私はアメリカ留学中、世界的なアトピー性皮膚炎の大家であるMount Sinai大学教授のEmma Guttmanの下でこの病気を湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬とともに専門として学んでいました。世界的に有名なJournal Allergy and Clinical Immunologyという雑誌に円形脱毛症の原因や新規治療について記載しています。英語での文献ですが、下のリンクからダウンロードできます。
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(15)00931-8/pdf
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(15)01582-1/pdf
研究成果の概説です。
https://medley.life/news/5649e5657e4a8b26053b6f2e/
円形脱毛症は若い時期に発症することが多く、7割は30歳以下で起こります。多くの場合は抜け毛が直径数cmの範囲で円形に起こり、数は一つの場合も多数の場合もあります。発症すると自然に数ヶ月で治ることが多いですが、再度ほかの所に脱毛が出現し、繰り返すことが多いです。気づいたら枕に髪がばっさり抜け落ちていた、自分では気づかず美容室で初めて指摘された、と患者さんはよくおっしゃいます。ストレスが関係すると世間ではよく言われていますが、実際なぜ発症するのかよくわかっていません。皮膚の中にある髪の毛の根本(毛包といいます)の周りに炎症を起こす細胞が集まってきて、その結果髪の毛が成長しなくなってしまうのが原因です。ただ、なぜその現象が突然起きるのかはわかっていません。
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円形脱毛症の治療
通常は頭皮の一部のみにしか脱毛が起こらないのですが、中には全部の頭髪が抜けてしまう方もいます。 甲状腺の異常を合併するリスクが普通の人よりは高いと言われていますが、ほかの臓器の異常を合併することはまれです。とはいえ、脱毛の範囲が広いと大きな精神的影響を受ける病気です。確実に効くという治療がないのが現状ですが、複数の治療法を組み合わせることで通常治りを早くすることは可能です。
- ステロイドの塗り薬
- ステロイドの頭皮への注射(月1回)
- エキシマレーザーという紫外線を当てる治療法(保険適応、週1程度)
- 皮膚にかぶれを起こして治療する方法(SADBE)
が現時点で効果の高い方法になります。ただ、どの方法でも確実に髪の毛が生える、というほどの劇的な効果がすぐに見られるわけではありません。1-2ヶ月は治療効果を得るにはかかることが多いです。これらを組み合わせることで効果に個人差はあるもののある程度の効果が得られることが多いですので、円形脱毛症を疑った場合にはクリニックを受診してください。
急速に抜け毛が進行する場合には、ステロイドの内服や点滴を行う場合もあります。ステロイド点滴は当院では対応できませんので、その場合は近隣の大学病院を紹介しています。
JAK阻害薬など、治験段階では効果がある可能性のある治療がでてきていますので、今後はさらに治療の選択肢が広がる可能性があります。
ほかの脱毛症の原因を疑ったら採血を
脱毛を起こす状態や病気には貧血、甲状腺機能異常、エリテマトーデス(膠原病の一種)、出産後の抜け毛、抜毛症(トリコチロマニアと呼ばれ、自分で髪を抜いてしまう)、頭部白癬(頭の水虫)など多くの原因が知られています。範囲が広い場合や治りにくい場合には採血の検査を行います。脱毛の種類で治療が異なりますので、自分で病気を判断せずご相談ください。