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イベルメクチンクリームとは
イベルメクチンクリームとは、駆虫剤イベルメクチンの外用薬です。
イベルメクチンは幅広く作用する抗寄生虫薬で、独特な作用機序を持っていることで知られています。Demodex、デモデックスとも呼ばれるニキビダニでは、ダニの神経や筋細胞に存在する部位に選択的、そして高い親和性で結合します。これにより細胞膜の透過性が上昇、神経や筋細胞が反応できなくなり、その結果、寄生虫が麻痺して死亡してしまうのです。
ニキビダニを死亡させるので、炎症病変やかゆみが改善されます。
また、ニキビダニに対するダイレクトな効果のほかに、炎症を抑えて症状を鎮静する効果があります。
イベルメクチンクリームをおすすめしたい方
特に以下のような方におすすめです。
- 赤みやボツボツが特徴的な酒さのある方
- ステロイド外用薬などを長期間使って酒さ様皮膚炎を起こしてしまった方
- ニキビダニが原因と思われる膿をもったボツボツが多い方
上記以外の方でもイベルメクチンクリームが適している場合があります。気になる症状がある方は、当院医師に相談してください。
イベルメクチンクリームの効果
イベルメクチンクリームは以下のような作用を示し、酒さの炎症性病変に効果を発揮します。
ニキビダニを減らす
イベルメクチンクリームは、酒さの原因であるニキビダニを減らします。
ニキビダニは誰の顔にもいるダニの種類です。正常な皮膚の毛穴に棲んでいて、皮脂を餌にしています。一般的に、ニキビダニがいることは問題ではありません。いろいろな要因により皮膚の皮脂バランスが乱れると、ニキビダニが増殖・病変が起こります。
ニキビダニが繁殖する要因の例は、以下のとおりです。
- 皮脂が多い
- 濃い化粧
- メイクの落としの残し
- 肌を不衛生にしている
- 肌をゴシゴシ痛める など
ニキビダニ予防のためには、バランスの取れた食生活をする、メイクをきちんと落とし肌の清潔を保つ、濃いめの化粧を控える、規則正しい生活をしてホルモンバランスを整えることなどがあげられます。
ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を長期間使っていると、ニキビダニが増殖して酒さ様皮膚炎の原因になる場合もあります。イベルメクチンクリームはこのような場合にも効果的です。
炎症性病変を改善する
ニキビダニは皮膚が炎症状態にあったり、遺伝的に寄生しやすかったりする皮膚では、免疫反応を活性化してケモカイン放出をし炎症を起こすと言われています。イベルメクチンクリームによりニキビダニが減ることで、ニキビダニによる赤いブツブツや腫れ、肌の炎症、ひりつき、肌荒れ、痒みなど炎症性病変を改善します。
イベルメクチンクリームと他の外用薬との比較
酒さの治療に使う、外用薬を比較してみました。
イベルメクチンクリーム | メトロニダゾール | アゼライン酸 (AZAクリア) |
ミノサイクリン(ミノサイクリンクリーム) | |
---|---|---|---|---|
成分 | 1%イベルメクチン | 0.75%メトロニダゾール | 20%アゼライン酸 | 4%ミノサイクリン |
適応 | 酒さ | 酒さ(特に丘疹膿疱型) | ニキビ、酒さ、色素沈着のニキビ跡 | 酒さ、ニキビ |
回数 | 1日1回 | 1日1~2回 | 1日1~2回 | 1日1回 |
診療 | 自由診療 | 保険診療 | 自由診療 | 自由診療 |
使用期間 | 期間の定めなし | 通常12週まで。超える場合は必要性を検討する | 期間の定めなし | 必要最小限の期間に留める |
妊娠・授乳 | 妊娠・授乳中は必要性が高い場合のみ | 妊娠3か月以内は使えない。授乳中は避ける | 使える | 使えない |
メトロニダゾール(商品名:ロゼックス)との違い
酒さに対してメトロニダゾールは保険診療で対応できますが、基剤がゲルなので乾燥して使えない、効果が不十分という場合が今まではありました。イベルメクチンクリームはクリームタイプで成分としても刺激が少ないので、そのような方でも使えることが多いお薬です。イベルメクチンクリームでも刺激を感じる場合には、保湿剤を併用したり、ほかの外用薬に変更したりします。
アゼライン酸(AZAクリア)との違い
アゼライン酸は穀物由来成分から作られています。抗炎症作用、皮脂分泌抑制作用、抗菌作用、角化抑制作用があるので、酒さの他、ニキビ、色素沈着によるニキビ跡にも使えます。妊娠中・授乳中にも使用可能です。
ミノサイクリン(ミノサイクリンクリーム)との違い
ミノサイクリンは昔から酒さやニキビに使われている抗菌薬で、当院では4%のミノサイクリンクリームを院内製剤として作って、使っています。ミノサイクリン外用薬はアメリカではニキビと酒さに保険適用があります。ミノサイクリンは抗菌作用とは別に、酒さやニキビの炎症を抑えます。漫然と長期間使うと耐性菌があらわれる可能性があるので、使用期間は診察しながら調節が必要です。
症例
症例1
写真は酒さの治療を当院で2か月かけて行った結果です。
赤みにはVビーム2 を3回、ボツボツにはイベルメクチンクリームを1日1回で毎日治療したところ、見た目にも大きく症状が改善し、わずかな赤みがある程度になりました。最初はほてりや刺激感で悩んでいましたがそれも同時に改善して気にならない程度になっています。

治療内容 | 赤みにはVビーム2を3回、ボツボツにはイベルメクチンクリームを1日1回で毎日 |
---|---|
治療期間・回数 | 2ヶ月、3回 |
費用 | Vビーム 全顔 33,000円を3回 |
リスク・副作用 | むくみ、赤み、紫斑、水疱、色素沈着、色素脱失 |
担当医師コメント | 赤み、ほてりや刺激感、ぼつぼつと酒さに典型的な症状に長期間お悩みでしたが、適切な治療を行うことで2ヶ月という短期間でいずれの症状も改善しました。その後も症状が戻ることなく、年単位でいい状態を維持できています。Vビーム、イベルメクチンクリームは赤みやぼつぼつだけでなく、酒さの刺激感やかゆみに効果が出る場合があります。 |
症例2
ほてり、赤ら顔、膿のあるポツポツ、顔のむくみで20年以上悩んできた患者様です。赤みにVビームを3回、ポツポツにイベルメクチンクリーム、治療初期にポツポツを早めに改善するためにヒプラマイシンを使用することで改善されました。

治療内容 | 赤みにVビームを3回、ポツポツにイベルメクチンクリーム、治療初期にポツポツを早めに改善するためにヒプラマイシンを使用 |
---|---|
治療期間・回数 | 3カ月、3回 |
費用 | Vビーム 全顔 33,000円を3回 |
リスク・副作用 | むくみ、赤み、紫斑、水疱、色素沈着、色素脱失 |
担当医師コメント | ぼつぼつや赤みだけでなく、Vビーム治療やイベルメクチンクリームの効果でむくみも改善しました。レーザー治療や外用で炎症を抑えることで、酒さによるむくみやゴワゴワした肌質も改善することがあります。 |
よくある質問
- イベルメクチンクリームは何に効くの?
- 酒さの炎症性病変の治療に使います。
- イベルメクチンクリームの酒さへの塗り方は?
- 1日1回、顔の患部に塗布します。豆粒大の量をチューブから取り出し、薄く均一に塗り広げます。目や唇に触れないようにしてください。
- 長期間使用できますか。
- 長期使用に関する問題は今のところ指摘されていません。1年程度の長期連続使用も問題ありません。しかし症状を適切に判断するため定期的に診察を受けるようお願いいたします。
- どれくらいで効果が出ますか。
- 早くても2週間程度です。
副作用・注意点など
禁忌
イベルメクチンクリームの成分に対してアレルギー症状を起こしたことのある方は、使えません。
副作用
イベルメクチンクリームには以下の副作用が起きる場合があります。
- 赤み
- かゆみ
- 湿疹
- 腫れ
- 灼熱感
症状が強い場合には、使用を中止し、医師の診察を受けてください。
使用上の注意
- 妊娠動物への経口投与で母体毒性が確認されています。また母乳への移行を懸念するデータもあるので、当院では妊娠中、授乳中の方に推奨しておりません。ただし禁忌ではありませんので、必要性が高い場合には説明の上、処方することがあります。
- 効果を実感できるまでの期間は、早い人でも2週間です。効果をすぐに実感できなくても、自己判断で使うのをやめないでください。
- 人によってはピリピリとした刺激感があるかもしれません。刺激感がひどい場合には、使用頻度を1日1回、1日おきなどに減らしてください。減らしても刺激感がある場合、症状が悪化する場合には、医師に相談してください。
価格
イベルメクチンクリームは保険診療外の自由診療(自費)です。1本30g、価格は4,400円(税込)です。
イベルメクチンクリームに興味がある方は、池袋駅前のだ皮膚科へ
イベルメクチンクリームは、酒さのぼつぼつ、ニキビダニが関連している場合は赤みも改善します。刺激が少なめな外用薬なので、今までの塗り薬が使えなかった方も使えるかもしれません。
当院では、一人ひとりのお悩みにあわせた治療を提供しています。自分だけでは対処が難しいような症状があるときには、ぜひ当院までご相談ください。
【池袋駅前のだ皮膚科院長| 野田 真史 監修】アゼライン酸について
未承認医薬品等
アゼライン酸は、医薬品医療機器等法上において国内で承認されていません。
入手経路等
アゼライン酸は国内の医薬品卸業者より購入しています。
国内の承認医薬品の有無
国内で同程度の効能・効果で承認されている国内承認医薬品薬剤はありません。
諸外国における安全性などに係る情報
アゼライン酸は米国のFDA(食品医薬品局)など諸外国で承認されています。
イベルメクチンについて
未承認医薬品等
イベルメクチンは、医薬品医療機器等法上において国内で承認されていません。
入手経路等
当院では医師の判断の下、個人輸入で購入しています。医学的知見のない個人輸入は禁止されています。個人輸入された医薬品等の使用リスクに関する情報はこちらをご覧ください。
国内の承認医薬品の有無
酒さの治療薬としてメトロニダゾール(ロゼックスゲル)が国内承認されています。
諸外国における安全性などに係る情報
イベルメクチンは、米国のFDA(食品医薬品局)など諸外国で承認されています。
ミノサイクリンについて
未承認医薬品等
ミノサイクリンは、医薬品医療機器等法上において国内で承認されていません。
入手経路等
当院では医師の判断の下、調合しています。
国内の承認医薬品の有無
酒さの治療薬としてメトロニダゾール(ロゼックスゲル)が国内承認されています。
諸外国における安全性などに係る情報
ミノサイクリンは、米国のFDA(食品医薬品局)など諸外国で承認されています。
【参考文献】
未承認薬 要望書ストロメクトール錠
疥癬診療ガイドライン(第3版)
日本皮膚科学会|疥癬
Actavis Pharma|IVERMECTIN cream