静脈湖(じょうみゃくこ)

鏡を見るたびに気になる唇の青黒い出来物は、多くの場合「静脈湖」と呼ばれる良性の血管病変です。自然に消えることはほとんどなく、放置すると少しずつ大きくなる傾向があるため、早めの対処が精神的な安心にもつながります。

治療の第一選択はレーザー照射であり、メスを使わずに短時間で痛みも少なく、きれいに治すことが可能です。費用は自費診療が中心となりますが、長年の悩みが解消されるメリットは非常に大きいと言えるでしょう。

静脈湖ができる原因からレーザー治療の流れ、気になる痛みやダウンタイム、そして費用の相場までを解説します。

目次

静脈湖ってなに?

静脈湖は紫もしくは黒く見える静脈が拡張した唇のできものです。通常症状はありませんが、出血や痛みを伴うことがまれにあります。唇のどこにでもできます。

通常は1つだけですが、複数の静脈湖が唇にできることもあります。男女問わずできますが、40代以降に多いので、日光による唇の血管へのダメージが影響していると言われています。

静脈湖(じょうみゃくこ)

右下の唇に見える青黒い2箇所のできものが静脈湖。写真のように小型のこともあれば、より大型の場合もあります。

静脈湖(下唇)の治療前後(治療前は青紫色の隆起、治療後は消失)

当院のVビーム2で一度治療した結果。静脈湖が1回の治療で完全に消えています。

静脈湖の見た目や触り心地は?

静脈湖は、主に唇の縁や耳などにできる濃い青色や紫色、あるいは黒色に見えるドーム状の盛り上がりです。大きさは米粒大の数ミリ程度のものから、小豆大の1センチ程度までさまざまです。

触ってみると驚くほど柔らかく、指で強く押すと中の血液が移動して色が一時的に薄くなり、指を離すとまた元の濃い色に戻るのが最大の特徴です。これは皮膚の奥で静脈が拡張し、血液がプールのように溜まっている状態だからです。

痛みや痒みといった自覚症状はほとんどありませんが、食事の際などに誤って噛んでしまうと出血しやすく、一度出血するとなかなか止まらないことがあります。日常生活でふとした瞬間に傷つけてしまうリスクがあるため注意が必要です。

静脈湖と間違えやすい主な症状

  • 色素性母斑(一般的なホクロ)
  • 単純性血管腫(生まれつきの赤あざ)
  • 被角血管腫(表面が硬く盛り上がる血管腫)
  • 悪性黒色腫(メラノーマ)

ホクロや悪性腫瘍との違いをどう見分けるか

多くの人が最も心配するのは、この出来物が皮膚がん、特にメラノーマなどの悪性腫瘍ではないかという点でしょう。ホクロは色素細胞が増殖したものなので、指で押しても色が薄くなることはありません。

一方、静脈湖は血管の病変なので、圧迫による色の変化が見られます。この「圧迫で色が変わるかどうか」が、ご自身でチェックできる簡易的な見分け方の一つです。

しかし、自己判断は禁物です。稀に悪性黒色腫や基底細胞癌といった悪性腫瘍が、静脈湖と非常によく似た外見を呈することがあります。急激に大きくなる、形がいびつである、出血を繰り返すといった症状がある場合は、迷わず専門医の診断を受けてください。

静脈湖ができる原因は?加齢や環境との関係

「若い頃はこんなものはなかったのに、なぜ急にできたのだろう」と疑問に思う方も多いでしょう。静脈湖はある日突然できるわけではなく、長い年月をかけたダメージの蓄積が表面化したものです。

その背景には、年齢による変化や日々の生活環境が深く関わっています。

長年の紫外線ダメージが血管を変性させる

静脈湖の最大の原因として挙げられるのが、長期間にわたる太陽光、つまり紫外線への曝露です。これを医学的には「日光性弾力線維症」とも関連づけて考えます。

紫外線は皮膚の奥深くまで到達し、血管を支えているコラーゲンやエラスチンといった弾性線維を破壊します。支えを失った血管は脆くなり、拡張しやすくなってしまうのです。

そこに血液が滞留することで、あの独特な青黒い塊が形成されます。高齢の方や、屋外での作業が多い職業の方に多く見られるのは、長年の紫外線ダメージが蓄積していることが主な理由です。

加齢による血管の弾力低下

年齢を重ねると、全身の血管と同じように、唇の微細な毛細血管も弾力を失って老化していきます。若い頃ならすぐに修復されたような些細なダメージでも、高齢になると回復力が追いつきません。

一度広がってしまった血管が元の太さに戻れなくなり、拡張したまま固定化されてしまうのです。50代以降に静脈湖の発症者が急増するのは、こうした血管構造の老化がベースにあるからです。

これは誰にでも起こりうる加齢現象の一つではありますが、顔の目立つ部分に現れるため、美容的な観点から治療を希望する方が増えています。見た目の若々しさを保つためにも早めのケアが大切です。

物理的な刺激や外傷がきっかけになることも

紫外線や加齢だけでなく、唇への直接的な物理ダメージも無視できない要因です。例えば、食事中に誤って唇を強く噛んでしまった、熱いものを食べて火傷をした経験はありませんか。

あるいは、考え事をしている時に唇を噛む癖がある方も注意が必要です。こうした外傷がきっかけで血管壁が傷つき、治癒する過程で血管が異常に拡張して静脈湖になることがあります。

特に、同じ場所を繰り返し刺激することはリスクを大きく高めます。無意識の癖を見直し、唇を愛護的に扱うことが、予防の第一歩となるでしょう。

静脈湖の主な発生要因まとめ

要因詳細対策
紫外線長年の日光曝露により血管周囲の組織が変性するUVカット効果のあるリップクリームを使用する
加齢血管の弾力が低下し、拡張したまま戻らなくなる抗酸化作用のある食事やサプリメントを摂る
物理的刺激噛む、ぶつける等の外傷がきっかけとなる唇を噛む癖を直し、保湿をして保護する

静脈湖の症状は?

良性のできもので、見た目以外に症状はないことが多いです。噛んで出血してしまう、痛みがある、ということもあります。急に痛みが出てくる場合は、静脈の中の血管が血栓で詰まってしまったケースと考えられます。

血管腫の治療は?

Vビーム2という当院のレーザーで治療できます。

手術で切除する方法もありますが、Vビーム2であれば麻酔の必要もないですし、傷跡も通常目立ちませんので、Vビーム2での治療を推奨しています。

1回で治療完了となることも多いですが、一部残った場合には2回目の治療を行います。

盛り上がりがある静脈湖では強めにVビーム2を照射しますので、一度かさぶたになったりじゅくじゅくすることもありますが、2週間程度でそれがとれてできものが消えていきます。リスクは少ないですが、傷跡による盛り上がりがでる場合がまれにあります。

唇の青いできものでお悩みの方は一度ご相談ください。

1回の治療で終わる?通院回数の目安

「何度も通院しなければならないのか」という点は、治療を受ける上で気になるところです。結論から言えば、多くの静脈湖は1回から2回の照射で十分にきれいになります。

直径が数ミリ程度の小さなものであれば、1回の治療で消失することがほとんどです。しかし、大きく盛り上がっているものや、皮膚の深部まで達しているものの場合は注意が必要です。

無理に一度で取り切ろうとして強いエネルギーを当てすぎると、火傷や傷跡のリスクが高まります。そのため、2回以上に分けて段階的に治療を行うことがあります。その場合は1〜2ヶ月の間隔を空けて経過を見守ります。

治療の痛みとダウンタイム

「唇にレーザーを当てるなんて痛そう」「治療後の腫れで仕事に行けるか心配」といった不安をお持ちの方もいるでしょう。唇は他の部位に比べて感覚が鋭敏なので、心配になるのは当然です。

しかし、現代の医療では痛みをコントロールする方法が確立されており、ダウンタイムも最小限に抑える工夫がなされています。

施術中の痛みは輪ゴムで弾かれた程度

レーザー照射時によく例えられるのが、「輪ゴムでパチンと弾かれたような感覚」です。パチッとした一瞬の熱さと軽い衝撃を感じますが、飛び上がるような激痛ではありません。

痛みに敏感な方や不安が強い方には、事前に麻酔クリームを塗布したり、麻酔テープを貼ったりして表面麻酔を行います。また、局所麻酔の注射を行うことで完全に無痛にすることも可能です。

麻酔が効いていれば、照射中の痛みはほとんど感じずに済みます。施術時間自体も数分程度と非常に短いため、我慢できないほどの苦痛を感じることはまずありませんのでご安心ください。

治療直後の腫れと経過について

レーザー照射直後は、反応した血管内の血液が凝固するため、患部が一時的に灰色や白っぽく変色します。その後、数時間以内に軽度の腫れや赤みが出ることがあります。

唇は粘膜に近い組織なので、他の皮膚に比べて少し腫れやすい傾向にあります。しかし、翌日には落ち着くことがほとんどで、日常生活に大きな支障をきたすことは稀です。

念のため、大切なプレゼンや写真撮影などの予定がある場合は、その直前の治療は避けた方が無難です。数日の余裕を持って予約を入れることで、精神的にも余裕を持って過ごせます。

かさぶたができて治るまでの期間

治療から数日が経過すると、患部は黒っぽいかさぶた(痂皮)に変化します。これは治癒過程で必ず起こる正常な反応ですので、驚く必要はありません。

かさぶたの下では新しい皮膚が作られていますので、無理に剥がさないようにしましょう。通常、1週間から2週間程度でかさぶたが自然に剥がれ落ち、下から綺麗なピンク色の皮膚が現れます。

この期間中は、処方された軟膏を塗って乾燥を防ぎ、刺激を与えないように過ごすことが大切です。マスクを着用していれば周囲に気づかれることもなく、普段通りの生活を送ることができます。

治療後の経過とダウンタイムの目安

経過状態注意点
当日〜翌日患部が白変し、軽く腫れることがある激しい運動や飲酒は控える
3日目〜1週間黒っぽいかさぶたが形成される無理に剥がさず、軟膏で保護する
2週間後かさぶたが取れ、ピンク色の皮膚になる紫外線対策を徹底する

静脈湖除去にかかる費用の相場

治療を検討する上で、費用の問題は避けて通れません。静脈湖のレーザー治療は、基本的に健康保険が適用されない「自由診療(自費診療)」となるケースが一般的です。

しかし、手術が必要な場合など、条件によっては保険適用となることもあります。クリニックによって料金設定は異なりますが、ここでは一般的な費用相場について詳しく見ていきましょう。

大きさや個数で決まる料金設定

自由診療の場合、多くのクリニックでは病変の大きさ(直径ミリ単位)や個数によって価格が決まります。一般的には、直径3mm未満の小さなものであれば1万円から2万円程度が相場です。

5mmを超えるような大きなものになると、3万円から5万円程度かかることもあります。これに加えて、初診料や再診料、薬代が別途発生する場合が多いです。

また、取り放題プランなどを設けているクリニックは少なく、基本的には一つひとつの病変に対して費用が発生します。複数の静脈湖がある場合は、総額がいくらになるのか事前に確認しておくと安心です。

保険適用になるケースとならないケース

単なる美容目的ではなく、日常生活に支障がある場合は保険適用になる可能性があります。例えば、頻繁に出血を繰り返す、大きすぎて食事がしにくいといったケースです。

この場合、「血管腫摘出術」としてメスを入れて切り取り、縫合する手術が行われます。保険適用であれば、自己負担額は3割負担で数千円から1万円程度に抑えられます。

しかし、傷跡を最小限にするためのレーザー治療は、ほとんどの場合「美容目的」とみなされ保険適用外となります。費用を抑えるか、仕上がりの美しさを優先するか、ご自身の価値観に合わせて選択する必要があります。

治療法別の費用目安(1箇所あたり)

治療法費用相場保険適用
YAGレーザー10,000円〜30,000円原則適用外
炭酸ガスレーザー10,000円〜20,000円原則適用外
切除手術5,000円〜15,000円(3割負担時)適用される場合あり

当院でのVビームによる治療費用は、静脈湖1カ所 16,500円(税込み)となります。

追加で発生する可能性のある費用

治療費の総額を正確に把握するためには、施術代以外にかかるコストも見落とせません。例えば、痛みを軽減するための麻酔テープやクリーム代がオプション(1,000円〜3,000円程度)になっていることがあります。

また、術後の感染予防のための抗生剤や、炎症を抑える軟膏、保護テープ代が別途請求されることもあります。ホームページに記載されている料金は「レーザー照射代のみ」であることが多いです。

カウンセリングの際には、「トータルで支払う金額はいくらになるのか」を明確に見積もりしてもらうことが大切です。後から予想外の出費に驚かないよう、細部まで確認しましょう。

よくある質問

静脈湖のレーザー治療はどのくらい痛いですか?

静脈湖のレーザー治療時の痛みは、輪ゴムでパチンと弾かれたような一瞬の衝撃を感じる程度です。

痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの場合は我慢できる範囲内です。

不安な方には麻酔テープやクリームを使用することで、痛みを大幅に和らげることが可能です。

静脈湖は一度除去しても再発することはありますか?

静脈湖は一度綺麗に除去しても、血管の拡張が完全に戻っていなかったり、長年の紫外線ダメージや物理的刺激が続いたりすることで、同じ場所に再発する可能性があります。

再発した場合は、再度レーザー照射を行うことで治療できます。

静脈湖の治療後すぐに口紅やメイクはできますか?

静脈湖の治療直後は患部が敏感になっているため、当日の口紅や患部への直接的なメイクは控える必要があります。

翌日以降、かさぶたが形成されれば、その上から優しくメイクをすることは可能ですが、刺激を避けるために治癒するまでは患部を避けるのが無難です。

静脈湖のレーザー除去にかかる費用はいくらですか?

静脈湖のレーザー除去費用は病変の大きさによりますが、自費診療の場合、直径3mm程度なら1〜2万円、5mm以上なら3〜5万円前後が一般的な目安です。

別途、初診料や薬代がかかる場合があるため、事前にクリニックで見積もりを確認することをお勧めします。

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院長紹介

池袋駅前のだ皮膚科院長 野田 真史
池袋駅前のだ皮膚科院長
野田 真史
池袋駅前のだ皮膚科院長 野田 真史


学歴・資格

東京大学医学部医学科卒業

皮膚科専門医(日本皮膚科学会認定)

医学博士(東京大学大学院医学系研究科)

ニューヨーク州医師免許

ECFMG certificate(アメリカ医師国家試験合格証)

Master in translational science(米国ロックフェラー大学)

米国ロックフェラー大学皮膚科 (Associate Attending Physician)


略歴

2007年
東京大学医学部医学科 卒業
2009年
東京大学医学部附属病院 初期研修修了
2009年 2014年
東京大学皮膚科に入局し、東京大学医学部附属病院、関東労災病院で皮膚科医として勤務
米国Northwestern大学、Thomas Jefferson大学で診療研修
2013年
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医取得
2014年
東京大学大学院医学系研究科卒業、医学博士
米国ロックフェラー大学
Instructor in Clinical Investigation
兼 Associate Attending Physician
ニューヨーク州医師免許を取得し、診療にあたる
湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、円形脱毛症の研究に従事し、Master in translational science(MSc)取得
2016年
東京大学医学部附属病院 皮膚科 助教
2018年
池袋駅前のだ皮膚科 開院
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