【乾癬の薬まとめ】飲み薬・塗り薬・注射薬の種類と症状に合わせた選び方

乾癬の治療薬は、塗り薬・飲み薬・注射薬の3つに大きく分かれます。症状の範囲や重さによって使い分けるのが基本で、軽症なら塗り薬だけで十分コントロールできる方も少なくありません。

一方、症状が広範囲に及ぶ場合には飲み薬や注射薬の出番です。近年は生物学的製剤と呼ばれる注射薬が登場し、従来の治療では難しかった方にも高い改善率が報告されています。

この記事では皮膚科での診療経験をもとに、乾癬に使われる薬の種類・特徴・選び方をわかりやすく整理しました。ご自身の症状に合った治療法を主治医と一緒に探すための手がかりにしてください。

目次

乾癬の薬にはどんな種類がある?塗り薬・飲み薬・注射薬

乾癬に使われる薬は、大きく塗り薬(外用薬)・飲み薬(内服薬)・注射薬(生物学的製剤)の3カテゴリーに分類されます。

どの薬を選ぶかは、皮疹の面積や重症度、患者さんのライフスタイルなどを総合して判断するのが一般的です。

塗り薬は乾癬治療の出発点になる

多くの乾癬患者さんが最初に処方されるのが塗り薬です。

ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬が代表的で、患部に直接塗ることで炎症や鱗屑(りんせつ)を抑えます。全身への影響が比較的少ないため、軽症の方や限局した皮疹のコントロールに向いています。

飲み薬は中等症以上の乾癬で力を発揮する

塗り薬だけでは効果が不十分な場合に検討されるのが飲み薬です。メトトレキサートやシクロスポリン、エトレチナートなどが代表例で、免疫の働きを抑えたり皮膚細胞の増殖を抑えたりして症状を改善します。

定期的な血液検査が必要になるため、医師との連携が大切です。

乾癬に使われる薬の分類と代表的な薬剤

分類代表的な薬剤対象となる重症度
塗り薬ステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬軽症〜中等症
飲み薬メトトレキサート、シクロスポリン、エトレチナート中等症〜重症
注射薬IL-17阻害薬、IL-23阻害薬、TNF-α阻害薬など中等症〜重症

注射薬(生物学的製剤)は重症の乾癬に大きな変化をもたらした

近年の乾癬治療で注目されているのが生物学的製剤です。

炎症を引き起こす特定のサイトカイン(免疫に関わるタンパク質)をピンポイントで抑えるため、高い改善率が期待できます。皮下注射や点滴で投与され、中等症〜重症の方に用いられるケースが増えてきました。

乾癬の塗り薬はどう使い分ける?ステロイドとビタミンD3の違い

塗り薬は乾癬治療の基本であり、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を上手に使い分けることが症状コントロールの鍵を握ります。

それぞれ得意な場面と注意点が異なるため、特徴を押さえておきましょう。

ステロイド外用薬は炎症を素早く鎮める

ステロイド外用薬は抗炎症作用に優れ、赤みやかゆみを短期間で和らげるのが特徴です。強さは5段階に分かれており、部位や症状に応じてランクを使い分けます。顔や首など皮膚の薄い部位には弱めのランクを選び、手足や体幹にはやや強めを用いるのが一般的でしょう。

ただし、長期間にわたって同じ部位に塗り続けると皮膚が薄くなる「皮膚萎縮」のリスクがあります。主治医の指示どおりの量と期間を守ることが大切です。

ビタミンD3外用薬は皮膚細胞の異常な増殖を抑える

ビタミンD3外用薬はカルシポトリオールやマキサカルシトールなどが代表です。皮膚のターンオーバーを正常に近づける働きがあり、ステロイドとは異なる角度から乾癬にアプローチします。

効果が出るまでに数週間かかることが多いものの、長期使用でもステロイドのような皮膚萎縮が起こりにくい点がメリットといえます。

2つを組み合わせた配合剤が使いやすいと感じる方も多い

近年ではステロイドとビタミンD3を1本にまとめた配合外用薬も広く処方されています。塗る手間が1回で済むため、忙しい方や面倒に感じがちな方でも続けやすいでしょう。

臨床試験では、単剤よりも配合剤のほうが高い改善率を示したという報告もあります。

ステロイド外用薬の強さの目安

ランク強さの呼称主な使用部位
I群もっとも強い手のひら・足の裏など
II群かなり強い体幹・四肢
III群強い体幹・四肢
IV群おだやか顔・首・陰部
V群弱い顔・小児

乾癬の飲み薬で全身の症状を抑えたい方が知っておくべきこと

塗り薬で十分にコントロールできない中等症〜重症の乾癬に対して、飲み薬は全身から炎症を抑える有力な選択肢です。

薬ごとに作用の仕組みや注意点が異なるため、自分に合った薬を主治医と相談しながら決めていくことが大切になります。

メトトレキサートは長い歴史をもつ乾癬の飲み薬

メトトレキサート(MTX)は、50年以上にわたり乾癬治療で使われてきた代表的な内服薬です。免疫細胞の過剰な働きを抑えることで皮膚の炎症を軽減し、関節症状を伴う乾癬性関節炎にも有効とされています。

週に1回の服用が基本で、葉酸を補充しながら使うことで副作用を軽減できるといわれています。肝機能への影響があるため、定期的な採血で状態を確認しながら継続する必要があるでしょう。

シクロスポリンは効き目が早いが長期使用には注意が必要

シクロスポリンは免疫抑制薬の一種で、比較的短期間で効果を実感できる飲み薬です。急な悪化を抑えたいときに頼りになりますが、腎機能への負担や血圧上昇といった副作用があるため、長期間の連用は避けるのが一般的な方針といえます。

多くの場合、数か月単位で使い、症状が落ち着いたら別の薬に切り替えるか減量していきます。

  • メトトレキサート:週1回の服用、葉酸補充を併用
  • シクロスポリン:即効性がある一方、長期連用は避ける傾向
  • エトレチナート:皮膚細胞の増殖を抑制、妊娠に関する制約あり

エトレチナートは皮膚のターンオーバーを整える飲み薬

エトレチナートはビタミンA誘導体の内服薬で、免疫を抑えるというよりも皮膚細胞の分化・増殖を正常化する方向に働きます。膿疱性乾癬や紅皮症型の乾癬に対して用いられることが多いのが特徴です。

催奇形性(胎児への影響)があるため、妊娠の可能性がある女性は服用中および服用後一定期間の避妊が必要です。男性にも精子への影響が報告されており、主治医から詳しい説明を受けてから使用を判断してください。

乾癬の注射薬(生物学的製剤)で皮疹がほぼ消えた方も珍しくない

従来の飲み薬や塗り薬では改善しなかった中等症〜重症の乾癬に対して、生物学的製剤は新しい治療の選択肢です。炎症を起こす特定の物質だけを狙い撃ちにするため、高い有効性と比較的良好な安全性が両立できると考えられています。

TNF-α阻害薬は乾癬治療における生物学的製剤の先駆け

インフリキシマブやアダリムマブ、セルトリズマブなどのTNF-α阻害薬は、乾癬治療に初めて導入された生物学的製剤です。炎症を促進するTNF-αというサイトカインを中和することで、皮膚と関節の両方に効果を発揮します。

乾癬性関節炎を合併している患者さんにとっては、皮膚と関節を同時にケアできる点が大きなメリットでしょう。

IL-17阻害薬やIL-23阻害薬は高い皮膚改善率が報告されている

セクキヌマブやイキセキズマブなどのIL-17阻害薬、グセルクマブやリサンキズマブなどのIL-23阻害薬は、乾癬の病態に深くかかわるサイトカインを標的にした薬剤です。大規模な臨床試験ではPASI90(症状が90%以上改善した状態)を達成する患者さんの割合が非常に高かったと報告されています。

投与間隔も薬剤によって異なり、2週間ごとから3か月ごとまで幅があります。通院の負担なども考慮しながら選べる時代になったといえるでしょう。

生物学的製剤の投与前に感染症スクリーニングを受ける

生物学的製剤は免疫に作用する薬であるため、投与を開始する前に結核やB型肝炎ウイルスなどの感染症スクリーニング検査が行われます。これは安全に治療を続けるうえで欠かせない手順です。

検査で問題がなければ治療をスタートし、その後も定期的に検査を続けていく流れになります。

主な生物学的製剤の標的と投与間隔

薬剤の標的代表的な薬剤名投与間隔の目安
TNF-αインフリキシマブ、アダリムマブ2〜8週間ごと
IL-17セクキヌマブ、イキセキズマブ2〜4週間ごと
IL-23グセルクマブ、リサンキズマブ8〜12週間ごと
IL-12/23ウステキヌマブ12週間ごと

乾癬の薬の副作用が心配な方へ|安全に続けるためのチェックポイント

どんな薬にも副作用のリスクはありますが、定期的な検査と主治医との密な連携によって多くのリスクは管理できます。大切なのは「副作用が怖いから薬を使わない」ではなく、副作用を正しく知ったうえで安心して治療を続けることです。

塗り薬の副作用は局所的なものが中心

ステロイド外用薬の長期使用で生じうる皮膚萎縮や毛細血管拡張は、使用量と期間を守れば起きにくいといえます。

ビタミンD3外用薬は塗った部分に刺激感が出ることがありますが、多くの場合は軽度です。いずれの塗り薬も、気になる症状が出たら早めに主治医に伝えてください。

飲み薬は定期的な血液検査でリスクを管理する

メトトレキサートでは肝機能障害や血球減少、シクロスポリンでは腎機能低下や血圧上昇、エトレチナートでは脂質異常症や催奇形性といった副作用がそれぞれ知られています。

定期的な血液検査や問診で早期発見・早期対応につなげることが、安全な治療継続の土台になります。

飲み薬ごとの主な副作用と確認項目

飲み薬主な副作用定期検査の内容
メトトレキサート肝機能障害、血球減少肝機能、血算
シクロスポリン腎機能低下、血圧上昇腎機能、血圧測定
エトレチナート脂質異常症、催奇形性脂質、肝機能

注射薬(生物学的製剤)の安全性は年々データが蓄積されている

生物学的製剤で報告される主な副作用は、注射部位の反応(赤み・腫れ)や上気道感染症です。免疫を調整する薬である以上、感染症への注意は必要ですが、重篤な副作用の頻度は低いと大規模な臨床試験で示されています。

長期的な安全性に関する研究報告も増え続けているため、主治医と相談しながら安心して使える薬剤が多くなっているといえるでしょう。

乾癬の重症度で薬の選び方はこう変わる|軽症・中等症・重症別の治療方針

乾癬の薬は「軽症だから塗り薬、重症だから注射薬」と一律に決まるわけではありませんが、重症度を軸にした治療方針の大枠は存在します。ご自身の症状がどの段階にあるかを把握しておくと、主治医との相談がスムーズに進むはずです。

軽症の乾癬は塗り薬で十分にコントロールできる方が多い

体表面積の数%程度にとどまる軽症の乾癬であれば、ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬などの塗り薬でコントロールできるケースがほとんどです。

薬の塗り方や量を正しく守ることで、症状の再燃を最小限に抑えられるでしょう。

中等症の乾癬では塗り薬に加えて飲み薬や光線療法を検討する

皮疹の範囲が広がってきた場合や、塗り薬だけでは改善が不十分と感じる場合は、飲み薬の併用が選択肢に入ります。

紫外線を照射するナローバンドUVB療法などの光線療法と組み合わせることもあり、治療の幅が広がる段階です。

重症の乾癬には生物学的製剤を含む積極的な治療が望ましい

広範囲の皮疹や関節症状を伴う重症例では、生物学的製剤が有力な治療手段となります。飲み薬で十分な効果が得られなかった方にとって、IL-17阻害薬やIL-23阻害薬は大きな改善をもたらす可能性があります。

主治医と今後の治療計画をしっかり話し合い、納得したうえで治療を進めていきましょう。

  • 軽症:塗り薬(ステロイド・ビタミンD3)が治療の中心
  • 中等症:飲み薬や光線療法を塗り薬に加えて併用
  • 重症:生物学的製剤を軸とした積極的な治療を検討

乾癬の薬で改善しないと感じたら治療の見直しを

薬を続けているのに症状がよくならない、あるいは一度よくなった症状がぶり返す——そんなときは、治療方針を見直すタイミングです。遠慮なく主治医に伝えることが、より良い治療への近道になります。

薬の効果は数週間〜数か月で判断する

塗り薬なら2〜4週間、飲み薬や注射薬なら3〜4か月を目安に効果を確認するのが一般的です。効果判定の前に自己判断で中断してしまうと、正しい評価ができなくなるだけでなく症状の悪化を招くおそれがあるため注意してください。

治療効果の判断に使われる指標

指標内容
PASI皮疹の面積・赤み・厚み・鱗屑を数値化した評価法
BSA皮疹が占める体表面積の割合
DLQI乾癬が日常生活に与える影響を測る質問票

別の薬への切り替えで改善する方は多い

1つの薬で効果が不十分でも、別の系統の薬に切り替えると改善するケースは珍しくありません。

たとえばTNF-α阻害薬で十分な効果が得られなかった方が、IL-17阻害薬やIL-23阻害薬に変更したところ皮疹がほぼ消失したという報告もあります。諦めずに主治医と治療の選択肢を一つずつ検討していくことが大切です。

日常生活の工夫も薬の効果を後押しする

薬だけに頼るのではなく、日常生活での工夫も治療を支えます。保湿剤をこまめに塗る、入浴時に肌をこすりすぎない、ストレスを溜めすぎない生活を意識するなど、ちょっとした習慣の見直しが薬の効果を底上げしてくれるでしょう。

飲酒や喫煙が乾癬を悪化させるという報告もあるため、心当たりのある方は主治医に相談してみてください。

よくある質問

乾癬の塗り薬を長期間使い続けても大丈夫ですか?

ステロイド外用薬は長期にわたって漫然と使い続けると、皮膚が薄くなる萎縮や毛細血管拡張といった副作用が起こる場合があります。ただし、主治医が指示する強さ・量・期間を守っていれば過度に心配する必要はありません。

ビタミンD3外用薬はステロイドに比べて長期使用での皮膚萎縮が起こりにくいとされています。そのため、ステロイドで炎症を落ち着かせたあと、維持療法としてビタミンD3外用薬に切り替える方針をとる医師も多いです。気になる変化があれば、早めに主治医へ伝えてください。

乾癬の飲み薬を服用中に妊娠を希望する場合はどうすればよいですか?

メトトレキサートやエトレチナートには催奇形性(胎児に影響を及ぼすリスク)が報告されています。妊娠を考えている場合は、服用を中止してから一定の期間を空ける必要があるため、早めに主治医へ相談してください。

特にエトレチナートは体内にとどまる期間が長いため、中止後も長期間の避妊が求められます。男性であっても精子への影響が指摘されていますので、パートナーとの妊娠計画がある場合は事前に主治医と治療方針を話し合うことが大切です。

乾癬の生物学的製剤を始めるにはどのような条件がありますか?

生物学的製剤は、中等症〜重症の尋常性乾癬や関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症などを対象に使われます。既存の治療で十分な効果が得られなかった場合に検討されることが多いでしょう。

投与前には結核やB型肝炎などの感染症スクリーニング検査が必要です。また、活動性の感染症がある方や特定の基礎疾患をお持ちの方は使えない場合があるため、主治医が総合的に判断します。

乾癬の薬で症状が改善したら自分の判断で服用をやめてもよいですか?

乾癬は慢性疾患であるため、症状が落ち着いたからといって自己判断で薬をやめてしまうと、高い確率で再燃(ぶり返し)が起こります。薬の中止や減量のタイミングは、主治医が症状の推移や検査結果を見ながら慎重に判断するものです。

「もう治ったかもしれない」と感じたときこそ、自分で判断せずに次の診察で主治医に伝えてください。段階的に薬を減らしていく方法や、維持療法に切り替える方法など、再燃リスクを抑えながら薬を減らす選択肢が用意されています。

乾癬の治療薬と他の病気の薬を同時に飲んでも問題ありませんか?

乾癬の飲み薬は他の薬との相互作用(飲み合わせの影響)が生じる場合があります。たとえばメトトレキサートはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)との併用で血中濃度が上がりやすく、副作用のリスクが高まることが知られています。

持病で別の薬を服用中の方は、必ず皮膚科の主治医にすべての薬を伝えてください。お薬手帳を持参すると伝え漏れを防げます。生物学的製剤についても、ワクチン接種との関係など注意すべき点があるため、主治医の指示を仰ぎましょう。

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この記事を書いた人

野田真史のアバター 野田真史 池袋駅前のだ皮膚科 院長

医学博士 / 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

東京大学医学部卒業、同大学院医学博士課程修了。米国ロックフェラー大学への臨床研究留学、ニューヨーク州医師免許取得を経て、東京大学医学部附属病院助教を務める。2018年、池袋駅前のだ皮膚科を開院。

ニキビやシミといった身近な悩みから難治性の皮膚疾患まで、常に知識を研鑽し、適切な診断・治療を行うことを信条としている。

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