト、味噌、納豆、キムチなどの発酵食品を日常的に取り入れることで、腸内環境を穏やかに整える効果が期待できます。ただしプロバイオティクスの効果は菌株や摂取量で異なり、まだ研究段階にある点は覚えておきましょう。

腸皮膚軸を意識した食事

食物繊維が豊富な野菜、海藻、きのこ類は、腸内の善玉菌のエサとなるプレバイオティクスとして機能します。善玉菌が食物繊維を分解して産生する短鎖脂肪酸には、腸管バリアを強化し全身の炎症を抑える作用があるとされています。

毎日の食事で発酵食品と食物繊維を組み合わせることが、腸皮膚軸を良好に保つカギとなるでしょう。継続的な食習慣の見直しが、結果として皮膚にもよい影響を及ぼす場合があります。

よくある質問

乾癬を治す食べ物として「青魚」がよく挙げられますが、本当に効果はありますか?

青魚に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸(EPAやDHA)には、体内の炎症を抑える作用があります。実際にオメガ3脂肪酸を継続的に摂取したグループで炎症マーカーの改善が報告された研究も存在します。

ただし、青魚だけで乾癬を完治させることはできません。あくまでも皮膚科の治療と組み合わせたうえで、週に2〜3回ほど青魚を食卓に取り入れることが推奨されています。

乾癬の患者はグルテンフリー食を取り入れたほうがよいのでしょうか?

グルテンフリー食がすべての乾癬患者に有効とは限りません。血液検査で抗グリアジン抗体が陽性の方やセリアック病を合併している方に限って、グルテンを除去した食事で症状の改善が報告されています。

自己判断でグルテンフリーに切り替えると、食物繊維やビタミンB群など必要な栄養素が不足する恐れもあります。まずは皮膚科や消化器内科で抗体検査を受け、医師の判断を仰いでから取り組みましょう。

乾癬の症状改善のためにビタミンDのサプリメントを飲んでも大丈夫ですか?

ビタミンDは免疫の調節や皮膚のターンオーバーに関わる栄養素であり、乾癬との関連が深く研究されています。一部の臨床試験ではビタミンD補充によるPASIスコアの改善も報告されています。

しかし脂溶性ビタミンのため、過剰摂取で高カルシウム血症などの副作用が生じるリスクがあります。治療薬との相互作用も考慮が必要ですので、サプリメントを始める前に必ず主治医にご相談ください。

乾癬は食事を変えるだけで完治させることができますか?

残念ながら、食事の変更だけで乾癬を完治させたという質の高い医学的エビデンスは報告されていません。乾癬は免疫の異常が根本にある慢性疾患であり、食事療法だけでは炎症を十分にコントロールできない場合がほとんどです。

食事改善はあくまで補助的な取り組みであり、皮膚科の標準治療と組み合わせることでより高い効果が期待できます。定期的に皮膚科を受診しましょう。

乾癬患者がアルコールを控えたほうがよい理由を教えてください

アルコールは肝臓に負荷をかけるだけでなく、免疫細胞の働きを乱して全身の炎症を高める作用があります。飲酒量が多い乾癬患者ほど重症度が高い傾向にあるとの疫学データも複数報告されています。

完全な禁酒が難しくても、飲酒頻度や1回あたりの量を減らすだけで、炎症レベルの安定に寄与することが期待されます。週に数日は休肝日を設けてみてください。

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この記事を書いた人

野田真史のアバター 野田真史 池袋駅前のだ皮膚科 院長

医学博士 / 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

東京大学医学部卒業、同大学院医学博士課程修了。米国ロックフェラー大学への臨床研究留学、ニューヨーク州医師免許取得を経て、東京大学医学部附属病院助教を務める。2018年、池袋駅前のだ皮膚科を開院。

ニキビやシミといった身近な悩みから難治性の皮膚疾患まで、常に知識を研鑽し、適切な診断・治療を行うことを信条としている。

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