脂肪腫とはどんなしこり?主な症状や原因・治療法をわかりやすく解説

脂肪腫とは、皮膚の下にたまった脂肪のかたまりでできる良性のできものです。痛みが出ないまま、数年かけてゆっくりと大きくなっていきます。

背中や肩、首のうしろ、腕などにでき、触るとやわらかく、指で押すと少し動きます。命に関わるものではありませんが、自然に小さくなってくれるわけでもありません。

気をつけたいのは、見た目が似ている粉瘤や、まれにある脂肪肉腫という悪性のできものとの区別でしょう。急に大きくなる、硬い、痛みが出るといった変化は、早めに確かめておきたいサインです。

この記事では、脂肪腫の症状と原因、似たできものとの違い、検査と手術の内容、そして皮膚科を受診する目安までを順に整理しました。

目次

脂肪腫とは皮膚の下に脂肪がたまってできる良性のしこり

脂肪腫とは、皮下脂肪の中で脂肪細胞が増え、薄い膜に包まれてかたまりになった良性の腫瘍です。体にできる軟らかい腫瘍の中ではもっとも多く、悪性に変わることはまずありません。

触るとやわらかく、指で押すと少し動く

脂肪腫の手ざわりは、ゴムまりのようなやわらかさと弾力が混じった独特のものです。皮膚の表面ではなく一段深いところにあるため、指でつまむと皮膚だけが浮き、しこり本体は指の下でわずかに逃げるように動きます。

境界がはっきりしていて、まわりの組織にべったりくっついていない点も特徴といえます。皮膚の色は変わらず、表面に穴や黒い点が現れることもありません。

大きさは1センチから5センチくらいのものが多く、5分の4は5センチ未満におさまると報告されています。ただし数年単位で少しずつ育つため、放っておいた期間が長いほど大きくなりやすい傾向はあります。

背中や肩、首のうしろにできやすい

脂肪腫は皮下脂肪があればどこにでもできますが、実際には背中・肩・首のうしろ・上腕に集中します。自分では見えにくい場所が多く、家族に指摘されて気づいたり、マッサージや入浴中に偶然触れて見つかったりする方が少なくありません。

太ももやおしり、おなかにできることもあります。手のひらや足の裏のように皮下脂肪が薄い部位はまれで、そうした場所のしこりは別のできものを考えていきます。

筋肉の中や筋肉の間にできるタイプもあり、この場合は皮膚の上からでは形がつかみにくく、押しても動きません。深い場所のしこりほど、触っただけで判断せずに画像で確かめる必要が出てきます。

40代から60代に多く、子どもにはまれ

できやすい年代は40代から60代です。ある報告では5番目の10年(40代)が全体の35.4%、次いで30代が27.8%を占めており、中年以降に見つかりやすい傾向がうかがえます。

反対に20歳より前に生じるのはまれで、子どもの軟部腫瘍の中で脂肪のかたまりが占める割合は1割に届きません。若い方に急にできたしこりは、脂肪腫以外の原因も含めて確かめたほうが安心につながります。

皮下にできる単発の脂肪腫は、1年間に1000人あたり1人ほどが医療機関で見つかると見積もられています。決して珍しいできものではありません。

項目脂肪腫によくみられる状態
手ざわりやわらかく弾力があり、押すと少し動く
痛みふつうは無い。大きくなると圧迫感が出る
できる場所背中・肩・首のうしろ・上腕
大きさ1〜5センチ。5分の4は5センチ未満
年代40〜60代に多く、20歳未満はまれ
進み方数年かけてゆっくり育ち、自然には消えない

脂肪腫の主な症状は痛みのないふくらみとゆっくりした成長

脂肪腫の症状は、痛みもかゆみも伴わないふくらみが少しずつ育つ、というものです。困りごとが出ないまま何年も過ぎるため、気づいたときにはかなり大きくなっていた、という経過をたどりやすくなります。

痛みもかゆみも出ないまま大きくなる

脂肪腫そのものは神経を刺激しないため、触っても痛みません。赤みや熱を持つこともなく、皮膚の見た目は健康なままふくらみだけが盛り上がってきます。

この「症状が出ない」という性質が、受診を遅らせる一番の理由でしょう。痛くないので急ぐ理由が見つからず、年単位で様子を見たまま過ごしてしまいがちです。

成長の速さはとてもゆっくりで、1年でわずかに大きくなる程度が一般的です。数週間で目に見えて育つ場合は、脂肪腫とは別の変化が起きていると考えたほうが自然といえます。

大きくなると違和感や引きつれが出てくる

ある程度の大きさを超えると、痛みではなく違和感として自覚されるようになります。背中の脂肪腫なら椅子の背もたれに当たって気になり、肩なら鞄のベルトが乗ってわずらわしく感じる、といった具合です。

関節の近くや衣類でこすれる位置にあると、日常の動きのたびに引っかかる感覚が出てきます。首や脇の下では、腕を動かすときの引きつれとして気づかれることもあります。

深い場所にあって神経の近くまで育った場合には、しびれや鈍い痛みが出るケースも報告されています。上肢にできた脂肪腫を手術した報告では、手術を選んだ理由として見た目の変化と並んで、こうした圧迫による症状が挙げられていました。

急に痛み出したときは何を疑う?

これまで痛くなかったしこりが急に痛み始めたら、まず別のできものを考えます。粉瘤に細菌が入って炎症を起こした場合が代表的で、赤く腫れて熱を持ち、押すと強い痛みが走ります。

また、脂肪腫だと思っていたものが、実は悪性の脂肪肉腫だったという場合もまれにあります。頻度は高くないものの、見た目や手ざわりだけでは区別しきれないため、変化を感じた時点で確かめる価値は十分にあります。

  • 数か月のうちに目に見えて大きくなった
  • 触ると硬く、押しても動かない
  • 痛みやしびれが新しく出てきた
  • 直径が5センチを超えている
  • 皮膚が赤く腫れ、熱を持っている

こうした変化があれば、痛みの有無にかかわらず皮膚科で相談してみてください。何ごともなければ安心材料になりますし、別の病気であれば早く手を打てます。

脂肪腫の原因は脂肪細胞の増殖だが引き金はわかっていない

脂肪腫ができる直接の原因は、皮下の脂肪細胞が増えてかたまりを作る点にあります。ただし、なぜその増殖が始まるのかについては、今のところはっきりした答えが出ていません。

脂肪細胞が増えて薄い膜に包まれる

脂肪腫の中身は、成熟した脂肪細胞そのものです。ふつうの皮下脂肪と同じ細胞が集まり、そのまわりを薄い被膜が取り囲んで、ひとつのかたまりとして独立します。

この被膜があるおかげで境界がはっきりし、押したときに動く感触が生まれます。手術で取り出すときも、被膜ごと外せるかどうかが仕上がりを左右します。

細胞の性質を調べると、多くの脂肪腫では特定の染色体の組み替えが見つかります。悪性の脂肪肉腫とは遺伝子レベルで別物であり、良性の脂肪腫が年月を経て悪性に育つわけではないと考えられています。

体質や遺伝が関わる多発型もある

脂肪腫はふつう1個だけできますが、体のあちこちに何個もできる方もいらっしゃいます。多発型では家族にも同じ傾向がみられることがあり、体質や遺伝の関与が指摘されています。

  • 両腕や両ももに左右対称にできやすい
  • ひとつひとつは小ぶりなことが多い
  • 血縁者にも似たしこりがみられる
  • 20代から30代で気づかれる場合がある

数が多い場合でも、ひとつずつの性質は単発のものと変わりません。すべてを取る必要はなく、日常生活で困っているものから順に対応していく方針が一般的です。

太っているとできやすい?

体重や体型と脂肪腫のできやすさは、はっきり結びついてはいません。やせている方にも普通にできますし、減量しても脂肪腫だけは小さくならないことが知られています。

脂肪腫の脂肪は、体の代謝の影響をほとんど受けない独立したかたまりだからです。食事や運動で全身の脂肪が減っても、被膜に包まれたこのかたまりはそのまま残ります。

打撲などのけがをきっかけに気づく方もいますが、外傷が原因になるかどうかは意見が分かれています。ぶつけた場所を気にして触るうちに、もとからあったしこりを見つけた、という順序も考えられるためです。

脂肪腫と間違えやすいできものとの見分け方

皮膚の下にできるしこりは脂肪腫だけではありません。粉瘤やガングリオン、まれにみられる脂肪肉腫まで、手ざわりのよく似たできものがいくつもあり、触っただけでは区別しきれない場合があります。

できもの中身と手ざわり見分けの手がかり
脂肪腫成熟した脂肪。やわらかく弾力がある皮膚の色は正常。押すと少し動く
粉瘤角質と皮脂。弾力のある袋状中央に黒い点。炎症で赤く腫れ痛む
ガングリオンゼリー状の液体。硬めで弾力がある手首や指など関節の近くにできる
脂肪肉腫脂肪に似るが硬い部分が混じる大きい・深い・急に育つ・動かない

粉瘤との違いは中身と皮膚の黒い点

もっとも間違えやすいのが粉瘤です。粉瘤の中身は脂肪ではなく、皮膚から剥がれ落ちた角質と皮脂がたまったもので、袋の入り口が黒い点として皮膚の表面に見えることがあります。

粉瘤は皮膚とつながっているため、脂肪腫のようにころころとは動きません。細菌が入ると急に赤く腫れて強く痛み、この炎症をきっかけに受診へ至るのが典型的な経過です。

治療の考え方も違い、粉瘤では袋を残すと再発しやすいため、赤みや腫れが落ち着くのを待ってから袋ごと取り除く方針をとります。

ガングリオンは関節の近くにできる

ガングリオンは、関節や腱を包む膜から染み出したゼリー状の液体がたまってできるふくらみです。手首の甲側や指の付け根にできやすく、脂肪腫より硬く、押すと少し痛むこともあります。

手首や指の甲側は皮下脂肪が薄いため、そもそも脂肪腫のできにくい部位であり、しこりのある場所を確かめるだけでも両者の区別はかなり進みます。

まれにある脂肪肉腫は悪性のできもの

脂肪の成分を含む悪性の腫瘍が脂肪肉腫です。頻度は脂肪腫よりずっと低いものの、見た目と手ざわりが良性のものとよく似ているため、画像や病理での確認が求められます。

目安として挙げられているのは、直径が10センチを超える、筋肉より深い層にある、中に脂肪以外の部分が混じる、といった特徴です。加えて、高齢の方や下肢にできたものでは注意して見ていきます。

ただし画像だけで白黒がつくとは限りません。専門の放射線科医がMRIを読んでも、良性と悪性を分ける正答率が7割ほどにとどまったという報告もあり、最終的には取り出した組織を調べて確定します。

脂肪腫の検査は触診と超音波でしこりの中身を確かめる

脂肪腫の診断は、見た目と触診から始まります。典型的なものはこれだけで見当がつきますが、深い場所にあるものや大きいものでは画像検査を加えます。

まずは見た目と触診で当たりをつける

皮膚の色、しこりの境界、押したときの動き方、硬さ、そして痛みの有無を順に確かめます。やわらかく、境界がはっきりしていて、皮膚と一緒には動かないという条件がそろえば、脂肪腫の可能性が高いと判断できます。

いつ気づいたか、どのくらいの速さで大きくなったかも大切な情報です。「去年からほとんど変わらない」のか「この半年で倍になった」のかで、その後の進め方が変わってきます。

超音波検査でしこりの深さと形を見る

超音波検査は、体を傷つけず、その場ですぐに行える方法です。しこりが皮下脂肪の層にあるのか筋肉より深いのか、境界がなめらかか、内部が均一かといった点を画面で確かめられます。

血流の有無も同時に確かめます。良性の脂肪腫では内部の血流が乏しいのに対し、悪性が疑われるものでは血流が目立ちやすいと報告されており、判断の分かれ目になることも少なくありません。

粉瘤やガングリオンとの区別にも役立つ検査でしょう。中身が液体かどうかは超音波で捉えやすく、触っただけでは迷う場合の有力な手がかりになります。

5センチを超えるならMRIも加える

当院では、大きさが5センチを超える脂肪腫についてMRIによる画像診断をお勧めしています。MRIは脂肪の信号をはっきり捉えられるため、かたまりの中がどれだけ脂肪で占められているかを詳しく見られます。

良性の脂肪腫なら、ほぼ全体が脂肪の信号で占められるはずです。一方、脂肪以外の部分が目立つ、厚い隔壁がある、境界がぼやけているといった所見がそろえば、悪性の可能性も視野に入れて進めていきます。

脂肪腫と悪性の脂肪腫瘍を画像で見分ける研究をまとめた検討では、診断の正確さは76%から95%と幅がありました。画像は強力ですが万能ではなく、疑わしいときには次の段階へ進みます。

取り出した組織を顕微鏡で確かめる

最終的な診断がつくのは、手術で取り出した組織を顕微鏡で調べたときです。細胞の形や並び方まで見れば、良性の脂肪腫なのか、注意の要る腫瘍なのかがはっきりしてきます。

判断に迷う場合には、遺伝子の検査を組み合わせる方法もあります。特定の遺伝子が増えているかどうかが、良性と悪性を分ける確かな手がかりになると知られています。

検査わかること使う場面
視診・触診硬さ、境界、動き方、痛みの有無すべての方に最初に行う
超音波検査深さ、内部の様子、血流中身を確かめたいとき
MRI脂肪の割合、広がり、周囲との関係5センチ超や深い場所のとき
病理検査細胞の性質。良性か悪性かの確定手術で取り出したあと

脂肪腫の治療法は局所麻酔での切除が基本

脂肪腫を小さくする薬はなく、治療は手術で取り出す方法が基本です。困っていなければ様子を見る選択もありますが、消えることを待つ意味はあまりありません。

対応内容向いている場合
経過をみる大きさの変化を定期的に確かめる小さく、困りごとが無いとき
切除手術局所麻酔で皮膚を切開し取り出す大きい、こすれる、気になるとき
専門施設で対応詳しい検査と治療を行う体制へ悪性の可能性が否定できないとき

放っておいても自然には小さくならない

脂肪腫は自然に消えるできものではありません。塗り薬や飲み薬で溶かす方法もなく、マッサージで散らそうとしても効果は望めないでしょう。

とはいえ、急いで取らなければ命に関わる、というものでもありません。小さくて困りごとがなければ、大きさの変化を見ながら付き合っていく選択も十分に成り立ちます。

ただし、小さいうちのほうが切開も小さく済み、傷あとも目立ちにくくなります。いずれ取るつもりがあるなら、早めに相談したほうが体への負担は軽くなります。

局所麻酔をかけて皮膚を切開し取り出す

当院では、脂肪腫の切除を局所麻酔で行います。しこりの上の皮膚に麻酔をかけ、皮膚表面を切開して、中にある脂肪のかたまりを取り出す流れです。

被膜に包まれているため、まわりの組織から丁寧に外していけば、かたまりごと摘出できます。被膜を破らずに取り切れるかどうかが、その後に同じ場所で再発するかを大きく左右します。

大きなものでは、脂肪吸引と切除を組み合わせる方法が選ばれる場合もあり、傷を小さく抑える工夫として報告されています。しこりの大きさや位置、皮膚からの深さを確かめたうえで、どの方法をとるかを決めていきます。

傷あとの残り方と再発のしにくさ

皮膚を切る以上、傷あとはどうしても残ります。切開の長さはしこりの大きさに左右されるため、大きく育ちきる前に取っておいたほうが、結果として傷は目立ちにくく収まりやすいでしょう。

再発については、良性の脂肪腫であればまれです。四肢の脂肪腫と悪性の脂肪腫瘍を比べた報告では、良性の脂肪腫で再発した方はいなかった一方、悪性のものでは13.9%に再発がみられました。

術後には内出血や血のたまり、傷あとの軽い痛みが出ることがあります。多くは時間とともに落ち着きますが、気になる変化があれば早めに知らせていただけると安心です。

皮膚科を受診する目安

やわらかいしこりに気づいたら、痛みがなくても一度診察を受けておくと判断がつきます。触診と超音波で見当がつくことが多く、その場で今後の方針まで確かめられます。

特に、短い期間で大きくなった、硬い、動かない、5センチを超えているといった場合は、早めの受診をお勧めします。良性であればそれで安心につながりますし、別の病気であれば早く次の手を打てます。

よくある質問

脂肪腫は自然に消えることがありますか?

自然に消えることはありません。脂肪腫の脂肪は被膜に包まれた独立したかたまりで、全身の代謝の影響をほとんど受けないためです。

減量しても脂肪腫だけは小さくならないと知られています。取り除くには手術が必要になります。

脂肪腫を放置するとどうなりますか?

良性である限り、放置してすぐに危険が生じるわけではありません。ただし数年かけて少しずつ大きくなるため、こすれる位置にあると違和感が強まっていきます。

大きくなるほど切開も長くなり、傷あとが目立ちやすくなります。取るつもりがあるなら、小さいうちのほうが体への負担は軽くて済みます。

脂肪腫は何科を受診すればよいですか?

皮膚の下のしこりですので、まずは皮膚科で差し支えありません。視診と触診に超音波検査を加えれば、多くの場合その場で見当がつきます。

深い場所にある、大きい、悪性が否定できないといった場合には、詳しい検査や治療を行える施設にご紹介します。

脂肪腫の手術後に再発することはありますか?

良性の脂肪腫では再発はまれです。四肢の脂肪腫を対象にした報告では、切除を受けた方に再発はみられませんでした。

被膜ごと取り切れるかどうかが鍵になります。取り残しがあると同じ場所に再びふくらみが出る場合があるため、手術では被膜を含めて摘出します。

脂肪腫と粉瘤はどこが違いますか?

中身が違います。脂肪腫は成熟した脂肪細胞のかたまりで、粉瘤は角質と皮脂がたまった袋です。

粉瘤は皮膚とつながっており、中央に黒い点が見えることがあります。細菌が入ると赤く腫れて強く痛む点も、痛みの出ない脂肪腫との違いです。

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この記事を書いた人

野田真史のアバター 野田真史 池袋駅前のだ皮膚科 院長

医学博士 / 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

東京大学医学部卒業、同大学院医学博士課程修了。米国ロックフェラー大学への臨床研究留学、ニューヨーク州医師免許取得を経て、東京大学医学部附属病院助教を務める。2018年、池袋駅前のだ皮膚科を開院。

ニキビやシミといった身近な悩みから難治性の皮膚疾患まで、常に知識を研鑽し、適切な診断・治療を行うことを信条としている。

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