円形脱毛症の治療には、ステロイドの塗り薬や注射、局所免疫療法、光線療法、飲み薬があります。脱毛が狭い範囲にとどまるときは塗り薬や注射を軸に、広い範囲に及ぶときや急に進むときは別の治療も組み合わせるのが基本です。
髪が抜けても毛をつくる組織は保たれているため、発毛を目指せる病気です。ただ、効き方や回復までの期間には個人差があり、治療を始めてから生えてきたと気づくまでに1〜2か月以上かかることもあります。
円形脱毛症の治療は抜けた範囲と広がる速さで変わる
治療を選ぶ基準は、脱毛の広さと発症からの経過、現在の広がる速さ、年齢です。同じ大きさの脱毛でも、急に増えている場合と、しばらく変わらない場合とでは、使う薬や受診の間隔が変わります。
髪が抜けても毛をつくる組織は残っている
円形脱毛症は、体を守る免疫が毛包を攻撃して起こる自己免疫の病気です。毛包とは、毛の根元を包み、髪をつくる組織を指します。免疫の働きによって髪の成長が妨げられますが、一般に毛包そのものが傷あとに置き換わる病気ではありません。
そのため、治療では髪の成長を妨げる免疫の反応を抑え、再び毛が伸びる状態を目指します。見た目の変化が大きくても、毛をつくる力は残っていることが多いので、治療を続けながら回復を待てます。
当院院長の野田は、米国留学中に円形脱毛症の病態研究に携わり、頭皮でいくつもの免疫の信号が高まっていることを調べた論文の共著者です。当院で行っている治療と院長の研究については、円形脱毛症の診療ページで紹介しています。
小さな脱毛と急に広がる脱毛では治療が違う
狭い範囲の脱毛には、頭皮へ直接働きかける塗り薬や局所注射が候補になります。一方、急速に広がるときは、飲み薬や点滴で全身の免疫の反応を抑える治療も検討の対象です。範囲が広い場合には、局所免疫療法やJAK阻害薬も候補に入ります。
| 脱毛の状態 | 主な治療の候補 | 選ぶときの確認点 |
|---|---|---|
| 範囲が限られる | ステロイド外用・局所注射 | 年齢、場所、注射の痛み |
| 広い範囲に及ぶ・長引く | 局所免疫療法・光線療法など | 経過、通院できる頻度 |
| 短期間で急に広がる | ステロイド内服・点滴など | 発症時期、全身の健康状態 |
| 頭皮の広い範囲が抜ける | 条件に合えばJAK阻害薬 | 脱毛の程度、年齢、検査結果 |
治療は1つに絞るとは限りません。たとえば、塗り薬を使いながら、反応が乏しい部分へ光線療法を組み合わせるなど、頭皮の状態に合わせて調整します。
診察では頭皮と体調の両方を確かめる
診察では、抜けた部分の形や残っている毛の状態から、円形脱毛症かどうかを判断します。自分で毛を抜いてしまう抜毛症、カビがうつって起こる頭部白癬、毛の成長が休む時期に抜け毛が増える状態も似て見えるため、見分けが必要です。
円形脱毛症には、自己免疫性甲状腺炎など、免疫が関わる別の病気が合併しやすい傾向があります。ただし、脱毛があるだけで甲状腺の病気と決まるわけではありません。範囲が広い場合や治りにくい場合は、体調や診察の結果に応じて血液検査が加わります。
脱毛に気づいた時期と、その後の広がり方は、受診のときに医師へ伝えてください。
塗り薬と注射は狭い範囲の炎症を抑える
抜けた場所が小さく限られているなら、ステロイドの塗り薬や局所注射が主な候補です。どちらも毛包の周囲で起きている炎症を抑える治療ですが、薬の届き方と負担が異なります。
子どもの治療は塗り薬から始められる?
ステロイド外用は、脱毛した頭皮に薬を塗る治療です。注射の痛みがないため、子どもにも取り入れやすく、薬の強さや使う期間は年齢と頭皮の状態に合わせて決まります。
薬を塗る場所は髪の表面ではなく、指定された頭皮です。量や回数を増やせば早く生えるとは限らず、長く使うことで皮膚が薄くなったり、毛穴の周囲にぶつぶつができたりすることがあります。塗った後の赤みや刺激が続く場合は、使用状況を診察で伝えてください。
特に子どもの治療では、保護者が塗る場所と量を一緒に確認すると、毎日の使用を続けやすくなります。目立つ発毛まで時間がかかるため、次回の診察までの使い方を決めておくと安心です。
局所注射は月1回程度を目安に行う
ステロイド局所注射は、脱毛した頭皮へ少量の薬を注入する方法で、範囲が限られた大人の治療に用いられます。塗り薬よりも直接、毛包の周囲へ薬を届けられる点が特徴です。通院は月1回程度が目安ですが、頭皮の反応や副作用に応じて間隔が変わります。
| 比べる点 | 塗り薬 | 局所注射 |
|---|---|---|
| 主な使い方 | 自宅で指定の場所に塗る | 医療機関で脱毛部へ注射する |
| 選びやすい場面 | 狭い範囲の脱毛、子どもの治療 | 範囲が限られた大人の治療 |
| 注意する変化 | 皮膚が薄くなる、ぶつぶつ | 痛み、皮膚のへこみ、色の変化 |
注射を受けた部分に発毛しても、別の場所で脱毛が進むことがあります。そのため、通院のたびに、注射した場所だけでなく頭皮全体を確認します。
へこみや痛みがあれば注射の続け方を調整
局所注射で注意したい副作用は、薬を入れた場所の皮膚が薄くなり、へこんで見える変化です。皮膚の色が変わることもあり、同じ場所へ繰り返すかどうかは、前回の注射後の状態から決まります。
へこみが出た場合には、その部分への注射を休むなど、治療の調整が必要です。痛みの感じ方にも幅があり、注射への不安が強いときは塗り薬などと比べながら方法を選べます。子どもの場合は、年齢に加えて、注射の痛みに耐えられるか、通院を続けられるかも考えて決めます。
発毛の程度と副作用の両方を見ながら続けることが、局所治療の基本です。
広い脱毛や長引く脱毛には局所免疫療法も
局所免疫療法は、免疫を単純に強める治療ではありません。頭皮に意図的に軽いかぶれを起こし、毛包への免疫の反応を変える方法で、脱毛が広い場合や長引く場合に用いられます。
SADBEで軽いかぶれを起こし免疫の反応を変える
SADBEは、スクアリック酸ジブチルエステルと呼ばれる、皮膚にアレルギー反応を起こす薬です。治療は、初めに薬へ反応する状態をつくり、その後に薄い濃度から頭皮へ塗る流れで進みます。かぶれの程度を見ながら濃度を調節し、毛包に向かう免疫の反応を変えて発毛を促す方法です。
治療の目標は、強いかぶれを起こすことではなく、反応を確かめながら続けられる刺激に整えることです。赤みやかゆみが強いほど発毛しやすいとは限らず、毎回の頭皮の状態に応じて薬の濃度や塗る範囲が変わります。
局所免疫療法はどのくらい通う?
局所免疫療法は、週1回程度の通院から始めることがあり、発毛の評価には数か月かかります。通院間隔は皮膚の反応や治療を行う施設の方針で変わるため、学校や仕事と両立できるかを、始める前に確かめておくと安心です。
| 確認する時期 | 確かめたいこと | 治療への反映 |
|---|---|---|
| 治療を始める前 | 脱毛の範囲、通院の見通し | 続けられる方法を選ぶ |
| 塗布した後 | かゆみや赤みの強さと持続 | 薬の濃度や間隔を調整する |
| 数か月の経過 | 産毛や脱毛範囲の変化 | 継続や併用を相談する |
局所免疫療法の研究をまとめると、何らかの発毛がみられたのは65.5%、完全に生えそろったのは32.3%でした1)。生えたあとに再び抜けることもあるので、毛が増えたあとの通院をどうするかも、あらかじめ相談しておきます。
かゆみや湿疹は我慢せず強さを伝える
局所免疫療法では、かゆみや湿疹のほか、首のリンパ節が腫れることがあります。リンパ節は免疫の働きに関わる組織で、首などでしこりのように触れる部分です。
眠れないほどのかゆみ、水ぶくれ、広い範囲の湿疹などが出たときは、次回の予約を待たずに治療先へ連絡してください。反応が強い場合には、塗布を休むことや濃度を下げることが対応の候補です。受診のときに、塗った当日の様子だけでなく、症状が何日続いたかも伝えると、次の濃度を決めやすくなります。
光を当てるエキシマライトで発毛を促す
エキシマライトは、紫外線の一種を脱毛した部分へ当てる光線療法です。局所の免疫の反応を調整する目的で使われ、塗り薬などと組み合わせる場合もあります。
脱毛した部分へ光を当てる治療
エキシマライトの特徴は、治療する部分を選んで紫外線を当てられることです。照射する量は頭皮の状態に合わせて変わり、治療する範囲を絞ることで、周囲の皮膚への刺激を抑えられます。
光を当てた直後に、髪が増えて見える治療ではありません。発毛は時間をかけて進むため、効果は当てた直後の感覚ではなく、数週間から数か月かけて毛がどう変わるかで判断します。塗り薬で反応が乏しい場所が残る場合などに、光線療法を加えることがあります。
週1回程度の通院と保険での治療
円形脱毛症に対するエキシマライトは、保険適用で受けられる治療です。通院は週1回程度が目安ですが、実際の間隔は照射後の赤みや治療への反応に応じて変わります。
| 通院時の確認 | 頭皮で見る変化 | 相談につながる内容 |
|---|---|---|
| 前回の照射後 | 赤み、ひりつき、水ぶくれ | 次に当てる光の量や間隔 |
| 治療を続ける間 | 産毛、毛の太さ、脱毛の広さ | 継続やほかの治療との併用 |
照射を受ける時間に加え、移動や診察を含めた通院の負担も、治療を続けられるかに関わります。間隔を相談するときは、通える曜日や頻度を具体的に伝えてください。
当てたあとの赤み・ひりつきと、生え方の確認
紫外線を当てた後には、赤みやひりつきが生じることがあります。反応が強いと、やけどのような水ぶくれができることもあります。痛みや赤みが長引くときは、次に当てる光の量や間隔を調整するので、治療先へ伝えてください。
エキシマライトやレーザーの研究をまとめると、75%以上の発毛が得られた人は50.2%でした2)。続けるかどうかは、実際に毛が生えてきたかと皮膚の反応を見て決めます。
急に広がる円形脱毛症の治療は飲み薬や点滴も候補に
短期間に抜ける範囲が増えている場合は、ステロイド内服や点滴も治療の候補です。発症から時間がたつほど治療が効きにくくなる傾向があるため、抜ける範囲が増えているときは早めに受診してください。
内服は急な進行を抑えるために使うことがある
ステロイドの飲み薬は、頭皮だけでなく全身に働き、強い免疫の反応を抑える薬です。急速に脱毛が進む場合などに候補となり、使う量と期間は、期待できる効果と全身への影響を比べて決まります。
内服には、感染症にかかりやすくなることや、血糖・血圧が上がることなどの注意点があります。持病や、ほかに飲んでいる薬も確かめたうえで使います。服用が続いている場合は、量を急に変えることで体調を崩すことがあるため、減らし方は処方時の指示に従ってください。
ステロイドパルスが必要なら大学病院へ紹介
ステロイドパルス療法は、短期間に多量のステロイドを点滴する方法です。強い治療である分、全身の状態を確認できる医療機関で実施し、治療中も感染症や血糖などへの注意が続きます。
この治療は、発症からの期間が短い人ほど反応がよい傾向があります。点滴で生えたあとに再び抜けることもあり、その後も通院して相談を続けるのが一般的です。
当院ではステロイドの点滴は行っておらず、必要な場合は近隣の大学病院を紹介します。
受診時は抜け始めた時期と広がり方を伝える
急に広がる脱毛では、今の見た目だけでなく、どのくらいの速さで広がったかによって治療を選びます。経過を思い出しにくいときは、撮っておいた写真や短いメモがあれば持ってきてください。
- 最初に脱毛に気づいた日と場所
- 数日から数週間で増えた場所や広さ
- これまで使った薬と、その後の変化
- 持病、服用中の薬、最近の体調
写真がそろうまで受診を待つ必要はなく、分かる範囲の情報でも相談できます。特に脱毛範囲が次々と増える場合は、早めに頭皮の状態を確認することが大切です。
重症の円形脱毛症の治療に使うJAK阻害薬
頭皮の50%以上が抜けるような重症の円形脱毛症では、JAK阻害薬が治療の候補になります。使える対象や医療機関が限られるため、年齢やこれまでの治療歴、検査結果に応じた判断が必要です。
免疫の信号に働きかける飲み薬
JAK阻害薬は、免疫の反応を伝える細胞内の信号を抑える飲み薬です。円形脱毛症では、毛包への攻撃に関わる信号を抑え、髪が再び成長する状態を目指します。塗り薬や局所注射とは異なり、薬が全身に作用する治療です。
バリシチニブやリトレシチニブなど、免疫の信号に働く飲み薬が重症例の治療に加わっています。リトレシチニブはJAK3とTECファミリーと呼ばれる、免疫の信号を伝えるたんぱく質を抑える薬です。
使えるのは頭皮の広い範囲が抜けた人
これらの薬は、小さな脱毛が1か所あるだけで直ちに使う薬ではありません。重症度のほか、年齢やほかの病気、感染症の状態などを合わせて、使用できるかが決まります。
| 薬の一般名 | 主な試験の対象 | 効果を調べた時期 |
|---|---|---|
| バリシチニブ | 頭皮の50%以上が脱毛した成人 | 36週 |
| リトレシチニブ | 頭皮の50%以上が脱毛した12歳以上の人 | 24週 |
バリシチニブの2つの試験では、36週で頭皮の脱毛が20%以下になった人が、4mgで38.8%と35.9%、薬の成分を含まないプラセボで6.2%と3.3%でした3)。「脱毛が20%以下」は、髪が完全に生えそろった状態とは違います。
実際に使う薬や量は、試験の数字だけで選ばず、診察と検査を経て決まります。
飲み始める前の検査と、飲んでいる間の体調確認
免疫の働きを抑える飲み薬では、感染症などへの注意が必要です。治療には、開始前の感染症の確認や血液検査、服用中の定期的な体調確認も含まれます。
バリシチニブでは、にきびやコレステロールの上昇、CKの上昇などが報告されています。CKは主に筋肉に含まれる酵素で、血液検査で調べる数値の1つです。副作用の種類や確認事項は薬によって異なるため、発熱などの体調変化があれば処方を受けた医療機関へ連絡してください。
治療を希望する場合は、使用条件を確認でき、継続して経過を診られる医療機関での相談が必要です。
円形脱毛症の治療はどのくらい続く?
治療の評価は月単位です。発毛に気づくまで1〜2か月以上かかることがあり、局所免疫療法などでは反応を確かめるまでに数か月かかります。まず広がりが落ち着いたか、その後に毛が増えているかを分けて見ると、経過が分かりやすくなります。
産毛が出たら治療は終わり?
最初の発毛は、細く短い産毛として見えることがあります。産毛が出てから、まわりの髪と同じくらいの太さや長さになるまでには、さらに時間がかかるのが一般的です。
また、一部に毛が生えていても、ほかの場所では脱毛が続く場合があります。そのため、治療をやめるかどうかの決め手は、数本生えたことではなく、頭皮全体の変化です。写真を残す場合は、同じ明るさと角度で撮ると、記憶だけで比べるより変化が分かりやすくなります。
反応と負担に合わせて治療を組み合わせる
1種類の治療で十分な反応が得られない場合は、別の治療を加えることや、方法を変えることがあります。切り替えを考える時期は治療によって違い、使った期間だけでなく、副作用や通院の負担も合わせて相談します。
- 脱毛の広がりが落ち着いているか
- 産毛や太い毛が増えているか
- 痛み、かゆみ、皮膚の変化が続いているか
- 今の通院や自宅での治療を続けられるか
治療を増やすときに大事なのは、それぞれの治療で何を目指すのかを、始める前に確かめておくことです。次の診察までにどんな変化を見ておけばよいかも、その場で決めておきましょう。
再発や見た目の不安も診察で相談できる
円形脱毛症は自然に回復することもある一方、再発もみられる病気です。範囲が広い場合、生え際に沿って帯状に抜ける場合、子どものころの発症やアトピー性の病気がある場合は、経過が長引くことがあります。ただ、こうした特徴があっても、いつ回復するかは人によって違うため、診察を重ねながら見ていきます。
ウィッグなどで見た目を補うのは、治療と並行してできる工夫です。学校や職場で感じているつらさも、遠慮なく診察で話してください。
よくある質問
- 円形脱毛症の治療は何から始めますか?
-
狭い範囲の脱毛では、ステロイドの塗り薬や局所注射が主な候補です。急に広がっている場合や頭皮の広い範囲が抜けている場合は、飲み薬なども含めて治療が決まります。まず皮膚科で脱毛の状態と経過を確かめると、年齢や体調に合う方法を相談できます。
- 円形脱毛症の治療はどのくらいで効果が出ますか?
-
発毛に気づくまで1〜2か月以上かかることがあり、治療によっては数か月かけて評価するのが目安です。経過は脱毛の広さや続いている期間でも変わり、産毛が出てから見た目が整うまでには、さらに時間がかかる場合があります。
- 子どもの円形脱毛症は注射を受ける必要がありますか?
-
子どもの治療では、痛みのない塗り薬が使いやすい方法の1つです。注射を受けるかどうかは、脱毛の状態だけでなく年齢と痛みへの負担から決まり、塗り薬以外の方法も含めて相談できます。
- 円形脱毛症の局所免疫療法はかぶれが強いほど効きますか?
-
強いかぶれと発毛の程度は、そのまま比例するものではありません。局所免疫療法は軽い反応を目指して濃度を調整する治療です。眠れないほどのかゆみや水ぶくれが出た場合は、次の予約を待たずに治療先へ連絡してください。
- 円形脱毛症の治療は毛が生えたらやめてもよいですか?
-
治療を減らす時期は、発毛した範囲と、ほかの場所で脱毛が続いているかを確かめて決まります。特にステロイドの飲み薬は、服用状況に応じた減らし方があるため、自己判断での中断は避けてください。
生えた後にも再発することがあるため、治療終了後の受診目安まで相談しておくと安心です。
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