子供のアトピー性皮膚炎との付き合い方|悪化を防ぐ日常ケアと皮膚科での治療法

子供のアトピー性皮膚炎との付き合い方|悪化を防ぐ日常ケアと皮膚科での治療法

子供のアトピー性皮膚炎は、毎日の保湿で肌のバリアを守り、汗や乾燥といった悪化の引き金を遠ざけ、必要なときに皮膚科の治療を組み合わせることで、かゆみの少ない安定した肌を保ちやすくなります。

「体質だからしかたない」と、あきらめてしまう必要はありません。多くの子供は、正しいケアを根気よく続けるうちに症状が落ち着き、成長とともに軽くなっていく傾向があります。

この記事では、家庭でできる毎日のスキンケアのコツから、ステロイド外用薬を中心とした皮膚科での治療、そして受診を考えたい目安までを、お伝えします。

目次

子供のアトピー性皮膚炎が起きる理由と肌バリア・体質の関係

日本では子供のおよそ1割前後がアトピー性皮膚炎を経験するとされ、決してめずらしい病気ではありません。生まれつき肌のバリアが弱い体質に、アレルギーを起こしやすい体質が重なって起こると分かってきました。

症状の出やすい場所は、年齢によって移り変わっていきます。

年齢のめやす出やすい部位症状の特徴
乳児期(0〜1歳ごろ)顔・頭・首まわりじくじくした赤みやかさぶた
幼児期(2歳〜小学校低学年)ひじ・ひざの内側や首カサカサして皮膚が厚くなりやすい
学童期以降手足の関節や全身乾燥とかゆみがくり返しやすい

このように出る場所は移り変わっても、根っこにあるのは肌のバリアの弱さです。まずはこの仕組みを知ることが、毎日のケアに納得して取り組む第一歩になります。

くり返す赤みとかゆみがアトピー性皮膚炎のサイン

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみをともなう赤みや湿疹が、よくなったり悪くなったりをくり返す病気です。左右対称に出やすく、ひっかくことでさらに広がっていきます。

数日でおさまる一時的な肌あれとは違い、慢性的に長く続く点が見分ける目安です。乳児では2か月以上、それ以降では6か月以上くり返す場合に、この病気が疑われます。

肌のバリアがこわれると刺激が入りやすくなる

健康な肌の表面は、内側の水分を抱え込み、外からの刺激をはね返すバリアの役割を果たしています。アトピーの肌ではこのバリアがうまく働かず、水分が逃げて乾燥し、刺激やアレルギーのもとが入り込みやすくなります。

その結果、わずかな刺激でもかゆみが起き、かくことでバリアがさらにこわれます。乾燥とかゆみが互いを強め合う、この悪い流れを断つことが治療の出発点です。

乾いた肌では、かゆみを感じる神経が表面近くまで伸びやすいことも分かっていて、だからこそ、うるおいを保つだけでかゆみそのものが起きにくくなります。

肌のバリアを支えるたんぱく質フィラグリン

肌のバリアづくりに欠かせないのが、フィラグリンというたんぱく質です。この素材を作る遺伝子に生まれつき変化がある子供は、肌の水分が逃げやすく、アトピーを起こしやすいと研究で明らかになりました。

体質そのものをすぐに変えることは難しくても、外から保湿剤で補えば、弱いバリアを毎日助けてあげられます。だからこそ、塗り薬と並んで保湿が大きな意味を持つのです。

もちろん遺伝子の変化がない子供でも、乾燥や刺激が重なればアトピーは起こります。体質はあくまで起こりやすさの一因で、すべてが生まれつき決まるわけではありません。

アトピーの悪化を防ぐ鍵は毎日の保湿スキンケア

アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐいちばんの土台は、薬よりもまず毎日の保湿です。症状が落ち着いているときも休まず塗り続けることで、肌のバリアを保ち、再発を遠ざけられます。

保湿剤はたっぷり塗る

保湿剤は、少量をうすくのばすだけでは力を発揮しません。肌が少ししっとり光り、ティッシュが軽く貼りつくくらいの量を目安に、惜しまず塗るのがコツです。

塗る回数は1日2回以上が基本で、入浴後と朝のしたくのときなど、生活の区切りにあわせて習慣にすると、無理なく続けられます。

塗る量が足りないと、せっかくの保湿剤も効きめが半減してしまいます。一本をどのくらいの日数で使い切れているかをみれば、足りているかどうかの目安になります。

お風呂は短めのぬるま湯でやさしく洗う

熱いお湯や長湯は、肌の油分を奪って乾燥を進めてしまいます。38度前後のぬるめのお湯にさっと入り、石けんはよく泡立てて、手のひらでなでるように洗いましょう。

ゴシゴシこすったり、かたいナイロンタオルを使ったりすると、それだけで肌を傷つけかねません。汗や汚れは、やさしくでも十分に落とせます。

洗ったあとに肌がつっぱる感じがあれば、お湯が熱すぎたか洗いすぎのサインです。翌日からは温度や時間を少し見直すと、肌の調子が変わってきます。

塗るタイミングは入浴後すぐ

保湿剤は、お風呂あがりの肌がうるおっているうちに塗ると、いちばんよくなじみます。タオルで押さえるように水気をとったら、5分以内を目安にやさしく塗り広げてください。

あわてて塗ると、すり込みすぎて肌をこすってしまいがちです。手のひらに広げてから、なでるようにそっとのせると、余分な刺激を与えずにすみます。

主な保湿剤のタイプと特徴

種類はたらき向いている場面
ワセリンなど油性タイプ水分の蒸発を防ぐ膜をつくる乾燥が強い肌や冬場
ヘパリン類似物質の保湿剤水分を抱え込んでうるおす軽い乾燥や広い範囲
セラミド配合の保湿剤弱ったバリアの素材を補うデリケートな肌

どれが合うかは、肌の状態や季節で変わります。自己判断で次々に変えるより、皮膚科で子供の肌に合うものを選んでもらうほうが、遠回りせずにすみます。

子供のアトピーのかゆみと掻きむしりを減らす毎日の工夫

夜になるとかゆがって眠れない、気づくと血がにじむほどかいている。そんな掻きむしりの悪循環は、かゆみを早めにしずめることで弱められます。かく前の一手間が、肌を守る近道です。

かいてしまう前に冷やしてかゆみをしずめる

かゆいところを冷たいタオルや保冷剤でそっと冷やすと、かゆみの信号がやわらぎます。かきたい衝動が起きたら、たたく・冷やす・保湿するの順で、気をそらしてあげましょう。

かゆみは夜に強まりやすいものです。寝る前に冷やして保湿しておくと、布団に入ってからかきはじめる回数を減らせます。

爪を短く整えて肌の傷を防ぐ

子供の爪は、こまめに短く切り、角をやすりでなめらかにしておきます。気づかないうちにかいても肌につく傷が浅くなり、とびひなどの感染も防ぎやすくなります。

かゆみが強い時期は、薄手の綿の手袋をはめて眠るのもひとつの手です。引っかき傷から肌を守りながら、眠りも妨げません。

寝ているあいだのかきむしりを防ぐ

眠っているあいだは無意識にかいてしまい、朝になって悪化していることがよくあります。寝る前にしっかり保湿し、室温を下げすぎず、汗で蒸れない綿のパジャマを選んであげましょう。

朝起きたときの肌をそっと確かめる習慣をつけると、夜のかきむしりに早く気づけます。悪化のサインを家族で見つけておくと、対策も立てやすいです。

かゆみを強めやすいもの

  • 汗をかいたままの肌
  • 乾燥した空気と暖房
  • チクチクするウールや化学繊維の衣類
  • 体が温まりすぎる入浴や厚着

思いあたるものがあれば、ひとつずつ遠ざけてみてください。かゆみのきっかけを減らすだけでも、夜の眠りはぐっと楽になります。

アトピーを悪化させる引き金と部屋の環境づくり

悪化には、はっきりした引き金があります。汗、乾燥、ダニやホコリ、刺激の強い衣類などが代表で、これらを生活の中で少しずつ減らすことが、肌を安定させる土台になります。

汗をかいたらこまめに洗い流す

汗はかゆみを強める大きな引き金です。とはいえ運動や外遊びを止める必要はなく、かいたらシャワーでさっと流すか、ぬるま湯でしぼったタオルで押さえてあげれば十分でしょう。

洗い流したあとは、忘れずに保湿で締めくくります。汗を流す習慣と保湿はセットだと考えておくと、夏場の悪化を防ぎやすくなります。外遊びのあとや昼寝で汗ばんだときも同じです。

ダニやホコリを減らす部屋づくり

寝具やぬいぐるみにひそむダニは、アレルギーの引き金になりやすいものです。シーツやまくらカバーは週に1回を目安に洗い、布団はこまめに干すか掃除機をかけておきましょう。

部屋の湿度は50〜60パーセントほどに保つと、ダニの繁殖も冬の乾燥も同時に抑えやすいです。加湿器と換気を上手に使い分けてみてください。

床にカーペットやぬいぐるみが多いほど、ダニのすみかは増えるので、思いきって数を減らし、ふき掃除をしやすい部屋にしておくと管理が楽になります。

食物アレルギーとの関係はどこまで?

「アトピーは食べ物のせい」と思われがちですが、すべての子供で食物が原因になるわけではありません。一部の子供では卵や乳などが悪化に関わることもありますが、自己判断での食物除去は栄養面の心配を招きます。

気になる食材があるときは、勝手にやめず、皮膚科やアレルギー科で検査を受けて確かめましょう。むやみに食べ物を制限するより、肌のバリアを整えるほうが先決です。離乳食を遅らせれば予防できる、というわけでもありません。

季節ごとに気をつけたいこと

季節悪化しやすい理由心がけたいこと
春・秋花粉や気温の変化帰宅後の洗顔と着替え
汗とあせもこまめな汗対策と冷房の調整
乾燥と暖房加湿と保湿の量を増やす

季節の変わり目は、症状がゆれやすい時期です。あらかじめ保湿の量を調整しておくと、急な悪化の波をやわらげられます。

皮膚科でのアトピー性皮膚炎の治療法とステロイドの使い方

ステロイドは怖い薬と思われがちですが、皮膚科の指示どおりに使えば、炎症をすばやく抑えて肌を回復させる頼れる薬です。治療の柱は、炎症を抑える塗り薬と毎日の保湿の組み合わせにあります。

ステロイド外用薬は炎症をしっかり抑える主役

赤みや湿疹が出ている部分には、まずステロイドの塗り薬で炎症を鎮めます。強さは体の部位や症状に合わせて使い分け、顔には弱め、体には必要な強さのものを選びます。

自己判断で早くやめると、くすぶった炎症がぶり返します。医師の指示どおりに、よくなるまで塗りきることが、回復への近道だと覚えておいてください。塗る量は、指の先に出した分で手のひら2枚分ほどが目安です。

タクロリムスなど非ステロイドの塗り薬

ステロイドを使いにくい顔やまぶたには、タクロリムスという非ステロイドの塗り薬がよく使われます。免疫の高ぶりをしずめる薬で、皮膚が薄くなる心配が少ないのが利点です。

塗り始めにほてりやしみる感じが出ることもありますが、続けるうちにやわらいでいくことがほとんどでしょう。気になるときは医師に伝えれば、使い方を調整できます。また、日光に当たる前の使用は控えるなど、いくつか注意点もあります。

良い状態を保つプロアクティブ療法

症状がおさまったあとも、週に2回ほど塗り薬を続けて再発を防ぐ方法を、プロアクティブ療法(先回りの治療)と呼びます。炎症が表に出る前にくいとめる考え方で、悪化のくり返しを減らせると報告があります。

いつ・どこに・どのくらい塗るかは肌の状態で変わります。医師と相談しながら、薬を少しずつ減らしていく見通しを立てていきましょう。先回りして炎症を抑えるほうが、結果として使う薬の総量を減らせることも分かってきました。

重い症状に使う新しい注射薬や飲み薬

塗り薬だけでは抑えきれない重い症状には、デュピルマブという注射薬など、新しい治療も選べるようになりました。アレルギーの炎症を内側からしずめる薬で、子供にも使える年齢が広がっています。

飲み薬のタイプもあり、症状の重さや年齢に応じて医師が向き不向きを判断します。塗り薬で十分に効果が出ないときの、次の一手だと考えるとよいでしょう。いずれの薬も、定期的に通院して経過をみながら使います。

主な塗り薬の種類とはたらき

種類おもなはたらき使うときの注意
ステロイド外用薬炎症と赤みをすばやく抑える部位に合った強さを選ぶ
タクロリムス軟膏顔など薄い皮膚の炎症を抑える最初の刺激感に慣れるまで続ける
保湿剤弱ったバリアを補い乾燥を防ぐ薬とあわせて毎日塗る

どの薬も、塗る順番や量には意味があります。受診のときに塗り方を実演してもらうと、家庭でのケアがぐっとやりやすくなり、効果も安定します。

子供のアトピー性皮膚炎と長く付き合う家族のケアと受診のめやす

毎日のケアを続けていれば、子供のアトピー性皮膚炎は年齢とともに軽くなっていきます。あせらず長い目で付き合いながら、悪化のサインを見逃さず、必要なときに皮膚科を頼ることが大切です。

成長とともに軽くなることが多い

乳幼児期に始まったアトピー性皮膚炎の多くは、成長につれて症状がやわらいでいきます。すべての子供が同じ経過をたどるわけではありませんが、適切なケアは回復を後押ししてくれます。

今の状態が一生続くわけではない、と知っておくだけで、毎日のケアに向かう気持ちは少し軽くなるかもしれません。とはいえ油断は禁物で、軽くなった時期もケアをやめると元へ戻りやすくなります。

こんなときは早めに皮膚科へ

自宅のケアで赤みやかゆみが落ち着かないときや、急に悪化したときは、早めに皮膚科を受診してください。じくじくして黄色いかさぶたができる、熱をもつといった場合は、感染が起きていることもあります。

とびひのように広がる感染は、早めの手当てで悪化をくい止められます。家庭だけで抱え込まず、迷ったらまず電話で相談してみるのもよい方法です。

受診を考えたいサイン

  • 数日のケアで赤みが引かない
  • かゆみで夜よく眠れない
  • 皮膚がじくじくして膿んでくる
  • 市販の保湿だけでは追いつかない

迷ったときは、がまんして様子を見るより、一度相談してしまうほうが安心です。早めの受診は、悪化と長引きを防ぐことにつながります。

子供と家族の負担を軽くする工夫

アトピーのケアは、付き添う家族の眠りや気持ちにも負担をかけます。かゆみで親子ともに疲れてしまうことは、めずらしくありません。ケアを家族で分担したり、園や学校に肌の状態を伝えて協力してもらったりすると、負担は軽くなるでしょう。

夜のかゆみが続くなら、その状態を遠慮なく医師に伝えてください。眠れない日々が続くこと自体が、治療を見直す大事な手がかりになります。

よくある質問

子供のアトピー性皮膚炎は何歳ごろに治りますか?

はっきりと「何歳で治る」と言い切ることは難しいものの、乳幼児期に始まったアトピー性皮膚炎の多くは、成長とともに軽くなっていきます。学童期や思春期までにかなり落ち着く子供も少なくありません。

ただし経過には個人差が大きく、大人になっても付き合っていく場合もあります。だからこそ症状の波に一喜一憂しすぎず、毎日の保湿とケアを続けることが、良い状態を長く保つ支えになります。

子供のアトピー性皮膚炎にステロイドを使い続けても大丈夫ですか?

皮膚科の指示どおりに使う限り、ステロイドの塗り薬は子供にも安全に使える薬です。「皮膚が黒くなる」「成長が止まる」といった心配の多くは、正しい使い方では当てはまりません。

大切なのは、炎症があるときにしっかり塗りきり、よくなったら医師の指示に沿って減らしていくことです。自己判断で急にやめると、かえって悪化をくり返してしまいます。

子供のアトピー性皮膚炎に保湿剤はどのくらいの量を塗ればよいですか?

目安は、塗ったあとに肌が少ししっとり光り、ティッシュが軽く貼りつくくらいの量です。うすくのばすだけでは足りないことが多く、思っているより多めが適量だと考えてください。

大人の人さし指の先から第一関節までに出した量で、手のひら2枚分ほどの面積をカバーできます。1日2回以上、とくに入浴後すぐに塗る習慣をつけると効果的です。

子供のアトピー性皮膚炎は食べ物が原因で起きるのですか?

すべての子供で食べ物が原因になるわけではありません。アトピー性皮膚炎の根っこにあるのは肌のバリアの弱さで、食物アレルギーは一部の子供で悪化に関わる要因のひとつにすぎません。

自己判断で卵や乳などを除去すると、成長期の栄養が偏る心配があります。気になる食材があるときは、皮膚科やアレルギー科で検査を受けてから、医師と相談して進めましょう。

子供のアトピー性皮膚炎でお風呂やプールは避けるべきですか?

避ける必要はありません。お風呂は、肌の汚れや汗を落として清潔を保つ大切な習慣です。ぬるめのお湯にさっと入り、やさしく洗って、あがったらすぐ保湿することを心がけてください。

プールの塩素は肌の刺激になることがあるため、泳いだあとはシャワーでよく洗い流し、保湿で締めくくりましょう。こうした一手間で、水遊びを楽しみながら肌を守れます。

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この記事を書いた人

野田真史のアバター 野田真史 池袋駅前のだ皮膚科 院長

医学博士 / 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

東京大学医学部卒業、同大学院医学博士課程修了。米国ロックフェラー大学への臨床研究留学、ニューヨーク州医師免許取得を経て、東京大学医学部附属病院助教を務める。2018年、池袋駅前のだ皮膚科を開院。

ニキビやシミといった身近な悩みから難治性の皮膚疾患まで、常に知識を研鑽し、適切な診断・治療を行うことを信条としている。

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