花粉症の原因とメカニズムとは?鼻水・目のかゆみが起きる仕組みを皮膚科医が解説

毎年春になると、くしゃみや鼻水、目のかゆみに悩まされている方は少なくないでしょう。花粉症は、体の免疫が花粉を「敵」と誤認して過剰に反応する疾患です。

なぜ同じ花粉を吸い込んでも発症する人としない人がいるのか、鼻や目にあのつらい症状が集中するのはどうしてなのか。

この記事では、皮膚科医の視点から花粉症が起きる仕組みをわかりやすく解説します。花粉が引き起こす肌荒れとの関係にも触れていますので、つらい症状を根本から理解して対策に役立ててください。

目次

花粉症はなぜ発症する?アレルギー反応が始まる原因

花粉症の原因は、体内の免疫システムがスギやヒノキなどの花粉を有害な異物と判断し、排除しようとして過剰に反応することにあります。

この免疫の暴走こそが、あのつらい症状の出発点です。

花粉症を引き起こすアレルゲンはスギだけではない

日本で花粉症の原因として多いのはスギ花粉ですが、ヒノキ、ブタクサ、シラカンバ、イネ科の植物なども原因になります。地域によって飛散する花粉の種類や時期が異なるため、「春だけ」とは限りません。

秋口に症状が出る方はブタクサやヨモギの花粉が原因になっている可能性があります。自分がどの花粉に反応しているかを知ることが、対策の第一歩になるでしょう。

免疫システムの誤作動がすべての始まり

本来、免疫はウイルスや細菌から体を守る防御の仕組みです。ところが花粉症では、体に害のない花粉を「危険な異物」と誤って認識してしまいます。

花粉が鼻や目の粘膜に付着すると、免疫細胞が花粉のタンパク質を敵と見なします。その結果、IgE抗体(アイジーイーこうたい)という特殊なタンパク質を大量につくり出し、次回の花粉侵入に備えてしまうのです。

花粉症の原因となるおもなアレルゲン

花粉の種類おもな飛散時期飛散が多い地域
スギ2月〜4月全国(北海道を除く)
ヒノキ3月〜5月関東以西に多い
ブタクサ8月〜10月全国の河川敷・空き地
シラカンバ4月〜6月北海道・東北地方
イネ科5月〜8月全国の草地・河川敷

遺伝的な体質と環境因子が発症リスクを左右する

花粉症になりやすいかどうかには、遺伝的な体質が深く関わっています。両親のどちらかがアレルギー体質であれば、子どもも花粉症を発症しやすい傾向があります。

加えて、大気汚染や食生活の変化、ストレスの増大といった環境因子も影響します。都市部に住む方が花粉症を発症しやすいという疫学データもあり、排気ガスの微粒子が花粉のアレルギー反応を強めるという研究報告も出ています。

花粉に対するIgE抗体と感作のしくみ|発症までの準備期間で何が起きているのか

花粉症は、花粉に初めて触れてすぐに発症するわけではありません。「感作(かんさ)」と呼ばれる準備期間を経て、体がアレルギー反応を起こす準備を整えてから発症に至ります。

感作とは花粉に対する免疫の「記憶」である

花粉が体内に入ると、樹状細胞(じゅじょうさいぼう)というパトロール役の免疫細胞がまずこれを取り込みます。そしてT細胞やB細胞に「こんな異物が侵入した」と情報を伝達するのです。

この報告を受けたB細胞は、花粉専用のIgE抗体をつくり始めます。産生されたIgE抗体は、肥満細胞(ひまんさいぼう)と呼ばれる細胞の表面にくっつき、次の花粉侵入をじっと待ち構えます。

IgE抗体の量が閾値を超えた瞬間に花粉症が始まる

感作が成立しても、IgE抗体の量が一定のレベルに達するまでは症状が現れません。何年もかけて少しずつIgE抗体が蓄積されていき、ある日突然、閾値(いきち=ボーダーライン)を超えた瞬間に症状が急激に出現します。

「去年まで何ともなかったのに急に花粉症になった」という経験談が多いのは、このためです。実際には長い年月をかけて体の中で準備が進んでいたといえるでしょう。

子どもから大人まで誰でも花粉症を発症しうる

かつては大人の病気と思われていた花粉症ですが、近年は低年齢化が進んでいます。小学生はもちろん、2〜3歳の幼児で花粉症と診断されるケースも珍しくありません。

一方で、60代・70代になってから初めて発症する方もいます。花粉への曝露量と体質のバランスによって発症時期が変わるため、年齢に関係なく注意が必要です。

段階体内で起きていること自覚症状
初回曝露樹状細胞が花粉を認識なし
感作の成立IgE抗体が産生・蓄積されるなし
閾値の突破IgE抗体が十分な量に達するなし
再曝露で発症肥満細胞が一斉に活性化くしゃみ・鼻水・目のかゆみ

鼻水・くしゃみが止まらない理由はヒスタミンの大量放出にある

感作が成立した状態で再び花粉が侵入すると、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が一斉に放出されます。鼻水やくしゃみといった典型的な花粉症の症状は、このヒスタミンが粘膜を刺激することで生じています。

肥満細胞の脱顆粒がアレルギー症状を引き起こす

肥満細胞の表面に並んだIgE抗体に花粉が結合すると、細胞内部の顆粒(かりゅう)がはじけるように放出されます。この現象を「脱顆粒(だつかりゅう)」と呼びます。

顆粒の中にはヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質がぎっしり詰まっています。これらが一気に周囲の組織にばらまかれることで、わずか数分のうちにアレルギー反応が引き起こされるのです。

ヒスタミンが鼻の粘膜に作用してくしゃみ・鼻水が出る

放出されたヒスタミンが鼻の粘膜にある神経を刺激すると、くしゃみが連続して起こります。同時に、鼻腺(びせん)からの分泌が促進され、サラサラとした水のような鼻水が大量にあふれ出します。

さらにヒスタミンは血管を広げる作用も持つため、鼻粘膜の血管が拡張して腫れあがり、鼻づまりを引き起こします。くしゃみ・鼻水・鼻づまりという3大症状は、いずれもヒスタミンの働きによるものです。

ヒスタミンが引き起こすおもな鼻症状

症状ヒスタミンの作用特徴
くしゃみ知覚神経の刺激連続5回以上出ることも
鼻水鼻腺からの分泌促進水のようにサラサラ
鼻づまり血管拡張による粘膜の腫脹夜間に悪化しやすい

遅発相反応で症状が長引くこともある

花粉に接触してすぐ起きる症状を「即時相反応」と呼びますが、6〜10時間後に再び症状がぶり返す「遅発相反応」が起きることもあります。遅発相反応は好酸球(こうさんきゅう)などの別の免疫細胞が関与しており、鼻づまりが特に悪化しやすいのが特徴です。

「朝は楽だったのに夕方からまたつらくなった」という場合は、遅発相反応が起きている可能性があるでしょう。

目のかゆみ・涙・充血はアレルギー性結膜炎が引き起こしている

花粉症で目がかゆくなるのは、花粉が結膜(けつまく=まぶたの裏側と白目を覆う薄い膜)に付着してアレルギー性結膜炎を起こしているためです。鼻と同じく、IgE抗体と肥満細胞の反応がその根本にあります。

結膜は花粉が付着しやすい粘膜

鼻には鼻毛というフィルターがありますが、目にはそのようなバリアがほとんどありません。結膜は外界に直接さらされているため、空気中を漂う花粉がダイレクトに付着します。

結膜にも肥満細胞が多数存在しており、花粉との接触でヒスタミンが放出されると強烈なかゆみが生じます。思わず目をこすりたくなりますが、こすることで症状はさらに悪化してしまいます。

花粉症で起きる目の症状は「かゆみ」だけではない

目のかゆみに加えて、涙が止まらなくなる、白目が赤く充血する、まぶたが腫れるといった症状も花粉症の典型的な眼症状です。涙が増えるのは、目に入った花粉を洗い流そうとする防御反応の一環といえます。

重症化すると角膜(くろめ)に傷がつき、光がまぶしく感じたり、視界がぼやけたりすることもあります。目の症状が強い場合は、早めに医療機関を受診してください。

目をこするとなぜ悪循環に陥るのか

かゆくてたまらず目をこすると、その摩擦で肥満細胞がさらに活性化し、追加のヒスタミンが放出されます。かゆみ→こする→さらにかゆくなる、という負のループが完成してしまうのです。

目をこする代わりに、冷たいタオルをまぶたの上に当てると一時的にかゆみを和らげられます。人工涙液タイプの点眼薬で花粉を洗い流すのも効果的な応急処置でしょう。

眼の症状原因となる反応セルフケアのポイント
強いかゆみヒスタミンが神経を刺激こすらず冷やす
涙の増加異物排除のための防御反応人工涙液で洗い流す
充血結膜の血管が拡張花粉よけの眼鏡を着用
まぶたの腫れ炎症による浮腫冷たいタオルで冷却

花粉症と皮膚のかゆみ・肌荒れの関係

花粉症の症状は鼻と目だけにとどまりません。花粉が肌に触れることで、かゆみや赤み、湿疹といった皮膚トラブルを引き起こすことがあり、これを「花粉皮膚炎」と呼びます。

花粉皮膚炎は目の周りやあごのラインに出やすい

花粉皮膚炎は、花粉が直接触れやすい露出部、特に目の周り、頬、あごのラインに好発します。皮膚がカサカサになったり、赤みやかゆみを伴う小さなブツブツが出たりすることが典型的な症状です。

春先に「化粧品が急に合わなくなった」「いつもの洗顔で肌がピリピリする」と感じたら、花粉皮膚炎を疑ってもよいかもしれません。

バリア機能が低下した肌は花粉に対して無防備になる

健康な肌の表面は、角質層と皮脂膜がバリアとなって外部の刺激から守っています。しかし乾燥や摩擦、過度な洗顔などでバリア機能が落ちると、花粉の成分が皮膚内部に侵入しやすくなります。

花粉皮膚炎の好発部位と症状

好発部位おもな症状悪化因子
目の周り赤み・かゆみ・乾燥皮膚が薄くバリアが弱い
頬・あごライン小さな湿疹・ヒリヒリ感花粉が直接付着しやすい
首・デコルテ広範囲の赤み衣類の摩擦との複合刺激

スキンケアで花粉の侵入を防ぐことが肌荒れ対策になる

バリア機能を保つためには、保湿ケアを徹底することが大切です。セラミドやヒアルロン酸を含む保湿剤で角質層のうるおいを維持すれば、花粉が皮膚内部へ入り込む隙を減らせます。

帰宅後はなるべく早く洗顔して、肌に付着した花粉を落とすことも効果的です。ただしゴシゴシ洗いはバリアを壊す原因になるため、やさしく泡で包むように洗いましょう。

花粉症を悪化させる生活習慣の注意点

日常生活の何気ない習慣が、花粉症の症状をさらに重くしている場合があります。薬を飲んでもなかなか改善しないときは、生活習慣の見直しが突破口になるかもしれません。

睡眠不足は免疫バランスを乱して花粉症を重くする

睡眠が不足すると自律神経のバランスが崩れ、副交感神経が優位な状態が不安定になります。免疫の調整力が低下するため、アレルギー反応が増幅されやすくなるのです。

花粉症シーズンには特に、毎晩6〜7時間以上の睡眠を確保するよう心がけてみてください。寝室の花粉対策として、寝る前に空気清浄機を稼働させるのも有効でしょう。

飲酒と喫煙はアレルギー症状を増幅させる

アルコールは体内でアセトアルデヒドに分解される過程で、ヒスタミンの放出を促進します。飲酒後にくしゃみや鼻づまりがひどくなる方は、アルコールによる増悪が原因と考えてよいでしょう。

タバコの煙は鼻や目の粘膜を直接刺激するだけでなく、粘膜の防御機能そのものを低下させます。花粉症の時期だけでも、飲酒量を減らし、禁煙に取り組む価値は大きいといえます。

ストレスとアレルギーの悪循環を断ち切る工夫

精神的なストレスが強い状態が続くと、コルチゾールというホルモンの分泌パターンが乱れ、免疫の制御がうまく働かなくなります。花粉症の症状自体がストレスになり、さらに症状を悪化させるという悪循環に陥りがちです。

ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、ストレスの発散と自律神経の調整に効果が期待できます。ただし花粉飛散が多い日の屋外運動は逆効果になるため、室内での運動がおすすめです。

  • 就寝前のスマートフォン使用を控えて睡眠の質を上げる
  • 花粉シーズンの飲酒はビール1杯程度に抑える
  • 喫煙者は禁煙外来の受診も検討する
  • 室内でできるヨガやストレッチを日課にする
  • 入浴でリラックスして副交感神経を整える

花粉症で皮膚科を受診すべきタイミングと治療の選択肢

花粉症の症状が軽いうちは市販薬で対処できることもありますが、症状が長引く場合や皮膚症状がある場合は、専門の医療機関で適切な診断と治療を受けることが回復への近道です。

こんな症状があれば早めに皮膚科を受診したい

  • 顔や首に赤み・かゆみ・湿疹が繰り返し出る
  • 市販の保湿剤やかゆみ止めでは改善しない
  • 毎年同じ時期に同じ部位の肌トラブルが起きる
  • アトピー性皮膚炎の既往があり春に悪化する

皮膚科で受けられる花粉症に関連した治療

皮膚科では、花粉皮膚炎やアレルギー性の湿疹に対して、症状の程度に応じた外用薬や内服薬を処方します。かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬の内服が中心になります。

皮膚のバリア機能を回復させるための保湿指導も治療の一環です。自分の肌質に合った保湿剤の選び方や塗り方について、医師から具体的なアドバイスを受けられます。

アレルギー検査で原因を特定すると治療の精度が上がる

血液検査で特異的IgE抗体を調べれば、スギ・ヒノキ・ブタクサなど、どの花粉に反応しているかを特定できます。原因花粉が分かれば、飛散時期に合わせた予防策や治療計画を立てやすくなるでしょう。

皮膚科では、花粉だけでなくダニやハウスダストなど他のアレルゲンとの重複感作も同時にチェックできます。複数のアレルゲンに反応している場合は、それぞれに対応した総合的な対策が必要です。

よくある質問

花粉症の鼻水と風邪の鼻水はどうやって見分ければよい?

花粉症の鼻水はサラサラとした水のような状態が続くのに対し、風邪の鼻水は数日経つと黄色や緑色に変わるのが大きな違いです。花粉症では連続するくしゃみや目のかゆみを伴うことが多く、発熱はほとんどありません。

一方、風邪の場合はのどの痛みや発熱を伴いやすく、症状は1〜2週間で自然に治まります。2週間以上サラサラの鼻水が続く場合は花粉症の可能性が高いため、医療機関の受診をおすすめします。

花粉症は一度発症したら一生治らない?

花粉症は自然に治ることもありますが、多くの方は毎年繰り返す傾向にあります。加齢とともに免疫機能が変化し、症状が軽くなるケースも報告されています。

根本的な治療を目指す方法としては、アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)があります。数年単位の治療期間が必要ですが、体質そのものを変えていくアプローチとして注目されています。治療を検討される方は、まず医師に相談してみるとよいでしょう。

花粉症で肌荒れが起きたときは皮膚科と耳鼻科のどちらを受診すべき?

花粉による肌荒れやかゆみ、湿疹などの皮膚症状が中心であれば、皮膚科の受診が適しています。皮膚科では肌の状態を直接診察し、症状に合った外用薬と保湿ケアの指導を受けられます。

鼻水やくしゃみなどの症状が強い場合は耳鼻咽喉科が専門です。皮膚と鼻・目の症状が両方つらいときは、それぞれの診療科を併せて受診することで、より包括的な治療を受けられるでしょう。

花粉症の症状を和らげるために自宅でできるセルフケアはある?

帰宅時に衣服についた花粉を玄関で払い落とすだけでも、室内への持ち込みを大幅に減らせます。帰宅後すぐの洗顔とうがいで、顔や喉に付着した花粉を除去する習慣をつけてください。

室内では空気清浄機の使用や、こまめな床掃除が効果的です。洗濯物は花粉飛散が多い日には部屋干しにするのが無難でしょう。鼻症状がつらいときは、蒸しタオルを鼻にあてると粘膜の腫れが和らぎ、一時的に呼吸が楽になります。

花粉症の薬は花粉が飛び始める前から飲んだほうがよい?

花粉の飛散が本格化する2週間ほど前から抗ヒスタミン薬を飲み始める「初期療法」は、シーズン中の症状を軽く抑える効果が期待できるとされています。症状が出てから慌てて薬を飲むよりも、先手を打つ方が症状のピークを下げやすいでしょう。

毎年重い症状に悩まされている方は、例年の飛散開始時期を目安に早めに受診し、医師と相談のうえで初期療法を始めることを検討してみてください。

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この記事を書いた人

野田真史のアバター 野田真史 池袋駅前のだ皮膚科 院長

医学博士 / 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

東京大学医学部卒業、同大学院医学博士課程修了。米国ロックフェラー大学への臨床研究留学、ニューヨーク州医師免許取得を経て、東京大学医学部附属病院助教を務める。2018年、池袋駅前のだ皮膚科を開院。

ニキビやシミといった身近な悩みから難治性の皮膚疾患まで、常に知識を研鑽し、適切な診断・治療を行うことを信条としている。

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